「遊び」から「運動」へ
1・2年生の体育は、領域名に「遊び」が付いていた。「器械・器具を使っての運動遊び」「走・跳の運動遊び」「水遊び」「表現リズム遊び」。
3年生からは違う。「器械運動」「走・跳の運動」「水泳運動」「表現運動」。「遊び」が取れて「運動」になる。
これは名前だけの変化ではない。低学年では「楽しさに触れる」ことが目標だった。中学年では「楽しさや喜びに触れる」ことが目標になる。楽しさだけでなく、友達と協力して得られる達成感や、課題を解決した成就感——つまり「喜び」が加わる。
3・4年の目標——3つの柱
学習指導要領は、中学年の目標を3つの柱で示している。
知識及び技能
各種の運動の楽しさや喜びに触れ,その行い方及び健康で安全な生活や体の発育・発達について理解するとともに,基本的な動きや技能を身に付けるようにする。
運動の行い方を知ること、そして基本的な動きや技能を身に付けること。中学年から保健領域(健康な生活、体の発育・発達)も加わる。
思考力,判断力,表現力等
自己の運動や身近な生活における健康の課題を見付け,その解決のための方法や活動を工夫するとともに,考えたことを他者に伝える力を養う。
中学年の思考力の重点は「自己の課題を見付ける」ことだ。低学年は「行い方を工夫する」、高学年は「課題の解決の仕方を工夫する」へと発展する。課題発見が中学年の核心だ。
学びに向かう力,人間性等
各種の運動に進んで取り組み,きまりを守り誰とでも仲よく運動をしたり,友達の考えを認めたり,場や用具の安全に留意したりし,最後まで努力して運動をする態度を養う。
低学年の「意欲的に運動をする」から、中学年では「最後まで努力して運動をする」に発展する。諦めずに取り組む態度が求められる。
7つの領域——1年の地図
3年体育は、運動領域6つと保健領域1つ、計7領域で構成されている。
| # | 領域名 | 内容 | 低学年からの変化 |
|---|---|---|---|
| A | 体つくり運動 | 体ほぐし+多様な動き(+組み合わせ) | 「運動遊び」→「運動」、動きの組み合わせが追加 |
| B | 器械運動 | マット・鉄棒・跳び箱 | 「運動遊び」→正式な技の名称と系統 |
| C | 走・跳の運動 | かけっこ・リレー、小型ハードル走、幅跳び、高跳び | 「運動遊び」→競技性のある運動 |
| D | 水泳運動 | 浮いて進む・もぐる浮く | 「水遊び」→け伸び・初歩的な泳ぎ |
| E | ゲーム | ゴール型・ネット型・ベースボール型 | 3つの型に分化、作戦を選ぶ |
| F | 表現運動 | 表現+リズムダンス | 「リズム遊び」→ひと流れの動きで踊る |
| G | 保健 | 健康な生活、体の発育・発達 | 中学年から新設 |
低学年から中学年への主な変化
1. 「遊び」から「運動」へ
低学年は成功体験を得やすいように課題やルールが緩和された「運動遊び」だった。中学年は、運動の特性に応じた楽しさや喜びに触れる「運動」になる。
2. 「課題を見付ける」が加わる
低学年の思考力は「行い方を工夫する」が中心だった。中学年では「自己の課題を見付ける」ことが加わる。自分の動きを振り返り、「ここがうまくいかない」「もっとこうしたい」と課題を自覚する力を育てる。
3. 保健領域の登場
低学年にはなかった保健領域が、中学年から登場する。「健康な生活」(3年)と「体の発育・発達」(4年)の2単元。運動領域と保健領域の両方を学ぶようになる。
4. 技能の系統化
器械運動では、技が「回転系」「巧技系」「支持系」「切り返し系」などの系統で整理される。低学年では「いろいろな動きで遊ぶ」だったものが、技の名前と分類を持つようになる。
5. ゲームの3型化
低学年の「ボールゲーム」「鬼遊び」から、中学年では「ゴール型」「ネット型」「ベースボール型」の3つに分化する。それぞれの型に応じた簡単な作戦を選ぶことが加わる。
年間の見通し
教科書や学校の事情によって異なるが、概ねこのような流れになる。
4月 : A 体つくり運動(体ほぐし)
5月 : C 走・跳の運動(かけっこ・リレー、小型ハードル走)
6月 : D 水泳運動(浮いて進む・もぐる浮く)
7月 : D 水泳運動(継続)/ G 保健(健康な生活)
9月 : B 器械運動(マット運動)
10月 : E ゲーム(ゴール型ゲーム)
11月 : C 走・跳の運動(幅跳び・高跳び)
12月 : F 表現運動
1月 : B 器械運動(跳び箱運動)
2月 : E ゲーム(ネット型・ベースボール型)
3月 : A 体つくり運動(多様な動きをつくる運動)
通年 : B 器械運動(鉄棒運動)は短時間で通年扱いも可能
注意点は3つ。
- 水泳運動は季節限定——プール使用期間に集中して指導する
- 体つくり運動は年間を通して——他の領域の準備運動に位置づけることも可能
- 保健は年間4時間程度——運動領域の授業と別に設定する
他教科・他領域との連動
- 理科:体の仕組みや健康に関する基礎的な理解との連携
- 算数:距離・時間の測定、記録の整理
- 道徳科:「友情・信頼」「公正・公平」——ゲームでの勝敗の受け入れ、きまりの遵守
- 学級活動(2)ウ:「心身ともに健康で安全な生活態度の形成」との直接的連動
- 特別活動:運動会・体育的行事との連携
教師として残しておきたいこと
農業は体を使う仕事だった。作物の収穫、重い物の運搬、長時間の屋外作業。体力がなければ続かない。しかし、農業で本当に大切だったのは「自分の体の状態を知ること」だった。疲れているのに無理をすれば怪我をする。体調を自覚し、ペースを調整する。
Web開発に転身してからは、逆に体を動かさないことの弊害を痛感した。デスクワークが続くと心身のバランスが崩れる。意識的に体を動かす習慣を持つことが、仕事のパフォーマンスを支えた。
3年生の体育は、「運動との出会い直し」だと思う。低学年の遊びから、中学年の運動へ。ここで「運動が楽しい」「もっとできるようになりたい」と感じられれば、生涯にわたるスポーツライフの土台が築かれる。逆に、ここで「体育は嫌い」と思ってしまうと、取り戻すのが難しい。
だからこそ、中学年の体育は「全ての児童が楽しさや喜びに触れられる」ように設計することが、何より大切だ。
指導のポイント
- 低学年の「遊び」から中学年の「運動」への移行を丁寧に——急に難しくしない
- 思考力の重点は「自己の課題を見付ける」——自分の動きを振り返る場面をつくる
- 7領域をバランスよく年間に配置する
- 保健領域が新設される——運動領域と関連付けて指導する
- 「最後まで努力する」態度を育てる——達成感・成就感を味わわせる
- 運動が苦手な児童への配慮を具体的に準備する
- 「楽しさや喜び」を全員が感じられる場と課題の工夫が最優先
まとめ——「楽しさ」に「喜び」が加わるとき
3年体育の全体像は、こう整理できる。
- 低学年の「遊び」から中学年の「運動」へ——名前と中身が変わる
- 思考力の核心は「自己の課題を見付ける」
- 運動領域6つ+保健領域1つの7領域構成
- 器械運動は技の系統、ゲームは3つの型に分化
- 「最後まで努力する」態度を新たに求める
「楽しかった」だけでなく「できるようになった嬉しさ」を知ること。それが中学年の体育で子どもに届けたい経験だ。
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この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編(文部科学省, 2017)の第2章を基に執筆しています。

