音楽の「言葉」を学ぶ——共通事項と音楽を形づくっている要素

楽譜を見ながら「リズム」「旋律」「フレーズ」などの音楽用語カードを手にする児童たち、音楽の構造を色分けした図が黒板に描かれた音楽室の様子のアニメ風イラスト。「音楽の言葉を学ぶ」のテキスト入り
目次

全ての活動を貫くもの

音楽科には、歌唱・器楽・音楽づくり・鑑賞の4つの活動がある。しかし、これら全てを貫く共通の基盤がある。〔共通事項〕だ。

〔共通事項〕は,表現及び鑑賞の学習において共通に必要となる資質・能力を示したものである。

共通事項は独立した単元ではない。歌唱の中でも、器楽の中でも、音楽づくりの中でも、鑑賞の中でも、常に働かせる資質・能力だ。音楽科の全ての学びを支える「言語」のようなものだと言える。


2つの資質・能力

共通事項は、2つの資質・能力で構成される。

ア 思考力——聴き取ったことと感じ取ったこととの関わり

音楽を形づくっている要素を聴き取り,それらの働きが生み出すよさや面白さ,美しさを感じ取りながら,聴き取ったことと感じ取ったこととの関わりについて考えること。

これが音楽科の思考力の核心だ。

  • 聴き取る:音楽を形づくっている要素の特徴を客観的に捉える(「速度が遅い」「リズムが繰り返されている」)
  • 感じ取る:それらの働きが生み出すよさや面白さ、美しさを主観的に受け止める(「のんびりした感じ」「楽しい感じ」)
  • 関わりについて考える:聴き取ったことと感じ取ったことを結び付けて考える

解説が示す具体例が明快だ。

だんだん忙しい感じになってきたのに,急にのんびりとした感じに変わったのは,速度がだんだん速くなった後に,急に速度が遅くなったから

「忙しい感じ→のんびりした感じ」は感じ取ったこと。「速度がだんだん速く→急に遅く」は聴き取ったこと。この2つを結び付けて「だから、こう感じたのだ」と考えること——これが音楽的な思考だ。


イ 知識——音楽における働きと関わらせて理解する

音楽を形づくっている要素及びそれらに関わる音符,休符,記号や用語について,音楽における働きと関わらせて理解すること。

音符や休符、記号や用語の名前を覚えるだけではない。それらが音楽の中でどのような働きをしているかと関わらせて理解する。

たとえば、「四分音符は1拍の長さ」という知識だけでは不十分だ。「この曲では四分音符が行進のリズムをつくっている」——音楽の中での働きと結び付けることで、生きた知識になる。


音楽を形づくっている要素

音楽を形づくっている要素は、2つのカテゴリーに分けられる。

ア 音楽を特徴付けている要素

要素内容
音色声や楽器の音の質感
リズム音の長短の組み合わせ
速度音楽の速さ
旋律音の高低の流れ
強弱音の大きさの変化
拍の流れ一定の間隔で打たれる拍の感覚
フレーズ音楽のまとまり(文における「文節」のようなもの)

イ 音楽の仕組み

仕組み内容
反復同じ音型やフレーズが繰り返されること
呼びかけとこたえ一方の音楽的な表現に他方が応答すること
変化音型やフレーズが変わっていくこと
音楽の縦と横との関係同時に鳴る音の重なり(縦)と時間的な流れ(横)

「特徴付けている要素」は音楽の素材。「仕組み」は素材を組み合わせる方法。この2つのカテゴリーが合わさって、音楽が形づくられる。


フレーズ——音楽の「文節」

中学年で特に意識したい要素がフレーズだ。

フレーズとは、音楽のまとまりのこと。国語で言えば「文節」に当たる。文を文節に分けるように、音楽をフレーズに分けて捉える。

フレーズを感じ取ることで:

  • 歌唱で息継ぎの場所が分かる
  • 器楽で音楽の流れが見える
  • 鑑賞で曲の構造が理解できる

「ここで一息」「ここからが次のまとまり」——フレーズの感覚は、音楽を理解する上での基本的な力だ。


音符・休符・記号・用語

中学年では、音楽の活動の中で以下のようなものに触れていく。

  • 音符:全音符、二分音符、四分音符、八分音符、付点二分音符、付点四分音符
  • 休符:全休符、二分休符、四分休符、八分休符
  • 記号:ト音記号、ヘ音記号、拍子記号、フラット・シャープ、スラー、スタッカート、クレシェンド、デクレシェンド、タイ、反復記号 など
  • 用語:フォルテ、ピアノ、メゾフォルテ、メゾピアノ など

ただし、これらを暗記させることが目的ではない。

単にその名称や意味を知るだけでなく,表現及び鑑賞の様々な学習活動の中で,音楽における働きと関わらせて,その意味や効果を理解させることが必要である。

「フォルテ」は「強く」という意味。しかし大切なのは、「ここでフォルテになるから、曲の雰囲気がガラッと変わるんだ」という理解だ。記号や用語が、音楽の中でどんな効果を生んでいるかを実感させる。


表現と鑑賞をつなぐ

共通事項が全ての活動を貫くことの意味は、表現と鑑賞をつなぐことにある。

たとえば、歌唱で「反復」を意識して歌った経験があれば、鑑賞で曲の中の反復に気付きやすくなる。音楽づくりで「呼びかけとこたえ」を使って音楽をつくった経験があれば、鑑賞でその仕組みを聴き取りやすくなる。

逆もまた然りだ。鑑賞で「強弱の変化が曲想の変化を生んでいる」ことに気付けば、歌唱で強弱を工夫する手掛かりになる。

共通事項は、表現と鑑賞の間を行き来する橋渡しだ。


他教科・他領域との連動

  • 国語:言葉の構造(文・文節・単語)と音楽の構造(曲・フレーズ・音)の対応
  • 算数:拍の数え方、リズムの規則性(パターン認識)
  • 理科:音の性質——振動、高さ、大きさと音楽の要素の関連
  • 図画工作:色や形の要素と音楽の要素の対応——色が変わるように、音色が変わる
  • 体育(表現運動):リズムに乗って踊る活動との直結

教師として残しておきたいこと

農業で使う言葉には、「見えないものに名前を付ける」力があった。土の状態を「ふかふか」「ガチガチ」と表現する。作物の状態を「元気がない」「色が薄い」と言語化する。言葉にすることで、初めて対処ができる。

Web開発でも同じだった。ユーザーの行動を「離脱率が高い」「コンバージョンが低い」と数値化し、言語化する。言葉にならなければ、改善のしようがない。

音楽を形づくっている要素を学ぶことは、音楽に言葉を与えることだ。「なんかいい感じ」だった印象が、「旋律が上がっていくから、だんだん盛り上がる感じがする」と言える。言葉を得ることで、音楽をより深く聴き、より豊かに表現できるようになる。

共通事項は、音楽の「語彙力」を育てる。語彙が増えれば、感じ方も表現も豊かになる。


指導のポイント

  1. 〔共通事項〕は独立した単元ではない——全ての活動の中で働かせる
  2. 聴き取ったこと(客観)と感じ取ったこと(主観)の関わりを考えることが核心
  3. 音楽を形づくっている要素は「特徴付けている要素」(素材)と「仕組み」(組み合わせ方)の2層
  4. フレーズの感覚は、歌唱・器楽・鑑賞全てに通じる基本的な力
  5. 音符・休符・記号・用語は、音楽における働きと関わらせて理解させる——暗記ではない
  6. 共通事項は表現と鑑賞をつなぐ橋渡し——一方で学んだことが他方で生きる
  7. 音楽に言葉を与えることで、聴き方も表現も豊かになる

まとめ——音楽に言葉を与える

共通事項と音楽を形づくっている要素は、音楽科の全ての学びを支える基盤だ。

  • 音楽を形づくっている要素を聴き取り、よさや面白さを感じ取る
  • 聴き取ったことと感じ取ったことの関わりについて考える
  • 音符・休符・記号・用語を音楽の中で生きた知識として理解する
  • 特徴付けている要素(音色・リズム・速度・旋律・強弱・拍の流れ・フレーズ)と仕組み(反復・変化・呼びかけとこたえ・音楽の縦と横)が音楽をつくる
  • 共通事項が表現と鑑賞を往復する学びを可能にする

「なんかいい感じ」が「リズムが反復されているから、安心感がある」に変わる。音楽に言葉を与えること。それは、自分の感覚を大切にしながら、他者と共有できる力を育てることだ。

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この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 音楽編(文部科学省, 2017)の第3章第2節を基に執筆しています。

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