「うちのクラスから提案しよう」
代表委員会で議題が出る。6年生を送る会のプログラムを考えてほしい。教室に戻った代表委員が報告する。「みんなで何をやるか決めてほしいって」。
ここから学級会が始まる。「うちのクラスは何を出す?」「劇がいい」「歌がいい」「合奏は?」。話し合って、学級としての提案をまとめる。
この「学級の中で話し合って、学校全体に提案する」活動が、学級活動(1)ウだ。
学習指導要領のねらい
学級活動(1)ウは、こう示されている。
児童会など学級の枠を超えた多様な集団における活動や学校行事を通して学校生活の向上を図るため,学級としての提案や取組を話し合って決めること。
ポイントは「学級としての提案や取組」だ。個人ではなく学級として考え、学級として動く。学級の枠の中で完結する活動ではなく、学級から外に向かって発信する活動である。
学級活動と他の特別活動をつなぐ
学習指導要領解説は、この内容の位置づけをこう述べている。
特別活動の各活動・学校行事の内容の関係に着目すると,この内容は,学級活動と児童会活動や学校行事をつなぐ活動であるとも言える。
学級活動(1)ウは、橋渡しの役割を持つ。
学級活動(1)ウ
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児童会活動(代表委員会・委員会活動)
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学校行事(運動会・学芸会・送る会等)
学級会で話し合ったことが代表委員会に持ち込まれ、学校全体の活動になる。逆に、代表委員会からの提案を学級に持ち帰り、学級としてどう取り組むかを決める。この行き来が、学級と学校をつなぐ。
具体的な活動の例
学校行事への学級としての提案
運動会や学芸会の内容の一部を、学級から提案する。「応援団の応援方法を、うちのクラスから提案しよう」「学芸会で何を発表するか、クラスで話し合って決めよう」。
行事は教師が計画するものだが、その中に児童の自発的・自治的な活動を組み込むことができる。学級会で話し合い、合意形成した上で、学校全体に提案する。
代表委員会からの提案への対応
代表委員会から「あいさつ運動をしよう」「廊下を走らないようにしよう」といった提案が来る。これを学級に持ち帰り、「うちのクラスではどう取り組むか」を話し合う。
学級が一方的に受け取るのではなく、学級としての取り組み方を自分たちで考えることで、主体的な参画になる。
異年齢交流
学校の外へと活動の幅を広げ,学校行事における地域社会との交流や特別支援学校や他の幼稚園,認定こども園,保育所,中学校などとの交流の一部において,児童の自発的,自治的な活動として取り組むことも考えられる。
ペア学年との交流、幼稚園・保育所との交流、地域の方との交流——こうした機会に、学級としてどんなことができるかを話し合い、実践する。
育てたい力
この内容で育てたい資質・能力は、次のように示されている。
学校生活をより豊かにする様々な集団での活動のよさを理解したり,他学級や他学年のことを考えながら,創意工夫を生かした取組や提案について話し合って合意形成を図り,協力して実践したりすることができるようにする。
他学級や他学年のことを考えながら——自分のクラスだけでなく、学校全体のことを視野に入れる。この視座の広がりが、(1)ウで育てたい力の核心だ。
低学年では「自分のクラス」が世界のほぼ全てだ。しかし、学年が上がるにつれて、隣のクラス、他の学年、学校全体、地域へと視野が広がっていく。(1)ウは、その広がりを促す活動である。
所属感と公共の精神
これらの多様な集団に所属し,その形成者として生活の向上のために発達の段階に即した役割などを果たす活動を通して,児童は所属感を高めたり,公共の精神などを培ったりすることができる。
学級の一員であると同時に、学校の一員でもある。この二重の所属を実感することで、公共の精神が育つ。
「うちのクラスさえよければいい」ではなく、「学校全体がよくなるために、うちのクラスができることは何か」。この視点の転換が、(1)ウの教育的価値だ。
他教科・他領域との連動
- 児童会活動:代表委員会・各委員会との連携が直接的
- 学校行事:行事への学級としての参画・提案
- 道徳科:「よりよい学校生活・集団生活の充実」「公正・公平・社会正義」
- 総合的な学習の時間:地域との交流活動との連動
- 学級活動(1)ア:学級会での合意形成が(1)ウの基盤になる
教師として残しておきたいこと
Web開発の組織では、チーム内で完結する仕事と、チームを超えて全社に影響する仕事がある。チーム内の改善は自分たちで決められる。しかし、全社的なルールの変更や新しいツールの導入は、他のチームのことも考えて提案しなければならない。
「自分のチームにとっては最善だが、他のチームにとっては迷惑」——こういう提案は通らない。全体を見渡して、全体にとって良いことを提案する力が求められる。
学級活動(1)ウが育てているのは、まさにこの力だ。自分のクラスの視点だけでなく、学校全体の視点で考える。「うちのクラスだけじゃなくて、みんなにとっていいことって何だろう」。この問いを持てる子どもは、社会に出てからも、組織全体を見渡して動ける人になる。
指導のポイント
- (1)ウは学級活動と児童会活動・学校行事をつなぐ橋渡しの内容
- 「学級としての提案」を話し合う——個人ではなく学級として動く
- 代表委員会からの提案を学級に持ち帰り、学級としての取り組み方を話し合う
- 自分のクラスだけでなく、他学級・他学年のことを考える視点を育てる
- 異年齢交流や地域との交流にも、児童の自発的・自治的な活動を組み込む
- 「学級の一員」かつ「学校の一員」という二重の所属感を実感させる
まとめ——学級の力を学校に届ける
学級活動(1)ウは、学級を閉じた世界にしないための仕組みだ。
- 学級会で合意形成した提案を、学校全体に届ける
- 代表委員会からの提案を、学級として受け止め、自分たちの取り組みに変える
- 自分のクラスだけでなく、学校全体にとって何が良いかを考える
- 多様な集団に所属する経験を通じて、公共の精神を育てる
「うちのクラスから提案しよう」。この一言が出る学級は、学校全体を動かす力を持っている。

この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別活動編(文部科学省, 2017)の第3章第1節を基に執筆しています。

