文章は「構造」でできている——3年国語・文や文章の指導

小学3年生の男の子がノートに書き込む姿と、「文章=建物」として段落ブロックを積み上げた構造図、主語・述語・修飾語の色分け図解を描いたアニメ風イラスト。「文章は構造でできている——主述・修飾・指示・接続・段落、3年・文や文章」のテキスト入り
目次

なんとなく書ける子が、なんとなく書けなくなる

1・2年の作文は、短い文を並べれば成立する。「きょうは、うれしかったです。おべんとうが、おいしかったです。」——これで十分。

しかし3年生になると、文章の長さが増え、伝えたい内容の複雑さも増す。そのとき、文と文のつながり段落という意識がないと、読んだ人に伝わらない文章になる。

3年生の「文や文章」の単元は、なんとなくから、構造を意識して書くへの転換点だ。


学習指導要領のねらい

〔知識及び技能〕(1)カ:

主語と述語との関係、修飾と被修飾との関係、指示する語句と接続する語句の役割、段落の役割について理解すること。

扱うのは次の5つ。

  1. 主語と述語
  2. 修飾と被修飾
  3. 指示する語句(こそあど言葉)
  4. 接続する語句(つなぎ言葉)
  5. 段落(形式段落・意味段落)

これらは、文章を設計するための基本パーツだ。


主語と述語——文の背骨

文の最も基本的な構造は、「何が/何を」+「どうする/どうした」

  • わたしは 走った。
  • 犬が ほえる。
  • 今日は 晴れだ。

1・2年では「主語と述語が照応することに気付く」レベル。3・4年では理解して使い分けるレベルに進む。

主語と述語がずれている文章は、読み手を混乱させる。

  • × 「昨日の遊びで楽しかった。」(何が楽しかった?)
  • ○ 「昨日の遊びは楽しかった。」(主語が明確)

教室の子どもの作文には、主述が崩れた文がよくある。教員として、主述のペアを意識させる指導が必要だ。

IT的に言えば、主語と述語は関数のシグネチャのようなもの。「誰が」「何をする」が揃って初めて、意味が実行される。


修飾と被修飾——文に厚みを出す

主述だけの文は骨格だけ。そこに修飾語が加わると、文に厚みと具体性が出る。

  • 骨格:「犬が ほえる」
  • 修飾:「大きな 犬が 大きな声で ほえる」

修飾語は、主語や述語に情報を付け足す言葉だ。

修飾語がどこに係るのかという修飾と被修飾の関係にも気を付けて、文の構成を理解することが大切である。

修飾関係が曖昧な文は、意味が二通りに取れてしまう。

  • 赤い 屋根の 家」——赤いのは屋根? 家?
  • 昨日買った 本の 続き」——昨日買ったのは本? 続き?

日本語は語順が比較的自由だが、修飾語は被修飾語の直前に置くのが原則。これを子どもに示すだけで、意味の曖昧さをかなり減らせる。


指示語——文章を簡潔にする「ポインタ」

指示語=「こ・そ・あ・ど言葉」。

  • れ/れ/れ/
  • の/の/の/
  • こ/こ/そこ/

学習指導要領はその役割をこう説明する。

指示する語句を適切に使うことで、文や文章をより簡潔に表現したり、文と文との内容のつながりなどを明瞭に表したりすることができる。

指示語は文章を簡潔にする。同じ言葉を何度も繰り返さず、「それ」で受けることで、流れがスムーズになる。

IT的に言えば、指示語はポインタ(参照)だ。変数を毎回書き直さず、参照で指す。ただし指示先が曖昧だと、読み手は混乱する。プログラムでもnullポインタで事故が起きるように、文章でも「それ」が何を指すか不明瞭だと意味が壊れる。

指示語の指導では、「それは何を指しているか」を問うことが大切だ。


接続語——文と文、段落と段落をつなぐ

接続語=つなぎ言葉

関係
順接だから、それで、すると
逆接しかし、けれども、ところが
並列また、および
添加さらに、しかも、そして
対比一方、逆に
説明なぜなら、というのは、つまり
転換ところで、さて
例示たとえば、具体的には

学習指導要領:

接続する語句を適切に使うことで、文や文章などが、相互にどのように関わるのかを明確にし、文相互の関係、段落相互の関係などをつかんだり、端的に示したりすることができる。

接続語は、文章の論理を可視化する装置だ。

「だから」と「しかし」を正しく使い分けられる子は、原因と結果の関係予想と現実のズレを理解している。接続語の学習は、論理的思考の基礎訓練でもある。

また、学習指導要領は複数の語から成る接続表現にも触れている。

「このようなことから」「なぜかというと」など、複数の語から構成される語句の中にも指示語、接続語と同様の役割をするものがある

単なる短い接続詞だけでなく、接続機能を持つ表現全般を意識させたい。


段落——意味のまとまり

段落は、3年生で新しく深く扱う概念だ。

2種類の段落

  1. 形式段落:改行によって示される文のまとまり
  2. 意味段落:形式段落のいくつかが意味のつながりで一つになったもの

段落の役割

  • 問題を提示する
  • 具体例を示す
  • 理由を述べる
  • 結論を述べる

学習指導要領:

これらの段落相互の関係を理解することで、内容を把握したり必要な情報を的確に見付けたりすることができる。

段落は、文章の論理を構造化する最小単位だ。

段落がない長い文章は読みにくい。段落があっても、段落相互の関係が見えないと、全体の論旨を追えない。段落ごとに 「何を述べている段落か」(問題提示・具体例・理由・結論)を意識すると、文章は 論理的に設計された建物 のように読めるようになる。


書くときと読むとき

これら5つの要素(主述・修飾・指示語・接続語・段落)は、書くときと読むときの両方で役立つ

読むとき

  • 主述を見つけて、文の骨格を掴む
  • 修飾関係を追って、意味を正確に捉える
  • 指示語の指示先を探して、つながりを理解する
  • 接続語で論理の流れを追う
  • 段落ごとに役割を整理して、全体の構造を把握する

書くとき

  • 主述を明確にして、誤読を防ぐ
  • 修飾語を適切に配置する
  • 指示語で繰り返しを減らす
  • 接続語で論理を明示する
  • 段落で内容を整理する

同じ知識が、受信と発信の両方で機能する——これが文法の面白さだ。


Webの文章でも通用する

この5つの要素は、大人の文章でもそのまま通用する。

  • ビジネスメール:主語を省略しすぎず、接続語で論理を示す
  • プレゼン資料:段落(スライド)ごとに役割を明確化
  • ブログ記事:指示語で流れをなめらかに、接続語で展開を示す
  • 技術文書:修飾関係を厳密に、意味段落で構造化

私がWeb開発の仕様書を書くときも、主述を明確に・修飾を曖昧にせず・段落で役割を分けるというルールは常に意識している。3年生で学ぶこの5要素は、大人の文書作成の土台そのものなのだ。


指導のポイント(実習用メモ)

  1. 主述は色分けで可視化——作文指導でも線を引かせる
  2. 修飾関係は曖昧文を示して、2通りに読めることを発見させる
  3. 指示語は「指示先を探すゲーム」で意識化
  4. 接続語は穴埋め問題で用法を定着
  5. 段落は役割(問題提示・具体例・理由・結論)を書き込む練習
  6. 読む書くの両方で同じ5要素を使う
  7. 他教科の文章(理科の観察記録、社会の報告文)でも文法意識を持たせる

まとめ——文章は構造でできている

3年生の「文や文章」単元は、言葉の構造に気付く単元だ。

  • 主語と述語で文の骨格をつくる
  • 修飾と被修飾で文に厚みを出す
  • 指示語で簡潔に
  • 接続語で論理を可視化
  • 段落で意味を構造化

これらは子どもにとって「書くことの言語化」でもある。自分がなんとなく書いていた文章を、構造を持つ設計物として意識し直す。この転換が、3年生の国語の核心の一つだ。

大人になっても、文章が下手な人は、この5要素のどこかが弱い。主述が乱れる人、修飾が曖昧な人、指示語が多すぎる人、接続語が下手な人、段落意識がない人——どこかで3年生のこの単元が身についていないのだ。

実習で書くこと・読むことの授業をするなら、まずこの5要素を意識した振り返りの観点を児童に持たせたい。「今日の作文を見直して、主述は合ってる?接続語は適切?段落はちゃんと切れてる?」——この問いかけだけで、文章の質は変わる。


この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編(文部科学省, 2018)の第3章第2節1(1)カを基に執筆しています。

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