感じたこと・想像したこと・見たことから——絵や立体・工作に表す

水彩絵の具で想像の世界を描く児童、粘土で立体をつくる児童、木材を組み合わせて工作をつくる児童が描かれたアニメ風イラスト。「感じたこと・想像したこと・見たことから」のテキスト入り
目次

3つの「表したいことの種」

造形遊びが「活動そのもの」を楽しむのに対して、絵や立体、工作に表す活動は、「表したいこと」を形にする活動だ。

では、表したいことはどこから生まれるのか。

感じたこと,想像したこと,見たことから,表したいことを見付けることや,表したいことや用途などを考え,形や色,材料などを生かしながら,どのように表すかについて考えること。

感じたこと、想像したこと、見たこと——この3つが表現の出発点だ。

出発点内容
感じたこと体験から生まれた感覚や感情風が気持ちよかった、音楽が楽しかった
想像したこと空想、物語、夢や願い不思議な世界、未来の乗り物、夢の中の景色
見たこと実際に目で見て捉えたもの虫の形、花の色、雲の動き

解説は、これらを「互いにつながりのあるもの」として捉えることが大切だと述べている。

見たことから想像することもあれば,見たことから感じたことにつながる場合もある。見ながら表すことから始めたとしても,想像することへ広がり,形や色が変わっていくことも考えられる。

花を見て描き始めた(見たこと)。でも描いているうちに、花が踊り出す絵になった(想像したこと)。描きながら「楽しい!」と感じた(感じたこと)。——3つは行き来しながら、表現を豊かにしていく。


表したいことを見付ける

表したいことも,初めからはっきりしているものではないので,およその表したいことも含めて捉える必要がある。

大人は「何を描きたいの?」と聞きがちだ。しかし、中学年の児童の「表したいこと」は、最初からはっきりしているとは限らない。

  • 材料に触りながら生き物を想像し、表したい生き物を見付ける
  • 自然のものを見て、自分の表したいことを見付ける
  • 粘土をこねているうちに、形から表したいことが浮かんでくる

手を動かしながら見付かることもある。「まず描いてごらん」「まず触ってごらん」——そこから表したいことが生まれることを、教師は知っておきたい。


表したいことや用途を考える

表したいことが見付かったら、次はそれをどう形にするか考える。

表したいことや用途などを考え,形や色,材料などを生かしながら,どのように表すかについて考える

工作では「用途」も考える。使えるもの、動くもの、飾るもの——実際にどう使うかを考えることで、表現への思いが膨らむ。

形や色、材料を生かすとは、自分の発想を実現するために、意識的に選び、工夫すること。

  • どの色とどの色が合うかを考える
  • 仕掛けや動く仕組みを工夫する
  • 表したいことに合った材料を集め、材料の生かし方を工夫する

技能——表したいことに合わせて工夫する

材料や用具を適切に扱うとともに,前学年までの材料や用具についての経験を生かし,手や体全体を十分に働かせ,表したいことに合わせて表し方を工夫して表すこと。

中学年の技能で大切なのは、「表したいことに合わせて」工夫することだ。

与えられた手順通りに表すのではない。「こう表したい」という思いがあり、その思いに合わせて材料や用具を選び、表し方を工夫する。技能は思いに従属するのだ。

具体的には:

  • 水彩絵の具を使いながら、水の加減や色の混ぜ方を工夫する
  • 金づちを使いながら、釘を並べるように打つ
  • 材料を小刀で削ったり、彫刻刀で彫ったりしながら、新しい形をつくりだす

初めに思い描いたイメージに近づけようと製作することもあるが,一方で,表している過程で新しい発想が生まれ新たな試みをしようとする場合もある。

計画通りにつくることだけが正解ではない。つくっている途中で、偶然の結果から新しい発想が生まれることもある。そうした「偶然」を大切にすることも、図画工作科の指導では重要だ。


偶然と失敗を生かす

解説は、図画工作科における偶然や失敗について、示唆的なことを述べている。

図画工作科では,偶然の結果として思いがけないものが生まれることが多々ある。また,児童が失敗したと感じていても,別の視点から捉え直すことによって新しい発想や構想が生まれ,最初に考えたことよりも気に入った発想や構想になることもある。

絵の具がにじんでしまった。思った通りの形にならなかった。——児童は「失敗した」と感じるかもしれない。しかし、その「失敗」を別の視点で見直すと、思いがけない面白さが見えてくることがある。

にじんだ色が、不思議な世界の背景になる。歪んだ形が、面白い生き物になる。失敗を失敗で終わらせない——これは、図画工作科が育てる大切な態度だ。


題材の工夫

題材名も,表現する喜びを味わい,造形的な創造活動を楽しもうとする意欲がわくものにすることが大切である。

「動物を描きましょう」よりも「自分だけの不思議な生き物をつくろう」の方が、表現への意欲が湧く。題材名の工夫一つで、児童の発想が大きく変わる。

また、題材には2つの傾向がある。

  • 先にイメージがあり、それを実現していく傾向の強い題材
  • 表しながら表したいことを次々と思い浮かべ、表現の思いが膨らんでいく傾向の強い題材

児童が、様々な学習過程を経験するように、両方の傾向の題材をバランスよく設定することが大切だ。


他教科・他領域との連動

  • 国語:物語の一場面を絵に表す、詩から想像を膨らませる
  • 算数:形の特徴(三角形、円)を造形的に活かす
  • 理科:昆虫や植物の観察を「見たこと」から表す活動へ
  • 社会:地域の建物や風景を「見たこと」から描く
  • 音楽:音楽から感じたことを形や色で表す(共感覚的な表現)

教師として残しておきたいこと

農業では、想定通りにいかないことが日常だった。台風で作物が倒れる。害虫にやられる。しかし、その「失敗」から次の年の計画が生まれ、新しい栽培方法を試すきっかけになった。失敗を別の視点で捉え直す力は、農業で鍛えられた。

Web開発では、ユーザーインターフェースのデザインで「表したいことに合わせて表し方を工夫する」ことを毎日していた。このボタンはどんな色がいいか。このレイアウトはどんな形がいいか。見た目(形や色)と機能(用途)を同時に考える。それは工作に表す活動と同じ構造だ。

絵や立体、工作に表す活動では、「上手に描けた」「きれいにできた」が全てではない。大切なのは、自分の「表したいこと」を見付け、それを形にしようと工夫し続けたかどうかだ。


指導のポイント

  1. 表したいことの出発点は感じたこと・想像したこと・見たことの3つ——互いにつながり合う
  2. 表したいことは初めからはっきりしているとは限らない——手を動かしながら見付かることもある
  3. 工作では用途も考える——使えること、動くことが発想を膨らませる
  4. 技能は表したいことに合わせて工夫する——手順通りではなく、思いに従う
  5. 偶然や失敗を別の視点で捉え直す——「失敗」が新しい発想の種になる
  6. 題材名の工夫で児童の表現意欲が変わる
  7. 先にイメージがある題材と、表しながら思いが膨らむ題材のバランスを取る

まとめ——表したいことを形にする

絵や立体、工作に表す活動は、感じたこと・想像したこと・見たことから表したいことを見付け、形や色、材料を生かして表す活動だ。

  • 3つの出発点が互いにつながり合い、表現を豊かにする
  • 表したいことは、手を動かしながら見付かることもある
  • 表したいことに合わせて、材料や用具を選び、表し方を工夫する
  • 偶然や失敗を生かす柔軟さが、創造的な表現を生む
  • 「上手」よりも「自分の思いを形にしようとしたか」が大切

「こう表したい」と思う気持ちがあること。そして、その気持ちを形や色にする方法を自分で工夫できること。それが、この活動で育てたい力だ。


この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 図画工作編(文部科学省, 2017)の第3章第2節を基に執筆しています。

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