自分たちで学級を楽しくする仕組み——係活動

明るい教室で同時並行に活動する3つの係。壁に「クラス新聞」を貼る新聞係の男児、ホワイトボードの前で「あそびきかく」を仲間に説明する遊び係の女児、机で折り紙の桜を作る飾り係の男児を描いたアニメ風イラスト。「楽しく豊かにする/よさを生かす/全員が役割を持つ」のテキスト入り
目次

係活動と当番活動は違う

「生き物係」と「給食当番」。どちらも学級の仕事だが、性質が違う。

当番活動は、学級生活に必要な仕事を全員で分担する活動だ。給食当番・清掃当番・日直。誰かがやらなければ学級が回らない。義務の性格が強い。

係活動は、学級を楽しく豊かにするために、児童が主体的につくる活動だ。新聞係・遊び係・飾り係。なくても学級は回るが、あると学級が楽しくなる。創造の性格が強い。

学習指導要領解説はこう述べている。

例えば,係活動において,学級を楽しく豊かにするために必要な係を出し合い,合意形成によって組織をつくっていくことである。

係活動は、「やらなければならないこと」ではなく、「やりたいことを形にする」活動だ。この違いを教師が理解していることが、指導の出発点になる。


学習指導要領のねらい

学級活動(1)イは、こう示されている。

学級生活の充実や向上のため,児童が主体的に組織をつくり,役割を自覚しながら仕事を分担して,協力し合い実践すること。

ここには3つの要素がある。

  1. 主体的に組織をつくる——教師が決めるのではなく、児童自身がどんな係が必要かを考え、つくる
  2. 役割を自覚する——自分の役割が学級にとってどんな意味を持つかを理解する
  3. 協力し合い実践する——一人ではなく、メンバーと力を合わせて活動する

育成を目指す資質・能力

この内容で育てたい力は、解説にこう示されている。

集団活動における役割分担の意義や活動の方法について理解し,学級生活の充実や向上のために,一人一人のよさを生かしながら活動できる組織づくりや分担などについて考え,話し合って決めるとともに,自分の役割を自覚しながら,協力し合って実践することができるようにする。

一人一人のよさを生かしながら——画一的に割り振るのではなく、子どもそれぞれの得意や関心を活動に生かす。絵が得意な子は飾り係。本が好きな子は図書係。個性が学級の力になる体験をさせることが、係活動の本質だ。


係活動の設計——教師はどう関わるか

1. どんな係が必要かを児童に考えさせる

年度初めや学期の切り替えに、「この学級をもっと楽しくするために、どんな係があったらいいか」を話し合う。

教師がリストを出して「この中から選びなさい」とやるのは簡単だが、それでは子どもの発意・発想が生きない。必要な係を自分たちで考え出す経験が、自治の力を育てる。

ただし、低学年では「どんな係がいいかな」と問いかけるだけでは出てこないこともある。前年度の例や他のクラスの係を紹介するなど、考えるための材料を教師が提供することは大切だ。

2. 活動内容を児童が決める

係が決まったら、活動内容もメンバーで相談して決める。「新聞係」なら、何をテーマに、いつ発行するか。「遊び係」なら、どんな遊びを、いつ企画するか。

教師が活動内容を細かく指定すると、「やらされている」活動になる。メンバーが話し合い、自分たちで決めることで、自分たちの活動という意識が生まれる。

3. 固定せず、柔軟に見直す

児童一人一人の役割や所属する組織を固定せず,柔軟で弾力性に富んだ組織になるよう工夫することも重要である。

学期ごとに係を見直す。新しい係をつくる。役割を変える。多くの仲間と関わる機会をつくることで、相互理解が深まる。


全員が役割を担う意味

学級の成員全員が何らかの役割を分担し,学級の一員として,みんなから必要とされているという認識をもったり,仲間と共に活動をしているという充実感が得られたりすることができるような組織を工夫することが必要である。

みんなから必要とされている——この実感が、学級への所属感を育てる。

一人も漏れなく、全員がどこかの係に所属し、役割を持つ。「自分がいなくても学級は回る」ではなく、「自分がいるから学級がこうなっている」と感じられること。この自己有用感が、学級活動(1)イの核心だ。


係活動が育てる力

自発性

「やりなさい」と言われなくても、自分たちで考えて動く。新聞の発行日に遅れないように準備する。遊び企画のルールを考える。自分たちで始め、自分たちで回す経験が、自発性を育てる。

責任感

自分が引き受けた役割を最後までやり遂げる。途中で飽きても、仲間がいるから続けられる。責任を果たす経験が、信頼される人になる土台をつくる。

協働する力

一人では新聞は作れない。記事を書く人、絵を描く人、配る人。役割を分けて力を合わせる。協力して一つのことを成し遂げる経験が、チームで働く力につながる。

創造性

「こんなことをしたら面白いんじゃないか」という発想を形にする。教室に掲示する新聞、みんなで楽しめるイベント、季節の飾り。アイデアを実現する喜びを知る場が、係活動だ。


当番活動との関連

当番活動は係活動とは別に存在するが、両者は関連している。

当番活動係活動
性格義務的——やらなければ困る創造的——あると楽しい
内容給食・清掃・日直等新聞・遊び・飾り等
決定教師が基本を設定児童が主体的に決定
交替定期的に輪番学期ごとに見直し

当番活動も学級活動(3)イの「社会参画意識の醸成や働くことの意義の理解」と関連する。「みんなのために働く」という経験が、当番活動と係活動の両方で積み重なっていく。


他教科・他領域との連動

  • 道徳科:「勤労・公共の精神」「友情・信頼」との連動
  • 国語:新聞係は「書くこと」の実践の場
  • 図画工作:飾り係は造形活動の応用
  • 学級活動(1)ア:係活動の見直しを学級会の議題にすることで、合意形成の経験にもなる
  • 学級活動(3)イ:「社会参画意識の醸成や働くことの意義の理解」と直結する

教師として残しておきたいこと

農業の現場では、役割分担が生産性を左右した。一人で全部やろうとすると、どこかに手が回らなくなる。得意な作業を分担し、苦手な部分を補い合う。チームで動く農業は、個人でやる農業よりも強かった。

Web開発でも同じだ。デザイン、フロントエンド、バックエンド、テスト——それぞれの得意分野を持ったメンバーが協力して一つのプロダクトをつくる。「自分の役割を果たすことが、チーム全体の成果になる」という実感が、チームを動かす原動力だった。

係活動は、子どもが初めて「組織の一員として働く」経験をする場だ。自分の得意を生かし、仲間と力を合わせ、学級に貢献する。この小さな経験が、社会で働くための最初の練習になる。


指導のポイント

  1. 係活動と当番活動の違いを明確に理解する——係活動は「楽しく豊かにする」活動
  2. どんな係が必要かは児童に考えさせる——教師がリストを決めない
  3. 活動内容もメンバーで相談して決める
  4. 全員がどこかに所属し、役割を持つようにする
  5. 固定せず柔軟に見直す——学期ごとの再編で多様な関わりをつくる
  6. 「一人一人のよさを生かす」組織づくりを意識する
  7. 活動の振り返りを定期的に行い、活性化を図る

まとめ——自分たちでつくる学級の文化

係活動は、学級の文化を子どもたち自身がつくる活動だ。

  • 教師が決めるのではなく、児童が主体的に組織をつくる
  • 全員が役割を担い、「自分が必要とされている」と感じられる
  • 個性を生かし、協力して、学級を楽しく豊かにする
  • 当番活動(義務)と係活動(創造)の両輪で、集団の中で働く力を育てる

「この係があるから、うちのクラスは楽しい」。子どもたちがそう感じたとき、係活動は本物になっている。

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この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別活動編(文部科学省, 2017)の第3章第1節を基に執筆しています。

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