形や色で世界を見る
図画工作科は、「つくる」教科だ。しかし、ただつくるだけではない。
表現及び鑑賞の活動を通して,造形的な見方・考え方を働かせ,生活や社会の中の形や色などと豊かに関わる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
造形的な見方・考え方——これが図画工作科の核心だ。
造形的な見方・考え方とは何か。解説はこう説明している。
感性や想像力を働かせ,対象や事象を,形や色などの造形的な視点で捉え,自分のイメージをもちながら意味や価値をつくりだすこと
世界を「形」と「色」で見る。そして、自分なりの意味や価値を見いだす。算数が「数」で世界を捉え、国語が「言葉」で世界を捉えるように、図画工作は「形や色」で世界を捉える教科だ。
中学年の児童の姿
中学年の児童には、造形的な活動において特徴的な姿が見られる。
ある程度対象との間に距離をおいて考え,そこで気付いたことを活用して活動することができる傾向がある。
低学年では、感じるままに手を動かし、つくることそのものを楽しんでいた。中学年になると、少し客観的な視点が加わる。
- 表し方を工夫することに意欲を示す
- 想像したことを実現することに熱中する
- 手などの働きが巧みさを増し、扱える材料や用具の範囲が広がる
- 友人の発想やアイデアに関心をもつ
- 表し方を紹介し合うなど、周りとの関わりが活発になる
「なんとなくつくる」から「こうしたいと考えてつくる」への変化。これが中学年の造形的な成長だ。
3つの資質・能力
図画工作科で育成する資質・能力は、3つの柱で示されている。
(1) 知識及び技能
対象や事象を捉える造形的な視点について自分の感覚や行為を通して分かるとともに,手や体全体を十分に働かせ材料や用具を使い,表し方などを工夫して,創造的につくったり表したりすることができるようにする。
「知識」は暗記ではない。自分の感覚や行為を通して分かること。絵の具を混ぜることで色の感じが分かる。木材を組み合わせることで形の感じが分かる。体験を通じた理解が、図画工作科の知識だ。
「技能」は、手や体全体を十分に働かせること。中学年では体の成長とともに、のこぎりや金づちなど、扱える用具の範囲が広がる。
(2) 思考力・判断力・表現力等
造形的なよさや面白さ,表したいこと,表し方などについて考え,豊かに発想や構想をしたり,身近にある作品などから自分の見方や感じ方を広げたりすることができるようにする。
「豊かに発想や構想をする」——形や色、イメージなどを基に、楽しみながら活動を思い付いたり、どのように表すかを考えたりすること。
「自分の見方や感じ方を広げる」——友人の作品や身近な美術作品から、自分では思いつかなかった表し方やよさに気付くこと。
(3) 学びに向かう力・人間性等
進んで表現したり鑑賞したりする活動に取り組み,つくりだす喜びを味わうとともに,形や色などに関わり楽しく豊かな生活を創造しようとする態度を養う。
つくりだす喜びを味わう——自分の思いが形になること。その喜びが、形や色を通じて生活を豊かにしようとする態度を育てる。
表現と鑑賞——つくることと見ること
図画工作科の学習活動は、大きく表現と鑑賞の2つで構成される。
表現(A表現)
表現は、さらに2つの活動に分かれる。
| 活動 | 内容 |
|---|---|
| 造形遊びをする活動 | 材料や場所に働きかけ、思いのままにつくり、つくりかえ、つくる |
| 絵や立体、工作に表す活動 | 感じたこと、想像したこと、見たことから、表したいことを見付けて表す |
そして、それぞれの活動において発想や構想(思考力)と技能の2つの事項がある。
鑑賞(B鑑賞)
身近にある作品などを鑑賞する活動を通して,自分たちの作品や身近な美術作品,製作の過程などの造形的なよさや面白さ,表したいこと,いろいろな表し方などについて,感じ取ったり考えたりし,自分の見方や感じ方を広げること。
鑑賞は表現と切り離された別の活動ではない。
表現と鑑賞はそれぞれに独立して働くものではなく,互いに働きかけたり働きかけられたりしながら,一体的に補い合って高まっていく活動である。
つくりながら見る。見ながらつくる。この往還が、図画工作科の学びの特質だ。
共通事項
表現と鑑賞の両方を支える基盤が〔共通事項〕だ。
- 形や色などの感じが分かる(知識)
- 形や色などの感じを基に、自分のイメージをもつ(思考力)
この2つが、全ての造形活動の土台になる。
「創造」という言葉
解説の中で繰り返し使われる言葉がある。「創造」だ。
教科の目標(1),(2),(3)のそれぞれに「創造」を位置付け,図画工作科の学習が造形的な創造活動を目指していることを示している。
- 「創造的につくったり表したりする」(知識及び技能)
- 「創造的に発想や構想をする」(思考力等)
- 「楽しく豊かな生活を創造しようとする態度」(学びに向かう力等)
3つの柱全てに「創造」が入っている。図画工作科は、つくりだすことを通じて学ぶ教科だ。そして、つくりだすのは作品だけではない。
活動や作品をつくりだすことは,自分にとっての意味や価値をつくりだすことであり,同時に,自分自身をもつくりだしていることである
作品をつくりだしながら、自分自身もつくりだしている。ここに、図画工作科の教育的な意味がある。
教師として残しておきたいこと
農業は、形や色と向き合う仕事だった。野菜の色で健康状態が分かる。葉の形で品種の特性が分かる。土の色、空の色、実の色——形や色を手がかりに、自然の状態を読み取る。「造形的な視点で世界を捉える」ということは、農業の現場では日常そのものだった。
Web開発では、UI/UXデザインが造形的な活動そのものだった。ボタンの形、配色、レイアウト——形と色の組み合わせで、ユーザーの体験が大きく変わる。「この色の組み合わせは不安な感じがする」「この形は押しやすそう」——形や色の感じを捉えることが、デザインの出発点だった。
図画工作科が育てる力は、「絵が上手になること」ではない。形や色を通じて世界を捉え、自分の思いを形にし、それを通じて他者とつながる力だ。この力は、どんな仕事にも、どんな生活にも活きる。
指導のポイント
- 造形的な見方・考え方——形や色などの造形的な視点で捉え、自分のイメージをもちながら意味や価値をつくりだす
- 中学年の児童は表し方を工夫することに意欲を示し、扱える用具の範囲が広がる
- 知識は自分の感覚や行為を通して分かること——暗記ではない体験的な理解
- 表現は造形遊びと絵や立体・工作の2つの活動
- 表現と鑑賞は一体的に補い合って高まる——つくりながら見る、見ながらつくる
- 3つの柱全てに「創造」が位置付けられている
- つくりだす喜びが、生活を豊かにしようとする態度を育てる
まとめ——つくりだすことは自分をつくりだすこと
3年生の図画工作科は、造形的な見方・考え方を働かせ、つくりだす喜びを味わう学びだ。
- 形や色などの造形的な視点で世界を捉える
- 自分のイメージをもちながら、意味や価値をつくりだす
- 造形遊び、絵や立体・工作、鑑賞の活動が互いに高め合う
- 中学年の発達特性を生かし、表し方の工夫や想像の実現を支える
- 作品をつくりだしながら、自分自身をもつくりだしていく
「こうしたい」と思い、手を動かし、形にする。思い通りにいかなくて、また試す。つくり、つくりかえ、つくる——その営みの中に、図画工作科の全てがある。


この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 図画工作編(文部科学省, 2017)の第2章及び第3章第2節を基に執筆しています。

