探究的な学習とは
探究的な学習とは,物事の本質を探って見極めようとする一連の知的営みのことである。
「物事の本質を探って見極める」——これが探究の定義だ。表面的な理解で終わらず、「なぜそうなるのか」「本当にそうなのか」と深く掘り下げていく。
探究的な学習は、4つの段階が発展的に繰り返される。
① 課題の設定
日常生活や社会に目を向けた時に湧き上がってくる疑問や関心に基づいて,自ら課題を見付ける。
探究の出発点は、自分自身の疑問や関心だ。教師から与えられた課題ではなく、児童が自ら「知りたい」「調べたい」と思うことが出発点になる。
ただし、3年生は探究の初心者だ。いきなり「課題を見つけなさい」と言われても難しい。教師が適切な場面を設定し、児童の気付きや疑問を引き出すことが大切だ。
たとえば、地域の川を実際に歩いてみる。きれいな場所と汚れた場所がある。「なぜここだけ汚れているのだろう?」——この実体験からの疑問が、探究課題の種になる。
② 情報の収集
具体的な問題について情報を収集する。
課題が設定されたら、情報を集める。情報収集の方法は多様だ。
- インタビュー:地域の人に話を聞く
- 観察・調査:現地を訪れて見る、測る、記録する
- 図書資料:本や新聞で調べる
- ICT活用:インターネットで検索する
- 体験活動:実際にやってみる
中学年では、直接体験を通じた情報収集が特に重要だ。画面の向こうの情報だけでなく、自分の目で見て、耳で聴いて、手で触れる体験が、探究の質を高める。
③ 整理・分析
情報を整理・分析したり,知識や技能に結び付けたり,考えを出し合ったりしながら問題の解決に取り組む。
集めた情報をそのまま並べるだけでは、探究にならない。情報を整理し、分析する過程が必要だ。
「整理」とは、情報を分類し、比較し、関連付けること。「分析」とは、整理した情報から意味を読み取り、解釈すること。
ここで重要なのが、考えを出し合うことだ。一人で考えるだけでなく、友達と話し合い、異なる見方を取り入れる。他者との対話が、自分だけでは気付けなかった視点を開く。
④ まとめ・表現
明らかになった考えや意見などをまとめ・表現し,そこからまた新たな課題を見付け,更なる問題の解決を始める。
探究の結果を、人に伝わる形にまとめる。レポート、ポスター、プレゼンテーション、新聞、劇——表現の方法は多様だ。
まとめ・表現の過程で、「ここがまだ分からない」「もっと調べたいことが出てきた」という気付きが生まれる。そこから新たな課題が見付かり、探究のサイクルが再び回り始める。
スパイラルに深まる
この4段階は、一度きりではない。
明らかになった考えや意見などをまとめ・表現し,そこからまた新たな課題を見付け,更なる問題の解決を始めるといった学習活動を発展的に繰り返していく。
1周目の探究で得た理解を土台に、2周目ではより深い問いが生まれる。3周目では、さらに本質に迫る。スパイラルに繰り返すことで、理解が深まっていく。
ただし、この4段階を固定的に捉える必要はない。
物事の本質を探って見極めようとするとき,活動の順序が入れ替わったり,ある活動が重点的に行われたりすることは,当然起こり得ることだからである。
情報を集めている途中で課題が変わることもある。まとめている途中で追加調査が必要になることもある。柔軟に行き来することが、探究のリアルな姿だ。
主体的・対話的で深い学び
探究のプロセスは、「主体的・対話的で深い学び」と密接に関わる。
主体的な学び
自分で課題を見つけ、自分で情報を集め、自分で考える。学びの見通しを立て、振り返りを通じて次の学びへつなぐ。探究のプロセスそのものが、主体的な学びの構造だ。
対話的な学び
友達と考えを出し合い、地域の人にインタビューし、専門家の話を聞く。他者との協働や多様な情報交換を通じて、考えを広げ、深める。
深い学び
各教科で学んだ見方・考え方を総合的に活用し、実社会・実生活の課題に向き合う。表面的な理解にとどまらず、本質を探る。
探究的な学習で見られる児童の姿
解説は、探究的な学習で見られる豊かな学びの姿を挙げている。
- 事象を捉える感性や問題意識が揺さぶられて、学習への取組が真剣になる
- 身に付けた知識及び技能を活用し、その有用性を実感する
- 見方が広がったことを喜び、更なる学習への意欲を高める
- 概念が具体性を増して理解が深まる
- 学んだことを自己と結び付けて、自分の成長を自覚したり自己の生き方を考えたりする
これらの姿は、探究のプロセスを繰り返す中で、自然に現れてくるものだ。
他教科との関連
探究のプロセスは、各教科の学びと深く関連している。
| 探究の段階 | 関連する教科の力 |
|---|---|
| 課題の設定 | 社会科の地域理解、理科の自然への関心 |
| 情報の収集 | 国語科の聞く力・読む力、社会科の資料活用 |
| 整理・分析 | 算数科のデータ活用、理科の比較・関連付け |
| まとめ・表現 | 国語科の書く力・話す力、図画工作科の表現力 |
各教科で培った力が、探究のプロセスの中で総合的に発揮される。そして、探究の中で使うことで、各教科の力がより確かなものになる。
教師として残しておきたいこと
農業では、このプロセスを毎日のように繰り返していた。「今年の作物の育ちが悪い」(課題の設定)→「土壌を分析し、天候データを調べ、近隣の農家に聞く」(情報の収集)→「肥料のバランスが偏っているのではないか」(整理・分析)→「施肥計画を変えて実行し、結果を記録する」(まとめ・表現)→「やはり別の要因もありそうだ」(新たな課題)。農業は探究の連続だった。
Web開発でも同じだ。「ユーザーが離脱する」(課題)→「アクセスログを分析し、ユーザーインタビューを行う」(情報収集)→「この画面で迷っている」(分析)→「UIを改善してリリースする」(まとめ・表現)→「別のページでも同じ問題が——」(新たな課題)。
探究のプロセスは、学校を出た後も使い続ける力だ。むしろ、社会に出てからこそ、このプロセスが本領を発揮する。総合的な学習の時間は、その力を育てる場だ。
指導のポイント
- 4段階のスパイラル——課題設定→情報収集→整理分析→まとめ表現が繰り返される
- 4段階は固定的ではない——柔軟に行き来することが探究のリアルな姿
- 課題は児童自身が見つける——教師は気付きや疑問を引き出す場を設定する
- 直接体験を重視する——見る・聴く・触れる体験が探究の質を高める
- 整理・分析では友達と考えを出し合う——対話が新しい視点を開く
- まとめ・表現から新たな課題が生まれる——ここがスパイラルの起点
- 各教科で培った力を総合的に活用する場として位置付ける
まとめ——問い続ける力
探究のプロセスは、課題を設定し、情報を集め、整理・分析し、まとめ・表現する一連の知的営みだ。
- 4段階がスパイラルに繰り返され、理解が深まっていく
- 固定的ではなく、柔軟に行き来する
- 主体的・対話的で深い学びが実現される場
- 各教科で培った力が総合的に発揮される
- 探究を通じて、自己の生き方を考える
「分かった!」で終わらない。「分かった。でも、ここがまだ分からない」——問い続ける力こそが、探究的な学習の最も大切な成果だ。


この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総合的な学習の時間編(文部科学省, 2017)の第2章及び第7章を基に執筆しています。

