学級活動は「授業」である
学級活動と聞くと、「係決め」や「お楽しみ会の準備」を思い浮かべる人が多い。確かにそれも含まれる。しかし、学級活動は特別活動の中核をなす授業だ。
学習指導要領はこう述べている。
学級や学校での生活をよりよくするための課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成し,役割を分担して協力して実践したり,学級での話合いを生かして自己の課題の解決及び将来の生き方を描くために意思決定して実践したりすることに,自主的,実践的に取り組むことを通して,第1の目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。
ここに、学級活動の2つの学びの型が示されている。合意形成と意思決定だ。
2つの学びの型
学級活動を貫く最も重要な構造は、この2つの学びの型の違いにある。
合意形成——みんなで決める
学級活動(1)「学級や学校における生活づくりへの参画」の型。学級の全員が話し合い、学級としての考えをまとめる。学級会がその典型だ。
- 課題は児童が見いだす
- 一人一人の思いや願いを出し合う
- 少数意見も大切にし、折り合いを付ける
- 学級としての決定を全員で実践する
意思決定——自分で決める
学級活動(2)(3)の型。児童に共通する課題を話し合うが、最終的には一人一人が自分の解決方法を決める。
- 課題は教師が設定する(年間指導計画に基づく題材)
- 話し合いを通して多様な考えに触れる
- 参考にしながら自分に合った方法を選ぶ
- 一人一人が自分の決めたことを実践する
この2つの型は、学級活動の全活動を貫く。どちらの型で授業を設計するかを間違えると、指導の方向性がずれる。
3つの柱——(1)(2)(3)の構成
学級活動は、3つの柱で構成されている。
| 柱 | 内容 | 学びの型 |
|---|---|---|
| (1) 生活づくりへの参画 | 学級会・係活動・学校全体への提案 | 合意形成 |
| (2) 日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全 | 生活習慣・人間関係・健康安全・食育 | 意思決定 |
| (3) 一人一人のキャリア形成と自己実現 | 希望と目標・社会参画・学び方 | 意思決定 |
(1) 学級や学校における生活づくりへの参画
自発的・自治的な活動の中心。子どもたち自身が課題を見つけ、話し合い、合意形成し、実践する。
3つの内容がある。
- ア 学級や学校における生活上の諸問題の解決——学級会での話し合い
- イ 学級内の組織づくりや役割の自覚——係活動の組織と運営
- ウ 学校における多様な集団の生活の向上——学校全体への提案・取組
(2) 日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全
教師が計画的に指導する内容。児童に共通する課題を取り上げ、話し合いを通して一人一人が意思決定する。
4つの内容がある。
- ア 基本的な生活習慣の形成——整理整頓・挨拶・節度ある生活
- イ よりよい人間関係の形成——互いのよさの発見・違いの尊重
- ウ 心身ともに健康で安全な生活態度の形成——健康管理・防災・防犯
- エ 食育の観点を踏まえた学校給食と望ましい食習慣の形成——食事を通じた学び
(3) 一人一人のキャリア形成と自己実現
将来に向けた自己実現に関わる内容。今回の改訂で(2)から独立して設けられた柱だ。
3つの内容がある。
- ア 現在や将来に希望や目標をもって生きる意欲や態度の形成
- イ 社会参画意識の醸成や働くことの意義の理解
- ウ 主体的な学習態度の形成と学校図書館等の活用
共通する学習過程
3つの柱に共通する学習過程がある。
①問題の発見・確認
↓
②解決方法等の話合い
↓
③解決方法の決定(合意形成 or 意思決定)
↓
④決めたことの実践
↓
⑤振り返り → 次の課題解決へ
(1)では「合意形成」、(2)(3)では「意思決定」で③を行う。しかし、問題を見つけ→話し合い→決め→実践し→振り返るという流れは同じだ。この過程を繰り返す中で、児童は問題解決の力を身に付けていく。
(1)と(2)(3)の違いを整理する
この違いを明確にしておくことが、指導の質を左右する。
| (1) 生活づくりへの参画 | (2)(3) 適応・キャリア | |
|---|---|---|
| 課題の出所 | 児童が発見 | 教師が設定 |
| 話し合いの目的 | 学級としての考えをまとめる | 自分に合った方法を見つける |
| 決定の仕方 | 合意形成(集団決定) | 意思決定(個人決定) |
| 実践の主体 | 学級全体で協力 | 一人一人が自分で |
| 議題/題材 | 「議題」と呼ぶ | 「題材」と呼ぶ |
(1)は「みんなの問題をみんなで解決する」。(2)(3)は「みんなに共通する問題を自分で解決する」。この違いを教師が理解していないと、本来は個人で決めるべき課題を多数決で決めたり、学級全体で取り組むべき課題を個人任せにしたりする事態が起きる。
年間の見通し
学級活動の年間指導計画は、(1)(2)(3)をバランスよく配置する。
4月 : (1)ア 学級の目標・きまりを話し合う
(1)イ 係活動を決める
(3)ア 1年間の目標を立てる
5月 : (2)イ 友達のよさを見つけよう
(1)ア 学級のイベントを計画しよう
6月 : (2)ア 整理整頓の工夫
(2)ウ 歯の健康
(1)ウ 児童会への提案
7月 : (2)ア 夏休みの生活
(3)ウ 1学期の学びを振り返ろう
9月 : (2)ウ 防災と安全
(1)イ 係の見直し
10月: (1)ア 学芸会を成功させよう
(3)イ みんなのために働く喜び
11月: (2)イ 言葉づかいを考えよう
(2)エ 食事のマナーと栄養
12月: (1)ア お楽しみ会を計画しよう
(3)ウ 2学期の学びを振り返ろう
1月 : (3)ア 新年の目標
(2)ウ かぜの予防
2月 : (1)ウ 6年生を送る会の準備
(3)イ 当番活動のふりかえり
3月 : (3)ア 1年間のまとめと来年の自分
(1)ア 学級のまとめの会
ポイントは3つ。
- (1)は通年で——学級会は学期に複数回、係活動は常時活動
- (2)は季節・行事と連動——健康(6月歯・1月かぜ)、安全(9月防災)、食(11月)
- (3)は学期の節目に——目標設定(4月・1月)と振り返り(7月・12月・3月)
他教科・他領域との連動
学級活動は、あらゆる教育活動と関連する。
- 道徳科:人間関係・集団生活のルール・公共心。(2)イと道徳の「主として人との関わりに関すること」は直結する
- 国語:話し合いの技能。学級会での司会・記録・発言は国語の「話すこと・聞くこと」と重なる
- 体育:健康に関する指導。(2)ウの保健領域との連動
- 家庭科:食育。(2)エと食に関する指導の連携
- 総合的な学習の時間:キャリア教育。(3)と「探究的な学び」の接続
- 児童会活動・クラブ活動・学校行事:(1)ウが橋渡し役になる
教師として残しておきたいこと
Web開発のチームでは、「全員で決める」場面と「個人で決める」場面が明確に分かれていた。
プロジェクトの方針はチームで合意する。実装方法は個人が判断する。どちらかが曖昧になると、チームは動かなくなる。全員の合意なしに方針を変えれば信頼が崩れる。一方、実装の細部まで全員で決めようとすれば、何も進まない。
学級活動の(1)と(2)(3)の違いは、まさにこれと同じ構造だ。学級全体のことはみんなで決める。個人のことは自分で決める。このけじめが学級の秩序と個人の自律を両立させる。
農業でも同じだった。地域の水利は全員で合意する。自分の畑の作付けは自分で決める。集団の合意と個人の判断、その使い分けは、どんな組織でも変わらない。
学級活動は、子どもたちが「集団の中の個人」として生きる力を育てる場だ。合意形成と意思決定——この2つの力は、大人になってからも使い続ける力である。
指導のポイント
- 合意形成と意思決定の違いを明確に理解してから授業に臨む
- (1)は児童主体——教師は適切に指導するが、課題も実践も児童が主導する
- (2)(3)は教師が計画的に——年間指導計画に基づいて題材を設定する
- 学習過程(問題発見→話合い→決定→実践→振り返り)を繰り返し体験させる
- (1)(2)(3)をバランスよく年間に配置する
- 他教科・道徳科・行事との連動を意識して年間計画を立てる
- 話し合って決めたことは必ず実践する——話し合いだけで終わらせない
まとめ——合意形成と意思決定が学級をつくる
学級活動の全体像は、こう整理できる。
- 2つの学びの型:合意形成(みんなで決める)と意思決定(自分で決める)
- 3つの柱:(1)生活づくりへの参画、(2)適応と健康安全、(3)キャリア形成
- 共通する学習過程:問題発見→話合い→決定→実践→振り返り
- 年間を通じて(1)(2)(3)をバランスよく配置する
「学級活動」と一言で言っても、その中身は多層的だ。学級会で合意形成する力と、自分の課題に向き合い意思決定する力。この2つが育つとき、学級は子どもたちにとって自分たちでつくる場になる。
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この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別活動編(文部科学省, 2017)の第3章第1節を基に執筆しています。

