作文が嫌いな子の正体
「作文、書きたくない」という3年生は多い。その理由は「何を書けばいいかわからない」か、「どう並べればいいかわからない」のどちらかであることが多い。
つまり、書くことの嫌いは、書くことの「設計法」を知らないからだ。設計の手順がわかれば、作文は急に怖くなくなる。
3年生のB 書くことは、文章を設計する力を育てる時間である。
学習指導要領のねらい
〔思考力、判断力、表現力等〕B(1):
ア 相手や目的を意識して、経験したことや想像したことなどから書くことを選び、集めた材料を比較したり分類したりして、伝えたいことを明確にすること。
イ 書く内容の中心を明確にし、内容のまとまりで段落をつくったり、段落相互の関係に注意したりして、文章の構成を考えること。
ウ 自分の考えとそれを支える理由や事例との関係を明確にして、書き表し方を工夫すること。
エ 間違いを正したり、相手や目的を意識した表現になっているかを確かめたりして、文や文章を整えること。
オ 書こうとしたことが明確になっているかなど、文章に対する感想や意見を伝え合い、自分の文章のよいところを見付けること。
題材の設定 → 構成 → 記述 → 推敲 → 共有。プロの書き手が踏む手順と同じ。
書くことの学習過程——プロの手順
書くことの学習過程は、大人の書き手と同じ5段階。
- 題材の設定・情報の収集・内容の検討(ア)
- 構成の検討(イ)
- 考えの形成・記述(ウ)
- 推敲(エ)
- 共有(オ)
この手順を意識すると、行き当たりばったりで書くのが一気に解消する。
私はブログ記事を書くとき、必ず:
- テーマを絞る(題材)
- 見出しを先に書く(構成)
- 本文を書く(記述)
- 音読してチェック(推敲)
- 公開して反応を見る(共有)
3年生の学習過程は、大人の書き手の作法そのものだ。
ア 相手・目的・材料
書く前に、相手と目的を決める。
不特定多数の人に対して文章を書くのか、特定の人に対して文章を書くのか、何のために書くのか、読み手はどのようなことを知りたいのかなど、文章を書く相手や目的を念頭に置くことである。
相手と目的が変われば、書き方も変わる。
- 友だちへの手紙:くだけた言葉、楽しいエピソード
- 校長先生への依頼:丁寧な言葉、理由を明確に
- 学級新聞の記事:読者が多い、客観的な事実
相手と目的を曖昧にしたまま書くから、誰にも届かない文章ができる。
材料は比較・分類して選ぶ。全部書けばいい、ではない。読み手にとって必要な材料だけを選ぶ。これは情報を扱う力(知識及び技能(2))との連動だ。
イ 構成——段落で設計
3年生の書くことの核心は、段落による構成だ。
書く内容の中心を明確にするとは、文章の構成を考えるに当たり、書こうとしている材料の中から、中心に述べたいことを一つに絞ることである。
中心を一つに絞る——ここで多くの子どもがつまずく。「あれも書きたい、これも書きたい」という気持ちを抑えて、今回の中心は何かを決める。
段落のつくり方
- 改行によって形式段落を作る
- いくつかの形式段落が意味でまとまって意味段落になる
- 段落ごとに役割を持たせる(問題提示・具体例・理由・結論)
段落相互の関係
- 冒頭部 → 展開部 → 終結部
- 考え ← 理由・事例で支える
- 複数の事例の並列
段落は文章の部屋。各部屋に何を置くかを決めると、文章全体の建物が設計できる。
ウ 記述——考えと理由・事例の関係
記述の核心は、考えとそれを支える理由・事例の関係を明確にすること。
考えを支える理由を記述する際には、「なぜなら〜」「その理由は〜」「〜ためである」など、理由を示すことを明確にする表現を用いることができるようにすることが求められる。
考えを支える事例を記述する際には、「例えば〜」「事例を挙げると〜」「〜などがそれに当たる」などの表現を用いることができるようにする
論理接続の表現を使わせる。これらは論理を可視化する言葉だ。
- なぜなら、その理由は——理由の明示
- 例えば、具体的には——事例の明示
- つまり、要するに——結論の明示
3年生でこれらが使えるようになると、論理的な文章が書けるようになる。
エ 推敲——書いた後にもう一度
推敲は、書き終わってからもう一度見直すこと。
間違いを正したり、相手や目的を意識した表現になっているかを確かめたりして、文や文章を整えること。
推敲のチェックポイント:
- 間違い
- 主述の照応
- 修飾語と被修飾語の関係
- 長音・拗音・促音・撥音の表記
- 助詞の使い方
- 敬体と常体の一貫性
- 表現
- 相手・目的に合った文末表現か
- 相手の知識・関心に合っているか
- 書こうとしたことが明確に伝わるか
学習指導要領は、下書きと推敲後の文章を比べることも推奨している。書き直す前後を並べて見ることで、推敲の価値が実感できる。
私もブログを書くとき、必ず音読して推敲する。目で読むとスルーする違和感が、声に出すと見つかる。3年生でこの習慣を作れれば、一生の財産になる。
オ 共有——他者の目で自分の文章を見る
最後の過程は共有。
書こうとしたことが明確になっているかなど、文章に対する感想や意見を伝え合い、自分の文章のよいところを見付けること。
他者の目に自分の文章を晒す経験は、書き手を育てる。
- 書き手が意図したことが伝わったか
- どこが分かりやすかったか
- どこが分かりにくかったか
相手の読み方を知ることで、自分の書き方が磨かれる。
学習指導要領は、学習過程の各段階のメモも共有することを提案している。
「題材の設定」「情報の収集」「内容の検討」「構成の検討」など、学習過程の各段階のメモなどについても共有することで、書く目的などを確認し合えるようにすることも考えられる。
完成品だけでなく、プロセスを共有する。これはプログラマーのコードレビューに近い感覚だ。最終的な成果物だけでなく、設計判断の過程を共有することで、学びの深さが変わる。
言語活動例——3つのタイプ
3・4年の書くことの言語活動は3つ。
ア 調べたことをまとめて報告する文章
事実やそれを基に考えたことを文章に書く言語活動。
理科の観察記録、社会の調べ学習のまとめなど。事実と考えを分けて書く練習になる。
イ 行事の案内やお礼の手紙
実用的な文章としての手紙を書く言語活動。
日時・場所・内容などの情報を漏れなく伝える。形式に沿って書く練習。手紙の後付けの署名・宛名の位置関係も学ぶ。
ウ 詩や物語をつくる
感じたことや想像したことを書く言語活動。
凝縮した表現、改行形式、連構成(詩)。主人公・事件・展開(物語)。創作する楽しさを体験する。
報告・実用文・創作——3タイプをバランスよく経験させる。それぞれ違う書く技能が育つ。
作文指導の落とし穴
実習で作文指導を任されたとき、陥りやすい落とし穴:
- 題材を与えない:「何でもいい」と言われると書けない。相手・目的・範囲を絞る。
- 構成を考えさせない:いきなり書かせると、ダラダラした作文になる。書く前に構成メモ。
- 書きっぱなしにする:推敲の時間を削らない。
- 評価が「上手・下手」だけ:観点別に評価する(構成は、記述は、推敲は)。
- 教員が添削しすぎる:赤ペンだらけにすると、子どもが書く気を失う。ポイントを絞る。
農業と書くこと——記録の積み重ね
農業をしていた時、毎日の記録をつけていた。
- 気温、天候
- 作業内容
- 作物の状態
- 気付いたこと
書くことは観察を深める。頭の中で「成長が早い気がする」と思うだけの日と、「前日比2cm伸びた、葉の色が濃くなった」と書いた日では、翌日の対応が変わる。
書くことは、考えることを深める営みだ。3年生で「書くって考えることなんだ」と気付いた子は、書くことを怖がらなくなる。
指導のポイント(実習用メモ)
- 相手と目的を毎回明確にする
- 書く前に構成メモ——見出し/段落の役割を先に決める
- 考え・理由・事例の3層を意識させる
- 論理接続の表現(なぜなら、例えば)を使わせる
- 推敲の時間を必ず確保——音読でチェック
- 下書きと推敲後を比較させて効果を実感
- 共有で他者の目を入れる——完成品だけでなく過程も
- 報告・実用文・創作の3タイプをバランスよく

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まとめ——書くことは、構造を設計する営み
3年生のB 書くことは、文章を「設計する」力を育てる時間だ。
- 相手と目的を意識して材料を選ぶ
- 中心を一つに絞って段落で構成を考える
- 考え・理由・事例の関係を明確に記述する
- 推敲で間違いと表現を整える
- 他者と共有してよさを見つける
書くことは、思考を外に出す営みだ。頭の中にあるぼんやりした考えを、文字という形に変える。書く過程で、自分の考えが整理され、発見も生まれる。
3年生の教室で「書くって面白い」と感じる子を一人でも増やすには、設計の手順を教えることが近道だ。書き方を知らずに「書け」と言われるから、子どもは苦しむ。手順を示し、一緒に設計し、書き終わったら一緒に振り返る——この伴走が、書くことを好きにする。
この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編(文部科学省, 2018)の第3章第2節2Bを基に執筆しています。


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