リコーダーと出会い、音を合わせる——器楽

リコーダーを吹く児童、鍵盤ハーモニカを弾く児童、木琴を叩く児童が合奏している様子のアニメ風イラスト。「リコーダーと出会い、音を合わせる」のテキスト入り
目次

新しい楽器との出会い

中学年の器楽活動で、最も大きな変化がある。リコーダーとの出会いだ。

低学年で感じ取った器楽表現の楽しさを基盤にしながら,既習の楽器を含めてリコーダーや鍵盤楽器,和楽器などの演奏に取り組み,曲の特徴を捉えた表現を工夫したり,思いや意図に合った表現で演奏したりする楽しさを味わうことができるように指導することが大切である。

リコーダーは、小学校3年生から6年生まで、そして中学校でも使い続ける楽器だ。この出会いが、その後の器楽活動の土台をつくる。


3つのねらい

器楽活動でも、歌唱と同じく3つの資質・能力を育てる。

ア 思考力——曲の特徴を捉えた表現の工夫

器楽表現についての知識や技能を得たり生かしたりしながら,曲の特徴を捉えた表現を工夫し,どのように演奏するかについて思いや意図をもつこと。

たとえば、「前半の弾んだ感じと後半のゆったりした感じの違いを表したいから、前半はスタッカートで音を弾ませて演奏し、後半は一つ一つの音を滑らかにつなげて演奏しよう」——こうした思いや意図をもつことが目標だ。

スタッカートやスラーなどの表現方法を実際に試しながら、表現を工夫する楽しさを味わう。

イ 知識——2つの気付き

器楽の知識には、2つの軸がある。

(ア) 曲想と音楽の構造との関わり

ゆったりした感じから弾んだ感じに変わったのは、途中からタッカのリズムが多くなったから」——曲の雰囲気の変化を、音楽の構造と結び付けて気付くことだ。

(イ) 楽器の音色や響きと演奏の仕方との関わり

長胴太鼓は、ばちを上げずに軽く打ったときと、ばちを高くはね上げるようにして打ったときとでは、音色や響きが違う」——演奏の仕方を変えると、音色や響きが変わる。この気付きが大切だ。

楽器には固有の音色がある。しかし、演奏の仕方を工夫することで、その音色や響きは変化する。この関わりに、演奏を通して気付いていくことが求められている。


リコーダーとタンギング

リコーダーの指導で特に重要なのが、タンギングだ。

リコーダーの指導では,トゥやティ,ルゥ,トォなど,音の高さなどに応じたタンギングの仕方を身に付けるようにすることが考えられる。

タンギング特徴
トゥ基本のタンギング。はっきりした音の出だし
ティ高い音に適した、軽いタンギング
ルゥ柔らかい音の出だし
トォ深みのある音の出だし

音の高さや曲の表現に応じて、タンギングを使い分ける。これは単なる「吹き方の技術」ではない。思いや意図に合った表現をするための技能だ。「この部分は柔らかく表現したいから、ルゥのタンギングで吹こう」——技能と思いや意図が結び付くことで、表現が豊かになる。


取り上げる楽器

中学年で扱う楽器は、リコーダーだけではない。

第3学年及び第4学年で取り上げる旋律楽器は,既習の楽器を含めて,リコーダーや鍵盤楽器,和楽器などの中から児童や学校の実態を考慮して選択すること。

旋律楽器

  • リコーダー(新登場)
  • 鍵盤楽器(鍵盤ハーモニカやキーボードなど、低学年から継続)
  • 和楽器

打楽器

  • 木琴、鉄琴
  • 和楽器
  • 諸外国に伝わる様々な楽器

和楽器が旋律楽器にも打楽器にも含まれていることに注目したい。我が国の音楽や郷土の音楽に対する関心を高めることが求められている。

低学年で慣れ親しんできた楽器は、中学年でも継続的に取り扱う。歌唱教材の主旋律や副次的な旋律をこれらの楽器で演奏するなど、歌唱と器楽の連動が大切だ。


音を合わせる——合奏の喜び

互いの楽器の音や副次的な旋律,伴奏を聴いて,音を合わせて演奏する技能

歌唱と同じく、器楽でも副次的な旋律が登場する。

自分の音だけでなく、友達の音や伴奏を聴きながら演奏する。重奏や合奏では、自分が担当している声部の役割を意識し、音を合わせる喜びを味わう。

合奏の指導で効果的な手立てがいくつか示されている。

  • 他の声部の演奏を聴きながら自分の声部を口ずさむ
  • 曲全体を繰り返すだけでなく、一部分を取り上げて速度を落として演奏する
  • リズムや主旋律、副次的な旋律などを取り上げて声部ごとに演奏する
  • それらを組み合わせて演奏する

特に「一部分を取り上げて速度を落とす」という手立ては実践的だ。全体を通して弾けないところがあると、つまずきが蓄積する。難しい部分をゆっくり練習して確実にしてから、全体に戻る。


ハ長調の楽譜と視奏

ハ長調の楽譜の視奏においては,楽譜と音との関連を意識した指導を展開し,音楽を形づくっている要素及び音符,休符,記号や用語の指導も併せて行い,音楽の流れを感じながら読譜できるようにすることが求められる。

歌唱と同じく、器楽でもハ長調の楽譜を見て演奏する技能を育てる。

低学年でのリズム譜の視奏から、中学年ではハ長調の楽譜の視奏へ。楽譜と音の関連を意識しながら、音楽の流れを感じながら読譜する力を育てていく。


教師の役割——音色の変容を価値付ける

児童の表現の変容を捉えて,例えば,スタッカートを意識して演奏することで,軽やかな感じになったことを教師が具体的に伝えるなど,児童が思いや意図をもって器楽の活動に取り組むことによって,器楽表現が高まったことを教師が価値付け,全体で共有していくこと

歌唱と同じ構造だ。児童の表現が変わった瞬間を捉え、具体的に言語化する。「スタッカートを意識したから、軽やかな感じになったね」——この一言が、表現と技能を結び付ける。


他教科・他領域との連動

  • 音楽(歌唱):歌唱教材の旋律を楽器で演奏する
  • 理科:音の性質(振動、高さ、大きさ)との関連
  • 図画工作:イメージの表現——音で表すか、形で表すか
  • 道徳科:「伝統と文化の尊重」——和楽器を通じて日本の音楽文化に触れる
  • 総合的な学習の時間:地域の伝統芸能で使われる楽器との出会い

教師として残しておきたいこと

農業では、道具の使い方がそのまま仕事の質に直結した。鍬の振り方、鎌の使い方、トラクターの操作。道具との対話がある仕事だった。道具の特性を理解し、場面に応じた使い方を工夫する——器楽活動で子どもが学ぶことは、この構造と同じだ。

Web開発でも、ツールの選び方と使い方が成果を左右した。「何を使うか」だけでなく、「どう使うか」で結果が変わる。リコーダーのタンギング一つで音色が変わるように、プログラミング言語の書き方一つでコードの品質が変わる。

リコーダーは、3年生にとって人生初の本格的な管楽器だ。最初はうまく音が出ない。指が思うように動かない。でも、少しずつ音が出るようになり、旋律が吹けるようになり、友達と合奏ができるようになる。その過程そのものが、学びの喜びだ。

「できなかったことができるようになる」——この最もシンプルで最も強い動機づけを、器楽活動は提供してくれる。


指導のポイント

  1. リコーダーが中学年の器楽の核——最初の出会いを大切にする
  2. タンギング(トゥ・ティ・ルゥ・トォ)は音の高さや表現に応じて使い分ける
  3. 楽器の音色や響きと演奏の仕方との関わりに気付かせる——試す過程が大切
  4. 合奏では自分の声部の役割を意識し、互いの音を聴いて音を合わせる
  5. 難しい部分は速度を落として一部分を取り上げて練習する
  6. 和楽器を含めた多様な楽器に触れさせる
  7. 児童の表現の変容を具体的に価値付け、全体で共有する

まとめ——音が合わさる瞬間

器楽は、曲の特徴を捉えた表現を工夫し、思いや意図をもって演奏する活動だ。

  • リコーダーとの出会いが器楽活動の幅を広げる
  • タンギングの使い分けが表現を豊かにする
  • 楽器の音色や響きは演奏の仕方で変わる——その気付きが知識になる
  • 合奏では互いの音を聴き、声部の役割を意識して音を合わせる
  • ハ長調の楽譜を見て演奏する力を育てる

リコーダーで初めてきれいな音が出たとき。友達と合奏して音がぴたりと合ったとき。その瞬間の嬉しさが、楽器を演奏することの原体験になる。

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音楽づくり——音を選び、つなげ、まとまりをつくる


この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 音楽編(文部科学省, 2017)の第3章第2節を基に執筆しています。

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