伝え合う楽しさを体験する——話すこと[やり取り]

友達同士で英語カードを見せ合いながら好きなものを伝え合う児童、ALTとジェスチャーを交えて挨拶する児童、ペアで質問し合いながらメモを取る児童が描かれたアニメ風イラスト。「伝え合う楽しさを体験する」のテキスト入り
目次

「やり取り」とは何か

外国語活動の「話すこと」は、2つに分かれている。[やり取り]と[発表]だ。

やり取りは、相手がいて、言葉を交わし合う活動だ。一方的に話すのではなく、聞いて、答えて、また聞く。コミュニケーションの最も基本的な形がやり取りだ。

基本的な表現を用いて挨拶,感謝,簡単な指示をしたり,それらに応じたりするようにする。

3年生のやり取りは、日常の中で最もよく使う場面から始まる——挨拶、感謝、指示


やり取りの3つの目標

ア 挨拶・感謝・指示

基本的な表現を用いて挨拶,感謝,簡単な指示をしたり,それらに応じたりするようにする。

最も基本的な目標だ。

場面表現例
挨拶Hello. / Good morning. / How are you? — I’m fine.
感謝Thank you. — You’re welcome.
指示Stand up. / Look at this. / Please sit down.

ポイントは「したり、それらに応じたりする」という部分だ。自分から言うだけでなく、相手の言葉に応じることが含まれている。

「Hello!」と言われたら、「Hello!」と返す。「Thank you.」と言われたら、「You’re welcome.」と返す。言葉のキャッチボールだ。

イ 好みや気持ちを伝え合う

自分のことや身の回りの物について,動作を交えながら,自分の考えや気持ちなどを伝え合うようにする。

ここから、より「自分のこと」を伝えるやり取りに広がる。

「I like cats.」「I like dogs.」——好きなものを伝え合う。「I’m happy.」「I’m sleepy.」——気持ちを伝え合う。

注目したいのは「動作を交えながら」という条件だ。

言葉だけでなく,動作を含む様々な表現の手段を使いながら

3年生は、英語だけで全てを伝えることは難しい。だから、ジェスチャーや表情も使っていい。むしろ、言葉以外の手段も使ってコミュニケーションすることを、積極的に認める。

猫が好きだと言いながら、猫の真似をする。眠いと言いながら、目をこする仕草をする。体全体でコミュニケーションするのが、この段階の特徴だ。

ウ サポートを受けて質問・応答する

サポートを受けて,自分や相手のこと及び身の回りの物に関する事柄について,質問をしたり質問に答えたりするようにする。

3つ目の目標は、質問と応答だ。ただし、「サポートを受けて」という条件がついている。

サポートを受けてとは,児童が外国語を用いたコミュニケーションを行う際に,語句や表現を思い出せなかったり,聞き取れなかったりする場合に,教師や友人から声をかけてもらったり,話す速度を変えてもらったりするなど

「What color do you like?」——この質問を自分で組み立てるのは難しい。でも、教師が「色を聞いてみよう。What color…」とヒントを出せば、「What color do you like?」と言える。

一人でできなくても、サポートがあればできる。この「サポートを受けてできる」段階を、3年生では大切にする。


やり取りの言語活動

解説は、具体的な言語活動も示している。

挨拶をして自分の名前を伝え合う

挨拶をして自分の名前を言ったり,相手の名前を聞いたりして伝え合う活動。

最も基本的な言語活動だ。「Hello, I’m Tanaka. What’s your name?」——名前の交換は、やり取りの第一歩。

ここでの工夫として、普段よく知っている友達同士でもやり取りをさせることがある。知っている相手だからこそ安心して英語を使える。そして、「英語で名前を言うと、なんだか特別な感じがする」——そんな小さな発見が、外国語への興味を育てる。

好みを伝え合う

自分の好きな物や嫌いな物を伝え合う活動。

「I like pizza. Do you like pizza?」——好きなものを聞いて答える。この活動は、相手のことを知りたいという気持ちが自然に生まれる。

「えっ、サッカーが好きなの? 私も!」——共通点を見つけたときの喜び。「納豆が嫌いなの? 私は好きだよ」——違いを知ることの面白さ。伝え合うことで、相手のことが分かる

サポートを受けて質問する

サポートを受けて,自分のことについて質問に答えたり,相手に質問したりする活動。

教師やALTが横でヒントを出しながら、質問と応答を練習する。最初は教師が一緒に言ってくれる。慣れてきたら、少しずつサポートを減らしていく。

足場かけ(scaffolding)の考え方だ。最初は支えがあり、徐々に自力でできるようにしていく。


やり取りを支える指導の工夫

必然性のある場面をつくる

実際の言語の使用場面に近い,児童にとって身近な設定でコミュニケーション活動を行うこと

「英語で好きなものを聞いてみましょう」だけでは、活動に必然性がない。

  • インタビュー活動:クラスで一番人気の果物を調べよう → 英語で聞く必然性が生まれる
  • カード交換:自分のカードと相手のカードを英語で紹介して交換する
  • ショッピング活動:お店屋さんごっこで英語を使う

「英語を使わないとできない」という状況が、コミュニケーションへの意欲を高める。

相手意識を大切にする

相手に配慮しながら,主体的にコミュニケーションを図ろうとする態度

やり取りでは、相手がいる。相手の目を見て話す。相手の話を最後まで聞く。相手に分かるように話す。

英語の正確さよりも、相手を大切にする姿勢を評価する。「うまく言えなかったけど、ジェスチャーで一生懸命伝えようとした」——それは立派なコミュニケーションだ。

失敗を受け止める雰囲気をつくる

間違いを恐れず積極的に外国語を使おうとする態度

やり取りでは、必ず失敗が起きる。単語が出てこない。発音が通じない。聞き取れない。

しかし、失敗を笑わない、失敗を責めない雰囲気があれば、児童は安心して挑戦できる。教師自身が「失敗しても大丈夫」という姿勢を見せることが、最も効果的な指導だ。


教師として残しておきたいこと

農業の現場では、言葉以外のコミュニケーションが日常だった。外国人技能実習生に「ここを掘って」と伝えるとき、言葉が通じなくても、実際にやって見せれば伝わる。目を見て、うなずいて、笑顔を見せて——動作を交えたコミュニケーションは、農業で鍛えられた力だ。

Web開発では、テキストベースのやり取りが中心だった。チャットやメール、プルリクエストのコメント——文字だけで意図を伝えるのは、実は高度なスキルだ。対面のやり取りでは、表情やジェスチャーが補ってくれるものを、文字だけで補わなければならない。対面のやり取りの豊かさを、改めて感じる。

外国語活動のやり取りで最も大切にしたいのは、「通じた!」という体験だ。自分の言葉(たとえたどたどしくても)が相手に伝わり、相手が反応してくれる。この喜びが、コミュニケーションの素地そのものだ。


指導のポイント

  1. やり取りは相手がいて成り立つ——一方的に話すのではなく、言葉のキャッチボール
  2. 3つの目標:挨拶・感謝・指示 → 好みや気持ちの伝え合い → サポートを受けて質問・応答
  3. 動作を交えながら伝え合う——ジェスチャーや表情も立派なコミュニケーション手段
  4. サポートを受けてできる段階を大切にする——足場かけの発想
  5. 必然性のある場面を設定する——「英語を使わないとできない」状況をつくる
  6. 相手意識を大切にする——英語の正確さよりも、相手を大切にする姿勢
  7. 失敗を受け止める雰囲気をつくる——教師自身が「失敗しても大丈夫」を見せる

まとめ——伝え合うことの喜び

話すこと[やり取り]は、相手と言葉を交わし合い、伝え合う楽しさを体験する活動だ。

  • 挨拶・感謝・指示の基本的なやり取りから始める
  • 好きなものや気持ちを、動作を交えながら伝え合う
  • サポートを受けながら、質問と応答に挑戦する
  • 必然性のある場面で、相手意識をもってコミュニケーションする
  • 失敗を恐れず、伝えようとする姿勢を大切にする

「Do you like cats?」——友達に聞いてみた。「Yes, I do!」——返事が返ってきた。その瞬間、英語が「勉強」から「コミュニケーション」に変わる


この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編(文部科学省, 2017)の第1部第2章を基に執筆しています。

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