中学年から始まる「保健」
1・2年生の体育に保健領域はなかった。中学年で初めて、保健が体育の中に登場する。
中学年の保健は2つの単元で構成される。
- 「健康な生活」(3年生で指導)
- 「体の発育・発達」(4年生で指導)
健康な生活については,児童が自ら主体的に健康によい生活を送るための基礎として,健康の大切さを認識できるようにするとともに,毎日の生活に関心をもつようにし,健康によい生活の仕方を理解できるようにする必要がある。
運動領域が「体を動かす」学びなら、保健領域は「自分の体を知る」学びだ。運動と保健の両輪で、生涯にわたる健康づくりの土台を築く。
(1) 健康な生活(3年生)
健康の状態は何で決まるのか
心や体の調子がよいなどの健康の状態は,主体の要因や周囲の環境の要因が関わっていること。
健康な状態とは、気持ちが意欲的であること、元気なこと、具合の悪いところがないこと。そして健康の状態には、2つの要因が関わっている。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 主体の要因 | 1日の生活の仕方(運動・食事・休養・睡眠)、体の清潔 |
| 環境の要因 | 身の回りの環境(明るさ、換気など) |
「今日は元気だ」「なんだか調子が悪い」——その状態は、自分の生活の仕方と周りの環境の両方が関わっている。これを理解することが出発点だ。
1日の生活の仕方
健康の保持増進には,1日の生活の仕方が深く関わっており,1日の生活のリズムに合わせて,運動,食事,休養及び睡眠をとることが必要であること。
運動・食事・休養・睡眠の4つの調和。どれか一つだけでは不十分で、これらがバランスよく整っていることが大切だ。
また、体の清潔を保つことも重要だ。手や足の清潔、ハンカチや衣服の清潔——基本的な生活習慣が健康の土台になる。
身の回りの環境
健康の保持増進には,生活環境が関わっており,部屋の明るさの調節や換気などの生活環境を整えることが必要であること。
明るさの調節と換気。教室でも家庭でも、この2つが健康に影響する。暗すぎる部屋で勉強すれば目が疲れる。換気をしなければ空気が悪くなり、体調を崩す。
(2) 体の発育・発達(4年生)
年齢に伴う変化と個人差
体は,年齢に伴って変化すること。また,体の発育・発達には,個人差があること。
身長や体重は年齢とともに変化する。しかし、その変化のペースには個人差がある。早く背が伸びる子もいれば、ゆっくりの子もいる。
自分と他の人では発育・発達などに違いがあることに気付き,それらを肯定的に受け止めることが大切であること。
「周りと違っても大丈夫」——個人差を肯定的に受け止めることが、この単元の大切なメッセージだ。
思春期の体の変化
体は,思春期になると次第に大人の体に近づき,体つきが変わったり,初経,精通などが起こったりすること。また,異性への関心が芽生えること。
思春期の体の変化について、次のことを理解する。
- 男子はがっしりした体つきに、女子は丸みのある体つきになるなど、男女の特徴が現れる
- 初経、精通、変声、発毛が起こる
- 異性への関心も芽生える
- これらは個人差があるものの、大人の体に近づく現象である
指導に当たっては,発達の段階を踏まえること,学校全体で共通理解を図ること,保護者の理解を得ることなどに配慮することが大切である。
この内容は特にデリケートだ。学校全体での共通理解と保護者の理解を得た上で指導する。
体をよりよく発育・発達させるための生活
体をよりよく発育・発達させるための生活の仕方には,体の発育・発達によい運動,多くの種類の食品をとることができるようなバランスのとれた食事,適切な休養及び睡眠などが必要であること。
「健康な生活」で学んだ運動・食事・休養・睡眠が、ここでも登場する。今度は「健康の維持」だけでなく、「体をよりよく発育・発達させる」という視点が加わる。
具体的には:
- 運動は生涯を通じて骨や筋肉を丈夫にする効果がある
- 食事では、たん白質、カルシウム、ビタミンなどの摂取が必要
- 適切な休養・睡眠が体の成長を支える
保健の思考力——課題を見付け、考え、表現する
保健領域にも、運動領域と同じく「思考力・判断力・表現力等」の目標がある。
健康な生活の思考力
- 主体の要因や環境の要因から健康に関わる課題を見付ける
- 学習したことと自分の生活とを比べたり関連付けたりして、方法を考える
- 考えた方法を学習カードに書いたり、発表したりして伝え合う
体の発育・発達の思考力
- 年齢に伴う体の変化や生活の仕方から課題を見付ける
- 思春期の体の変化について、自己の体の発育・発達と結び付けて考える
- 体をよりよく発育・発達させるための生活について、自己の生活と比べたり関連付けたりして考える
どちらにも共通するのは、「自分の生活と結び付けて考える」ことだ。知識として学ぶだけでなく、「では、自分はどうか?」「自分の生活で何を変えられるか?」と考えることで、学びが実践につながる。
運動領域との関連
保健領域と運動領域は密接に関連している。
運動と健康が密接に関連していることについての具体的な考えがもてるよう指導すること。
たとえば、保健で「体の発育・発達には適切な運動が必要」と学んだことを、体つくり運動で「跳ぶ、はねるなどの動き」を実際に行うことで実感する。
知識と体験をつなげる——これが、保健と運動を同じ教科で学ぶ意味だ。
学校での保健活動との連動
学校でも,健康診断や学校給食など様々な活動が行われていることについて触れるものとする。
健康診断の結果を教材にしたり、学校給食の献立から栄養を学んだりすることで、保健の学びが日常の学校生活とつながる。養護教諭との連携も重要だ。
他教科・他領域との連動
- 体育(運動領域):保健で学んだ運動の効果を、体つくり運動等で実感する
- 理科:体の仕組みに関する基礎的な理解
- 家庭科(5年以降):栄養や食事に関する学習との接続
- 学級活動(2)ウ:心身ともに健康で安全な生活態度の形成との直結
- 学級活動(2)エ:食育の観点を踏まえた学校給食と食習慣の形成
- 道徳科:「節度・節制」——規則正しい生活、望ましい生活習慣
教師として残しておきたいこと
農業は体が資本の仕事だった。体調を崩せば作業ができない。天候に合わせた生活リズム、バランスのとれた食事、十分な睡眠——健康管理は農業の基本だった。
特に実感していたのは、運動・食事・休養・睡眠のバランスだ。農繁期は体を酷使する。だからこそ、食事で栄養をしっかり取り、夜は早く休む。どれか一つが崩れると、体全体のバランスが崩れる。
Web開発に転身してからは、デスクワーク中心の生活で運動不足を痛感した。意識的に体を動かす時間をつくらなければ、あっという間に体力が落ちる。「運動が健康に大切だ」ということは、頭では分かっていた。しかし、農業からデスクワークへの転換で、体で思い知った。
保健の授業で子どもに伝えたいのは、「自分の体は自分で守る」ということだ。運動・食事・休養・睡眠——どれも「やりなさい」と言われてやるのではなく、なぜ大切かを理解した上で、自分で判断して行動する力を育てたい。
指導のポイント
- 保健領域は中学年で新設——3年「健康な生活」、4年「体の発育・発達」
- 健康の状態は主体の要因(生活の仕方)と環境の要因(明るさ・換気)が関わる
- 運動・食事・休養・睡眠の調和が健康の鍵
- 体の発育・発達には個人差がある——肯定的に受け止めることが大切
- 思春期の体の変化は学校全体での共通理解と保護者の理解を得て指導する
- 「自分の生活と比べて・関連付けて考える」思考力を育てる
- 運動領域と保健領域をつなげる——知識と体験の往復が学びを深める
まとめ——自分の体を知り、健康に生きる
保健は、自分の体を知り、健康に生きる力の土台をつくる領域だ。
- 健康な生活には、生活の仕方(主体の要因)と環境(環境の要因)の両方が関わる
- 運動・食事・休養・睡眠の調和が、健康と発育・発達の鍵
- 体の変化には個人差がある——それを肯定的に受け止める
- 知識を学ぶだけでなく、自分の生活と結び付けて考える
- 運動領域と保健領域は車の両輪——つなげて指導することで学びが深まる
「なぜ早く寝なきゃいけないの?」「なぜ野菜を食べなきゃいけないの?」——子どもの素朴な疑問に、根拠をもって答えられる力を育てる。それが保健の学びだ。


この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編(文部科学省, 2017)の第2章第2節を基に執筆しています。

