「活動」をどう設計するか
外国語活動は「活動」だ。教科書を読み、知識を覚え、テストで確認する——そういう授業ではない。
児童が実際にコミュニケーションを行う場面を設定して,言語活動を効果的に経験することが大切
では、どうすれば「実際にコミュニケーションを行う場面」をつくれるのか。ここに、外国語活動の授業設計の核心がある。
必然性のある場面設定
なぜ場面設定が大切なのか
「はい、今から英語で友達と話しましょう」——これだけでは、児童に「話す理由」がない。
言語の使用場面を意識した活動とは,活動の目的や場面,状況などを明確にして設定した活動のこと
なぜ英語を使うのか、誰に向かって話すのか、何を知りたいのか——これらが明確になったとき、コミュニケーションに必然性が生まれる。
具体例
| 場面設定 | 目的 | 使う表現 |
|---|---|---|
| クラスの好きな果物ランキングを調べよう | 調査 | What fruit do you like? — I like ~. |
| ALTの先生に自分を紹介しよう | 自己紹介 | My name is ~. I like ~. |
| 道案内ごっこで友達を案内しよう | 案内 | Go straight. Turn right. |
| お店屋さんごっこで買い物しよう | 買い物 | What do you want? — I want ~, please. |
「調べたい」「伝えたい」「案内したい」——目的があるから、英語を使う意味が生まれる。
場面設定の工夫
コミュニケーションの目的を意識した活動を意味のある文脈の中で行うことが必要
ポイントは「意味のある文脈」だ。
- 本当に知らないことを聞く——友達の好きな色は、聞かなければ分からない
- 結果が変わる活動にする——調査結果によってランキングが変わる
- 相手が変わると内容が変わる——人によって答えが違うからこそ聞く意味がある
「先生がやりなさいと言ったから」ではなく、「自分が知りたいから聞く」——この転換が、言語活動の質を変える。
聞くから話すへの段階的指導
インプットが先
外国語の学びでは、十分なインプット(聞く活動)がアウトプット(話す活動)に先行する。
音声面を中心とした外国語を「聞くこと」及び「話すこと」の言語活動を通じて
3年生の授業の流れは、おおむねこうなる。
- 聞く——教師やALTの英語を聞く、チャンツや歌を聞く
- 真似する——聞いた英語を一緒に言ってみる
- 使ってみる——ペアやグループで使ってみる
- 伝え合う——自分の言葉として使って伝え合う
聞いて分かる → 真似して言える → 自分で使える——この段階を踏むことが大切だ。
チャンツと歌
歌やリズム,チャンツ(リズミカルに英語を繰り返し言うこと)を活用して楽しみながら英語のリズムやイントネーションを身に付ける
チャンツは、英語の語句や表現をリズムに乗せて繰り返す活動だ。
「What fruit do you like? / I like apples. / What fruit do you like? / I like oranges.」——リズムに乗せて繰り返すことで、表現が自然に体に入っていく。
歌も同様の効果がある。「Head, Shoulders, Knees and Toes」のように、体の動きと結び付けた歌は、語句と意味が一体になって覚えられる。
チャンツや歌の効果は3つだ。
- 繰り返し聞く機会になる
- リズムとイントネーションが身に付く
- 楽しみながら慣れ親しめる
ゲーム活動
ゲームは、外国語活動の強力な手段だ。
| ゲーム | 使う力 | 例 |
|---|---|---|
| カルタ | 聞く力 | 英語を聞いてカードを取る |
| キーワードゲーム | 聞く力 | 特定の単語が聞こえたら消しゴムを取る |
| ミッシングゲーム | 記憶・語彙 | 隠されたカードが何か英語で答える |
| インタビューゲーム | やり取り | 友達に質問して情報を集める |
| ポインティングゲーム | 聞く力 | 聞こえた英語のイラストを指す |
ただし、ゲームはあくまで手段だ。
ゲームを行うこと自体が目的化しないよう留意する
ゲームが楽しすぎて、英語を使わなくても勝ててしまう——そんな活動は本末転倒だ。英語を使うことがゲームの中核になるように設計する。
ALTとの連携
ALTの役割
ALT等を活用することに関しては,単に外国語の音声に触れる機会を増やすだけでなく,ALT等を効果的に活用した指導の在り方を工夫すること
ALT(外国語指導助手)は、外国語活動における貴重なリソースだ。
ALTの役割は多岐にわたる。
| 役割 | 具体例 |
|---|---|
| モデル | ネイティブの発音やイントネーションを聞かせる |
| コミュニケーションの相手 | 児童が「本当に英語で伝える」体験ができる |
| 文化の紹介者 | 出身国の文化、生活、行事を紹介する |
| ティームティーチング | 担任と役割分担して授業を進める |
担任とALTの役割分担
学級担任が行うことが原則であるが,その場合も,ALT等のネイティブ・スピーカーや英語が堪能な地域人材などの協力を得ること
外国語活動は担任が主導する。ALTはそのサポートだ。
なぜ担任が主導するのか。
- 担任は児童をよく知っている——つまずきやすい子、積極的な子への対応ができる
- 担任が英語を使おうとする姿を見せることで、児童も「間違ってもいいんだ」と感じる
- 学級経営の一環として外国語活動を位置付けられる
担任が完璧な英語を話す必要はない。むしろ、担任が英語に挑戦する姿を児童に見せることが、大きな教育的効果をもつ。
ALTとの打ち合わせ
効果的な連携のためには、事前の打ち合わせが不可欠だ。
- 本時の目標と活動内容を共有する
- ALTにどの場面で何をしてほしいかを明確に伝える
- 児童の実態(英語のレベル、配慮が必要な子)を共有する
- 使う語句や表現を確認する
打ち合わせの時間が十分に取れないことも多い。その場合でも、活動の流れを書いたプリント1枚を渡すだけで、授業の質が大きく変わる。
授業の基本構成
外国語活動の1時間(45分)の基本的な流れの例を示す。
| 時間 | 活動 | 内容 |
|---|---|---|
| 5分 | ウォームアップ | 挨拶、チャンツや歌、前時の復習 |
| 10分 | インプット | 新しい語句や表現を聞く(ALTのモデル、絵カードなど) |
| 5分 | 練習 | 全体で真似して言う、チャンツで練習する |
| 15分 | コミュニケーション活動 | ペア・グループでの言語活動(インタビュー、ゲームなど) |
| 5分 | 発表・共有 | 活動の成果を発表する、友達の発表を聞く |
| 5分 | 振り返り | 今日の学びを振り返る、次回の予告 |
ただし、これはあくまで一例だ。活動の内容によって柔軟に変える。
授業時数に関する取扱いとして,短い時間を活用して指導を行う場合
15分程度のモジュール授業(短時間学習)も認められている。毎日15分のモジュールで英語に触れる学校もある。チャンツや歌、アルファベットの練習など、繰り返しの活動に適している。
国語科との関連
言語についての知識を深めるために,国語科や他教科等での学習と関連付けること
外国語活動は、国語科と深く関連している。
| 外国語活動 | 国語科 |
|---|---|
| 英語の語順(SVO) | 日本語の語順(SOV) |
| 英語のリズム・イントネーション | 日本語のリズム(拍) |
| アルファベット | ひらがな・カタカナ・漢字 |
| 英語の挨拶表現 | 日本語の敬語・丁寧語 |
「英語では『I like cats.』って言うのに、日本語では『猫が好きです。』って主語を省略できるんだね」——こんな気付きが、両方の言語への理解を深める。
評価の考え方
外国語活動においては,数値による評価ではなく,児童の学習状況を文章で記述する評価を行う
外国語活動の評価は、数値ではない。3段階評定も、テストの点数もない。
児童の学習状況に顕著な事項がある場合にその特徴を記入する等,児童にどのような力が付いたかを文章で記述すること
「積極的に英語で友達に質問しようとしていた」「ALTの話を集中して聞き、内容を理解していた」——具体的な行動や姿を文章で記述する。
ここで大切なのは、「英語が正確に言えたか」ではなく「コミュニケーションしようとしたか」を見ることだ。
教師として残しておきたいこと
農業では、「やってみて覚える」が基本だった。トラクターの運転も、剪定の仕方も、マニュアルを読むだけでは身に付かない。実際に手を動かし、失敗し、もう一度やってみる。外国語活動の「体験を通して慣れ親しむ」は、この学び方と同じだ。
Web開発では、プログラミング言語の習得で「聞く→真似する→使う」の段階をたくさん経験した。チュートリアルを見る(聞く)。コードを写す(真似する)。自分のプロジェクトで使う(使う)。どんな言語でも、この段階を踏む。外国語の習得と構造が同じだ。
外国語活動の授業設計で最も大切にしたいのは、「楽しかった」で終わることだ。「今日の英語、楽しかった!」——この感想が出る授業ができれば、コミュニケーションの素地は確実に育っている。楽しさの中に学びがある授業をつくりたい。
指導のポイント
- 必然性のある場面設定——「英語を使わないとできない」状況をつくる
- 聞く→真似する→使う→伝え合うの段階的指導を意識する
- チャンツ・歌・ゲームで楽しみながら繰り返し英語に触れる
- ゲームは英語を使うことが中核になるように設計する
- ALTとの連携は事前打ち合わせが鍵——担任が主導、ALTがサポート
- 担任自身が英語に挑戦する姿を見せることが最大の教育効果
- 評価はコミュニケーションしようとする態度を文章で記述する
まとめ——楽しさの中に学びがある
言語活動の設計は、体験を通して英語に慣れ親しむ授業をつくることだ。
- 必然性のある場面を設定し、コミュニケーションの目的を明確にする
- 聞くことから始めて、段階的に話す活動へ移行する
- チャンツ・歌・ゲームで楽しみながら繰り返し英語に触れる
- ALTと担任が役割分担し、効果的に連携する
- 正確さよりも、コミュニケーションしようとする態度を評価する
「英語って楽しい」——この気持ちが、コミュニケーションの素地の最も確かな証拠だ。楽しさの中に学びがある授業を設計すること。それが、外国語活動の教師の仕事だ。


この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編(文部科学省, 2017)の第1部第2章を基に執筆しています。

