昆虫と植物の体と育ち方——3年理科・身の回りの生物

ヒマワリに水をやる3年生男児と虫眼鏡でチョウを観察する女児、卵→幼虫→蛹→成虫の変態図とチョウの体(頭・胸・腹)・ヒマワリの体(根・茎・葉)の解説図を描いたアニメ風イラスト。「育ち方に順序、頭・胸・腹/根・茎・葉、環境とのつながり」のテキスト入り
目次

1年を貫く単元

3年理科の7単元のうち、この単元だけが通年で走る

春に種を蒔く。芽が出る。葉が茂る。花が咲く。実がなる。種ができる。枯れる。同時に、昆虫の卵を見つける。幼虫を育てる。蛹になる。成虫になる。季節の移り変わりと共に、植物も昆虫も変化していく。その過程を1年かけて追いかける。

他のA領域の単元は数週間のブロックで完結する。しかしB(1) は違う。時間をかけなければ見えない変化を、じっくり観察する。3年理科の中で、最も「生きている」ことに近い単元だ。


学習指導要領のねらい

身の回りの生物について,探したり育てたりする中で,それらの様子や周辺の環境,成長の過程や体のつくりに着目して,それらを比較しながら調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

知識・技能として理解させるのは3点。

(ア) 生物は,色,形,大きさなど,姿に違いがあること。また,周辺の環境と関わって生きていること。
(イ) 昆虫の育ち方には一定の順序があること。また,成虫の体は頭,胸及び腹からできていること。
(ウ) 植物の育ち方には一定の順序があること。また,その体は根,茎及び葉からできていること。

(ア) は生物の多様性と環境との関わり、(イ) は昆虫の育ち方と体のつくり、(ウ) は植物の育ち方と体のつくり。三層構造だ。


3観点で見る学びの姿

知識・技能

生物には姿の違いがあり環境と関わって生きていること、昆虫の育ち方の順序と成虫の体のつくり(頭・胸・腹)、植物の育ち方の順序と体のつくり(根・茎・葉)を理解している。虫眼鏡を正しく使い、生物の特徴を図や絵で記録できる。

思考・判断・表現

身の回りの生物の様子について追究する中で,差異点や共通点を基に,身の回りの生物と環境との関わり,昆虫や植物の成長のきまりや体のつくりについての問題を見いだし,表現すること。

モンシロチョウとバッタの育ち方を比べて「蛹になるものとならないものがいる」と気付けるか。ホウセンカとヒマワリの体のつくりを比べて「どちらも根・茎・葉でできている」と共通点を見つけられるか。

主体的に学習に取り組む態度

進んで生物を探したり育てたりしようとしている。生物を愛護する態度を持っている。

この「生物を愛護する態度」は、A領域にはない、B領域ならではの目標だ。


この単元の位置付け——「生命」概念の出発点

本内容は,生活科「(7)動植物の飼育・栽培」の学習を踏まえて,「生命」についての基本的な概念等を柱とした内容のうちの「生物の構造と機能」,「生命の連続性」,「生物と環境の関わり」に関わるものである。

生活科では動植物を「育てる」ことが中心だった。理科では「観察して比較し、きまりを見つける」ことが加わる。

4年では「人の体のつくりと運動」「季節と生物」へ、6年では「植物の養分と水の通り道」へ、中学では「いろいろな生物とその共通点」へと繋がる。生物を科学的に見る目の、最初の一歩がここにある。


指導の重点

1. 「探す・育てる」の両方を大切にする

(ア) では、身の回りの生物を探す活動が入口になる。校庭、花壇、木の下、石の裏。

児童が身の回りの様々な種類の植物や動物を見たり触れたりにおいを感じたりするなど直接観察することを通して,諸感覚で確認できる特徴を見いだし,捉えるようにする。

見るだけでなく、触る、嗅ぐ。五感を使った直接観察が基本だ。

(イ)(ウ) では、昆虫を飼育し、植物を栽培する。継続的に育てることで、成長の順序を実感する。

2. 昆虫の育ち方——「卵→幼虫→蛹→成虫」

昆虫の育ち方には一定の順序がある。

  • 完全変態:卵 → 幼虫 → 蛹 → 成虫(モンシロチョウ、カブトムシなど)
  • 不完全変態:卵 → 幼虫 → 成虫(バッタ、トンボなど)

昆虫の育ち方については,「卵→幼虫→蛹→成虫」や「卵→幼虫→成虫」などの変態の仕方の違う昆虫を用意し,それらを比較することによって,その過程が異なるものがあることにも触れるようにする。

蛹になるかならないか——この違いに気付かせることが、「比較」の力を使う場面だ。

3. 昆虫の体のつくり——「頭・胸・腹」と「6本のあし」

成虫の体を観察して、共通する特徴を見つける。

昆虫の成虫の体は頭,胸,腹の三つの部分からできていること,頭には目や触角,口があること,胸には3対6本のあしがあり,はねのついているものがあること

「頭・胸・腹の3つに分かれていて、胸から6本のあしが出ている」ものを昆虫という。クモやダンゴムシは昆虫ではない——この定義的な理解を、複数の生き物の比較を通して獲得させる。

4. 植物の育ち方——種子から枯死まで

植物の育ち方には,種子から発芽し子葉が出て,葉がしげり,花が咲き,果実がなって種子ができた後に個体は枯死するという,一定の順序があること

種→発芽→子葉→葉→花→実→種→枯死。この一生の順序を、実際に栽培しながら追いかける。ホウセンカやヒマワリなど、夏生一年生の双子葉植物を使う。

5. 植物の体のつくり——「根・茎・葉」

植物の体は根・茎・葉の3つからできている。根は地中にあり、茎は葉や花をつける。複数の植物を比べて、この共通構造に気付かせる。

昆虫の「頭・胸・腹」と植物の「根・茎・葉」——どちらも3つの部分で体ができている。この対比を意識させると、生物の体の共通構造への理解が深まる。

6. 生物と環境の関わり

(ア) では、生物が周辺の環境と関わって生きていることにも触れる。

昆虫には植物の花の蜜を吸ったり葉を食べたりして生活しているものがいることや,植物をすみかにしているものがいること

昆虫が植物に依存し、植物が昆虫に受粉を助けてもらう。生物同士の関わりへの気付きは、高学年の「生物と環境」の学習に繋がる種だ。

7. 安全と環境への配慮

毒をもつ生物に注意するとともに事故に遭わないようにする

自然環境の中で,生物の採取は必要最小限にとどめるなど,生態系の維持に配慮する

野外学習では、毒虫やハチへの注意が欠かせない。また、むやみに生き物を採取しない態度も育てたい。理科で学ぶことと、道徳の「自然愛護」は、ここで直接繋がる。


他教科・他領域との連動

  • 道徳(自然愛護):自然のすばらしさと不思議さを感じ取り、動植物を大切にする。理科の観察体験が道徳の実感を支える。
  • 道徳(生命の尊さ):生物の一生を追いかけることで、生命への敬意が育つ。
  • 国語:観察記録を書く技能。説明文の読み取りとの連動。
  • 図画工作:生物のスケッチ。細部を観察して描く力。
  • 生活科(低学年からの接続):飼育・栽培の体験。

特に道徳との連動は、この単元の大きな特徴だ。昆虫が卵から成虫になり、やがて死ぬ。植物が発芽し花を咲かせ、種を残して枯れる。生命の一生を見届ける体験は、道徳の「生命の尊さ」「自然愛護」と深く結び付く。


教師として残しておきたいこと

農業では、植物の一生を何度も見届けた。種を蒔き、芽が出て、花が咲き、実がなり、枯れていく。それを繰り返す中で、生命のサイクルが体に染み込んでいった。

特に印象深いのは、枯れる瞬間だ。子どもの栽培活動でも、花が咲くまでは歓声が上がる。しかし枯れ始めると興味を失う子が多い。けれど、枯れた後に種ができている。その種がまた来年の命を繋ぐ。枯れることは、終わりではなく、次の始まりだ。

3年生の栽培活動で、枯れた植物から種を取り出す瞬間を大切にしたい。「この種は、来年また芽が出るよ」。この一言で、生命の連続性が実感になる。


指導のポイント(実習用メモ)

  1. 通年で走る単元——春の種蒔きから冬の枯死まで、計画的に観察を続ける
  2. 探す」と「育てる」の両方を組み込む
  3. 昆虫は完全変態と不完全変態の2種類以上を比較する
  4. 「頭・胸・腹」「根・茎・葉」の共通構造を、比較で発見させる
  5. 生物と環境の関わりにも触れる
  6. 五感を使った直接観察を基本にする
  7. 道徳(自然愛護・生命の尊さ)との連動を年間計画で組む
  8. 生物の採取は必要最小限に、毒のある生物への安全指導も忘れない

まとめ——生きているものと1年を過ごす

3年理科「身の回りの生物」は、生きているものと一緒に1年を過ごす単元だ。

  • 生物には姿の違いがあり、環境と関わって生きている
  • 昆虫の育ち方には順序がある——卵→幼虫→(蛹→)成虫
  • 昆虫の成虫の体は頭・胸・腹、胸から6本のあし
  • 植物の育ち方にも順序がある——種→発芽→葉→花→実→種→枯死
  • 植物の体は根・茎・葉でできている

春に種を蒔いた子どもが、秋にその植物の種を収穫する。飼育箱の幼虫が成虫になって飛び立つ瞬間を見届ける。時間をかけて生命と向き合う経験は、理科の知識以上のものを子どもに残す。

教師の仕事は、この1年間の観察を途切れさせないことだ。他の単元が間に入っても、「あの植物、今どうなっているかな」と声をかけ続ける。継続こそが、この単元の命だ。


この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編(文部科学省, 2017)の第3章第1節を基に執筆しています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次