話すことは「構造を持つ発信」、聞くことは「能動的な受信」——3年国語・A 話すこと・聞くこと

3年生の女の子が発表し、若手男性教師が傾聴するアニメ風の教室イラスト。「話すのは構造を持つ発信、聞くのは能動的な受信」のテキスト入り。
目次

話せる、聞ける、は本当か

3年生の子どもは当然、話すことも聞くこともできる。しかし学習指導要領の「話すこと・聞くこと」を読むと、大人でもできていない高度なことが書かれている。

  • 目的を意識して話題を決める
  • 集めた材料を比較・分類する
  • 理由や事例を挙げて話の中心を明確にする
  • 必要なことを記録・質問しながら聞く
  • 司会の役割を果たしながら話し合う
  • 共通点・相違点に着目して考えをまとめる

これは「話せる・聞ける」から「目的を持って話す・聞く・話し合う」への進化。3年生のA領域は、コミュニケーションの構造化に踏み込んでいる。


学習指導要領のねらい

〔思考力、判断力、表現力等〕A(1):

ア 目的を意識して、日常生活の中から話題を決め、集めた材料を比較したり分類したりして、伝え合うために必要な事柄を選ぶこと。
イ 相手に伝わるように、理由や事例などを挙げながら、話の中心が明確になるよう話の構成を考えること。
ウ 話の中心や話す場面を意識して、言葉の抑揚や強弱、間の取り方などを工夫すること。
エ 必要なことを記録したり質問したりしながら聞き、話し手が伝えたいことや自分が聞きたいことの中心を捉え、自分の考えをもつこと。
オ 目的や進め方を確認し、司会などの役割を果たしながら話し合い、互いの意見の共通点や相違点に着目して、考えをまとめること。

話すこと/聞くこと/話し合うことの3つをバランスよく扱う。


話すことの学習過程

話すことの学習過程は、プロのプレゼンターと同じ流れを踏む。

  1. 題材の設定・情報の収集・内容の検討(ア)
  2. 構成の検討・考えの形成(イ)
  3. 表現・共有(ウ)

1. 題材・情報・内容

目的意識を持って話題を決める。日常生活の中で興味を持ったこと、調べたいことから話題を選ぶ。必要なら本や人に聞いて情報を集める。集めた材料を比較・分類して、必要な事柄を選ぶ。

2. 構成・考え

「話の中心」を明確にする。冒頭で中心を述べ、理由や事例で支える構成を考える。

3. 表現・共有

抑揚・強弱・間を工夫して話す。録画して振り返る。

これはビジネスプレゼンの構造と一致する。3年生から、プレゼンの基本を学び始めている。


話の中心を明確にする

3・4年の核心は、「話の中心が明確になるよう話の構成を考える」こと。

冒頭で話の中心を述べ、そのことに合わせた理由や事例などを挙げたり、最初に提示した内容と結論とがずれないようにしたりすることなどが重要である。

中心 → 理由 → 事例の構造は、以下のような形になる。

  • 中心:朝ごはんを食べた方がいいと思います。
  • 理由:なぜなら、脳が働くためにエネルギーが必要だからです。
  • 事例:実際、朝ごはんを食べた日の方が授業に集中できています。

この3層構造が身についていると、話がまとまりのあるものになる。逆にこれがないと、「あのね、で、こないだね、なんかね、えーと」という話題がふらつく発表になる。


聞くこと——記録・質問・中心を捉える

聞くことの核心は、「受動的に聞く」から「能動的に聞く」への転換。

必要なことを記録したり質問したりしながら聞き、話し手が伝えたいことや自分が聞きたいことの中心を捉え、自分の考えをもつこと。

3つの要素がある。

記録

重要な語句は何か判断しながら聞く。メモを取る。

質問

分からない点、確かめたい点を質問する。聞きながら自分の問いを持つ。

中心を捉える

話し手の伝えたいこと、自分が聞きたいことの両方の中心を意識する。

聞くこと=情報を受け取るだけではない記録する・問う・整理するという能動的な営みだ。

これは大人の会議の聞き方と全く同じ。ただ座っているだけの人は、会議から何も得られない。メモをとり、質問し、要点を掴む人が、会議を価値あるものにする。3年生からこのスキルを育てる。


「話の中心」を2種類持つ

聞くことのポイントは、話の中心の2種類を意識すること。

  1. 話し手が伝えたいこと(相手側の中心)
  2. 自分が聞きたいこと(自分側の中心)

この2つが一致しないこともある

  • 話し手:夏休みにハワイに行ったことを自慢したい
  • 聞き手:ハワイの海はどれくらい綺麗か知りたい

このズレを意識して、自分が知りたいことを質問で引き出すのが、聞く技能。大人になっても、インタビューの技術の核心はこれだ。


話し合うこと——司会と役割

3年生の話し合い指導は、役割意識が鍵になる。

目的や進め方を確認し、司会などの役割を果たしながら話し合い、互いの意見の共通点や相違点に着目して、考えをまとめること。

司会の役割

  • 話合いがまとまるように進行する
  • 発言を促す
  • 共通点・相違点を確認する
  • 内容をまとめる

提案者の役割

  • 意見をはっきり述べる
  • 理由や事例で支える

参加者の役割

  • 話題に沿って発言する
  • 相手の発言を受けて話す

全員が順番に司会を経験することを学習指導要領は推奨している。

児童一人一人が、司会などの様々な役割を経験できるようにすることが重要である。

司会は、司会をやってみて初めてわかる。一度やると、他の人が司会の時に協力しやすくなる。


共通点と相違点

話し合いのまとめ方の核心は、共通点と相違点に着目すること。

互いの意見を比較し、考えが相違するときには、それぞれの考えがどのようなことに基づいているのかといったことにも目を向けることが重要である。

対立する意見の背後にある根拠・価値観まで見に行く。これは合意形成の基本技法だ。

さらに学習指導要領は、結論が一つにまとまらない場合にも触れている。

考えが、最終的に一つにまとまらない場合にも、どのような意見が出されたか、どのような点で考えが異なっているか、今後どのように話合いを進めていくとよいかなどを確認することが求められる。

結論が出ないことも話し合いの結果。まとまらない場合のまとめ方を3年生で学ぶことは、多様性を受け入れる力の土台になる。


言語活動例

学習指導要領は、3・4年の話すこと・聞くことの言語活動を3つ示す。

  1. 説明や報告など調べたことを話したり、聞いたりする活動
  2. 質問するなどして情報を集めたり、発表したりする活動
  3. 互いの考えを伝えるなどして、グループや学級全体で話し合う活動

他教科との連動が自然に生まれる。

  • 社会の調べ学習を発表する
  • 理科の観察結果を報告する
  • 道徳の価値について話し合う

国語の時間だけで完結しない。他教科のあらゆる場面が、話すこと・聞くことの訓練の機会になる。


ICTの活用

学習指導要領はICTの活用も提案している。

自分や友達の発表の様子を録画し、観点に沿って振り返るなど、ICT機器を活用することも効果的である。

録画すると、自分の話し方を客観的に見られる。「え、こんなに早口だったの?」「間を取れてなかった」——この気付きが、次の発表の工夫につながる。

私も仕事のプレゼンの後、録画を見返して改善してきた。自分の姿を見る経験は、話すスキルの成長に不可欠だ。3年生からこれを取り入れられるのは、ICT時代の恩恵である。


農業と話すこと——伝わる話し方の実感

農業をしていた時、直売所でお客さんと話す機会が多かった。

  • 「このトマトはどうやって育てた?」
  • 「甘いんですか?酸っぱいんですか?」
  • 「いつが旬?」

質問に答えるとき、中心を先に、理由と事例で支える話し方ができる人は、売上も伸びる。「あのね、うちの畑は、南向きで、土は、赤玉が入ってて……」とダラダラ話しても、お客さんは買う気にならない。

伝わる話し方は、人生の武器。3年生からの積み重ねが、20年後、30年後の仕事の質を決める。


指導のポイント(実習用メモ)

  1. 目的意識を毎回明確にする——何のために話すか
  2. 中心 → 理由 → 事例の3層構造を習慣化
  3. 抑揚・強弱・間を録画で振り返る
  4. 聞くときはメモと質問——能動的な聞き方を訓練
  5. 全員が司会を経験——話し合いの役割を回す
  6. 共通点・相違点を板書で可視化
  7. 結論が出ない話し合いも経験させる
  8. 他教科との連動——発表・報告・議論を横断

まとめ——構造を持って、発信する・受信する

3年生のA領域は、コミュニケーションの構造化を目指す時間だ。

  • 話すこと:目的→題材→構成→表現の学習過程
  • 聞くこと:記録・質問・中心捉え・考えの形成
  • 話し合うこと:司会・役割・共通点と相違点

話す・聞く・話し合うは、国語の中で最も他者と関わる領域だ。そしてこれは、大人になっても延々と続く営みだ。会議、交渉、営業、面接、友人関係、家族関係——すべて話す・聞くの技能で成り立っている。

3年生で植える種は、生涯ものの技能の種である。実習で授業をするなら、「話し合いの後に必ず振り返りの時間」を入れたい。中心は伝わったか、理由や事例は十分だったか、相手の意見を受け止めたか——観点を持った振り返りが、次の話し合いの質を上げる。


この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編(文部科学省, 2018)の第3章第2節2Aを基に執筆しています。

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