回路という考え方——3年理科・電気の通り道

乾電池と豆電球を導線で輪につなぎ光らせる3年生男児、点く○/点かない×の比較回路図、ゼムクリップ/アルミホイル/けしごむ/わりばし/ビー玉の通す・通さない分類トレイを描いたアニメ風イラスト。「一周の輪で電気が流れる、切れると点かない、通す物/通さない物」のテキスト入り
目次

「つないだのに点かない!」

乾電池と豆電球を導線でつなぐ。しかし、点かない。「つないだのに点かない!」と困る子がいる。導線が乾電池の片方の極にしか繋がっていなかったのだ。もう一方の極にも繋ぐと、豆電球が点く。

「つなぐ」と「回路を作る」は違う。電気は、一周の輪(回路)ができたときに初めて流れる。この「回路」という概念は、3年生が初めて出会う抽象的な科学概念の一つだ。目に見えない電気が、見えないルートを通っている。その道筋を「回路」という言葉で捉える——これが、この単元の核心にある。


学習指導要領のねらい

電気の回路について,乾電池と豆電球などのつなぎ方と乾電池につないだ物の様子に着目して,電気を通すときと通さないときのつなぎ方を比較しながら調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

知識・技能として理解させるのは2点。

(ア) 電気を通すつなぎ方と通さないつなぎ方があること。
(イ) 電気を通す物と通さない物があること。

(ア) は回路の概念——輪になっていれば電気が通る。途切れていれば通らない。
(イ) は素材の性質——鉄やアルミニウムは通す。ガラスや木は通さない。

磁石の単元と対になっている。磁石では「引き付けられる物と引き付けられない物」を分類した。電気では「通す物と通さない物」を分類する。同じ比較→分類の思考構造だ。


3観点で見る学びの姿

知識・技能

電気を通すつなぎ方(回路)と通さないつなぎ方の違いを理解している。電気を通す物と通さない物があることを理解している。乾電池・豆電球・導線を使って回路を正しく組める。

思考・判断・表現

乾電池と豆電球などのつなぎ方と乾電池につないだ物の様子について追究する中で,差異点や共通点を基に,電気の回路についての問題を見いだし,表現すること。

豆電球が点くつなぎ方と点かないつなぎ方を比べて「何が違うのか」と問いを立てられるか。回路の一部にいろいろな物を入れたとき、「通す物の共通点は何か」を考えられるか。

主体的に学習に取り組む態度

いろいろな物を回路に入れて、電気を通すかどうか進んで調べようとしている。


この単元の位置付け——4年「電流の働き」への土台

本内容は,「エネルギー」についての基本的な概念等を柱とした内容のうちの「エネルギーの変換と保存」に関わるものであり,第4学年「A(3)電流の働き」の学習につながるものである。

4年では、乾電池の数やつなぎ方を変えると電流の大きさが変わることを学ぶ。回路の概念が前提になる。3年で「回路ができると電気が通る」を確実に理解しておかないと、4年の学習が成り立たない。


「回路」を3年生に伝えるには

「回路」は抽象的な概念だ。3年生には見えない。しかし、次のような工夫で実感させられる。

輪のイメージ:導線を使って、乾電池→導線→豆電球→導線→乾電池、と一周の輪を作る。「電気の通り道が、ぐるっと一周つながっているとき、豆電球が点く」。どこか一箇所でも途切れると点かない。

解説はこう述べている。

回路ができると電気が通り,豆電球などが動作することを捉えるようにする。また,導線を乾電池の二つの極以外につないだり,導線と乾電池がつながっていなかったり,回路の一部が切れていたりすると豆電球などは動作しないことも捉えるようにする。

「点く」だけでなく「なぜ点かないか」を考えさせることが大切だ。回路が途切れている箇所を見つけて「ここが切れているから点かない」と説明できるようになることが、この単元のゴールだ。


指導の重点

1. 試行錯誤で回路を発見する

最初から「回路を作りなさい」と指示するのではなく、乾電池と豆電球と導線を渡して「豆電球を点けてみよう」と自由に試させる方が効果的だ。

点く子と点かない子が出る。「何が違うんだろう?」と比較する。ここに差異点と共通点を基に問題を見いだす思考が働く。

2. 「電気を通す物・通さない物」を調べる

回路の一部に、身の回りのいろいろな物を入れて調べる。

  • クリップ(鉄)→ 点く
  • アルミニウム箔 → 点く
  • 消しゴム → 点かない
  • 割り箸 → 点かない
  • ガラス → 点かない

結果を表に分類・整理する。「通す物の共通点は何か」を話し合う。磁石の単元と同じ構造——比較して分類する思考を繰り返し使う。

ここでの発見も、磁石と同じく「金属なら全部通す」とは限らない(実際にはほとんどの金属は通すが、表面の塗装や酸化膜で通りにくいことがある)。実験結果を丁寧に分類する姿勢が大切だ。

3. 「回路」という言葉で説明する

豆電球などが動作したり,動作しなかったりする現象を「回路」という言葉を使用して考察し,適切に説明できるようにすることが考えられる。

3年生が「ここがつながっていないから点かない」と説明するとき、「回路が切れている」という言葉で言い換えられるようにする。科学の用語を使って説明する力の第一歩だ。

4. ものづくりとの連動

回路につないだ豆電球などを動作させたり止めたりすることを目的としたスイッチ,電気を通す物であるかどうかを調べることを目的としたテスターなどが考えられる。

スイッチを作る活動は「回路の一部を切ったり繋いだりする」仕組みを作ることだ。テスターを作る活動は「電気を通す物と通さない物を調べる道具」を自分で作ることだ。どちらも、回路の理解を応用するものづくりになる。

5. 安全指導

豆電球などを使わないで,乾電池の二つの極を直接導線でつなぐことのないようにする

ショート回路の危険性を指導する。乾電池が熱くなり、導線も熱くなる。3年生は好奇心から試してしまうことがあるので、最初に明確に伝える。


他教科・他領域との連動

  • 算数:結果の表への整理。分類の論理的な思考。
  • 図画工作:スイッチやテスターのものづくり。工作の技能と連動。
  • 磁石の性質(同一教科内):「引き付けられる物/引き付けられない物」と「電気を通す物/通さない物」の比較。両方とも鉄はYes。しかしアルミニウムは磁石には引き付けられないが電気は通す。この違いを考えると面白い。

教師として残しておきたいこと

Web開発では、「接続」と「回路」の考え方が日常だった。サーバーとクライアントが繋がっていなければデータは届かない。ネットワークの経路のどこか一箇所でも切れていれば通信は途絶える。「なぜ繋がらないのか」を調べるとき、経路を一つずつ確認していく。

3年生が「なぜ豆電球が点かないのか」を調べるときも同じだ。回路のどこが途切れているかを、順番に確認していく。「つながっていること」の大切さを、電気の実験を通して体で学ぶ。

これから教壇に立つ私にとって、この単元は「目に見えないものを論理で追いかける」訓練として、子どもにとって大きな意味を持つと感じている。


指導のポイント(実習用メモ)

  1. 試行錯誤で回路を発見させる(最初から正解を教えない)
  2. なぜ点かないか」を考えさせることで回路の理解を深める
  3. 身の回りの物を回路に入れて調べ、分類・整理する
  4. 「回路」という言葉を使って説明させる
  5. ものづくり(スイッチ・テスター)で学びを応用する
  6. ショート回路の危険性を最初に指導する
  7. 磁石の性質との比較で思考を深める(同じ物でも磁石と電気で結果が違う)

まとめ——「つながる」と電気が通る

3年理科「電気の通り道」は、回路という抽象概念を体験的に理解する単元だ。

  • 回路(一周の輪)ができると電気が通る
  • 途切れると通らない——「なぜ点かないか」を考える
  • 電気を通す物と通さない物がある——比較→分類の思考
  • ものづくり(スイッチ・テスター)で学びを応用する

「つないだのに点かない!」——この困惑が「なぜだろう」に変わり、「ここが切れていたからだ」に変わる。この思考のプロセスこそが、理科の問題解決の型だ。3年理科A領域の締めくくりとして、ふさわしい単元である。


この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編(文部科学省, 2017)の第3章第1節を基に執筆しています。

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