「完成品」がない活動
造形遊びは、図画工作科の中でも独特の活動だ。
絵を描く、工作をつくる——これらには、ある程度の「完成」がある。しかし、造形遊びには決まった完成品がない。
児童が身近な材料や場所などに進んで働きかけ,思いのままに発想や構想を繰り返し,技能を働かせながらつくることを通して学習する
材料に触れる。場所を見回す。何かを思い付く。つくってみる。つくりかえる。また思い付く。このプロセスそのものが学びだ。
発想や構想——何を思い付き、どう活動するか
身近な材料や場所を基に活動を思い付く
身近な材料や場所などを基に造形的な活動を思い付くことや,新しい形や色などを思い付きながら,どのように活動するかについて考えること。
中学年の造形遊びでは、材料だけでなく場所も活動の基になる。
材料としては、低学年で使ったものに加えて、木切れ、空き容器、何かの部品など、切ったり分解したり組み合わせたりできるものが考えられる。
場所としては、児童が造形的な活動を思い付く場所——机の下の隙間、廊下、樹木や遊具がある場所、空き教室、体育館、傾斜地など。
解説はこんな例を示している。
- 小枝や葉などの自然材と選んだ場所の感じを基に、お気に入りの場所をつくる
- 段ボールを組みながらできる空間のよさにこだわり、部屋のような空間を組み立てる
「材料と場所が関わり合いながら発想が展開する」——これが中学年の造形遊びの特徴だ。
新しい形や色を思い付きながら
一度つくった形に,別の材料を加えたり組み合わせたりするなどいろいろと試みる中で,もとの形や色などとは違った形や色などになるようなことを思い付くこと
つくったものを壊して、またつくる。加えてみて、取り除いてみる。次々と形や色を変化させる過程が、造形遊びの核心だ。
最初に「これをつくろう」と決めて、設計図通りにつくるのではない。手を動かしながら、「あ、こうしたら面白い」「もっとこうしてみよう」と発想が連続していく。
技能——組み合わせ、切ってつなぎ、形を変える
材料や用具を適切に扱うとともに,前学年までの材料や用具についての経験を生かし,組み合わせたり,切ってつないだり,形を変えたりするなどして,手や体全体を十分に働かせ,活動を工夫してつくること。
中学年の造形遊びで育てたい技能のキーワードは3つだ。
| 技能 | 内容 |
|---|---|
| 組み合わせる | 材料同士を重ねたり並べたりして、新しい形をつくる |
| 切ってつなぐ | のこぎりで切り、接着剤やテープでつなぐ。分解と結合 |
| 形を変える | 曲げる、ねじる、ちぎる。もとの材料の形を変化させる |
これらは「試すような気持ち」で行われる。
組み合わせてみたらどうなるか,切ってみたらどうなるかなど,試すような気持ちで活動すること
結果を予測してつくるのではなく、やってみて結果を受け止める。この「試す」姿勢が、造形遊びの技能の育て方だ。
友人との関わり
中学年は,友人との活動を好む発達の段階であることや,場所は,一人一人が区切って使うよりも共有したほうが使いやすいことから,友人と共につくる活動がよく見られるようになる。
低学年では一人で夢中になってつくることが多かった。中学年では、友人と一緒につくる活動が自然に増える。
ただし、解説は注意点も示している。
あらかじめグループでつくるものを決めて分担をするのではなく,材料と関わる中から生まれた児童一人一人の気付きやイメージを基に,児童が自然に発想や構想を交流する
分担してつくるのではない。一人ひとりの思いを出し合いながら、自然に協働が生まれる形が大切だ。
教師の関わり
造形遊びにおける教師の役割は、他の活動とは少し異なる。
場所の設定
学校内の環境を教師が見つめ直し,児童の実態と照らし合わせ,資質・能力がより発揮できそうな場所をふだんから探しておくことが重要である。
廊下の隅、校庭の木の下、体育館の壁際——教師が日頃から「この場所なら、子どもたちはどんなことを思い付くだろう」と考えておく。場所を選ぶことが、授業設計の重要な一部だ。
材料の準備
材料の質と量も、活動の質を左右する。
児童が材料の質や量と場所とを考え合わせながら活動できるようにすることも重要である。
多すぎても散漫になり、少なすぎても発想が広がらない。材料の種類と量を意図的に調整することが、教師の腕の見せどころだ。
見守りと励まし
新しい試みをしようとすること自体を捉え,見守ったり励ましたりして,児童が主体的に造形的な活動に向かうようにすることが大切である。
造形遊びでは、活動が次々と展開していく。授業の終わりに形が残っていないことすらある。しかし、形が残っていなくても技能は育っている。
技能を働かせて次々と活動を展開していても,授業時間の終わりに,その形が残っていないことがある。そのような場合も技能は育成されている
「完成品」で評価するのではなく、活動の過程で発揮された資質・能力を捉えることが重要だ。写真や動画を撮っておくなどの工夫も有効だ。
教師として残しておきたいこと
農業は、材料と場所に働きかける仕事だった。畑の土(材料)と地形(場所)を見ながら、「ここにはこの作物が合いそうだ」と発想する。やってみて、うまくいかなければ、別の方法を試す。まさに「つくり、つくりかえ、つくる」の連続だった。
Web開発でも、プロトタイピングは造形遊びに似ている。最初から完成品をつくるのではなく、試しにつくってみて、反応を見て、つくりかえる。アジャイル開発の本質は、「つくり、つくりかえ、つくる」そのものだ。
造形遊びは「遊び」という言葉がついているが、遊びを通じた深い学びだ。完成品がないからこそ、過程そのものに価値がある。教師としてこの活動を設計するとき、「何をつくらせるか」ではなく、「どんな出会いを用意するか」を考えたい。
指導のポイント
- 造形遊びには完成品がない——活動のプロセスそのものが学び
- 材料と場所の両方が発想の基になる——中学年ならではの特徴
- 新しい形や色を次々と思い付く——発想が連続する過程を大切にする
- 技能は「試す」姿勢の中で育つ——組み合わせ・切ってつなぐ・形を変える
- 友人との自然な協働を促す——分担ではなく、発想の交流から
- 教師は場所の選定と材料の準備に力を入れる
- 形が残らなくても技能は育っている——過程を写真や動画で記録する
まとめ——つくり、つくりかえ、つくる
造形遊びは、身近な材料や場所に働きかけ、つくり・つくりかえ・つくる活動だ。
- 材料と場所が関わり合いながら、発想が展開する
- 次々と新しい形や色を思い付き、試し、変化させる
- 友人と共に活動しながら、発想を交流する
- 完成品ではなく、過程そのものに価値がある
- 教師は場所と材料の「出会い」を設計する
「何をつくったか」ではなく、「どうつくったか」。その過程に、子どもの造形的な資質・能力が発揮されている。


この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 図画工作編(文部科学省, 2017)の第3章第2節を基に執筆しています。

