言葉には二つの顔がある——3年国語・言葉の特徴や使い方

小学3年生の女の子が口に手を当てて話す姿と、開いたノート・浮かぶひらがなカタカナを描いたアニメ風イラスト。「言葉には二つの顔——話し言葉と書き言葉、3年・言葉の特徴」のテキスト入り
目次

子どもは既に「言葉を使える」

3年生は、もう言葉を流暢に使う。話せるし、書ける。ならば、この単元で何を新しく身につけるのか。

答えは、「使っていた言葉を、対象として見つめ直す」ことだ。水の中に住む魚が、水の存在に気付くように。これまで無意識に使ってきた言葉を、構造と性質を持つ一つの「対象物」として意識するところから、言葉の学習は深くなる。


学習指導要領のねらい

3・4年「言葉の特徴や使い方」((1)ア〜ク)の核心を抜粋する。

ア 言葉には、考えたことや思ったことを表す働きがあることに気付くこと。
イ 相手を見て話したり聞いたりするとともに、言葉の抑揚や強弱、間の取り方などに注意して話すこと。
ウ 漢字と仮名を用いた表記、送り仮名の付け方、改行の仕方を理解して文や文章の中で使うとともに、句読点を適切に打つこと。また、第3学年においては、日常使われている簡単な単語について、ローマ字で表記されたものを読み、ローマ字で書くこと。
キ 丁寧な言葉を使うとともに、敬体と常体との違いに注意しながら書くこと。

——この中から、言葉の働き/話し言葉/書き言葉/言葉遣いを扱う。


言葉には「考えを表す働き」がある

1・2年では「言葉は事物の内容を表す・経験を伝える」という働きに気付く。3・4年では一段進んで、「考えたことや思ったことを表す」働きに気付く。

思考や感情を言葉に表す働きによって、一層明確に筋道を立てて物事を考えたり、思いを意識化したりすることができる。

これは思考が言葉で形を持つという深い洞察だ。人は言葉を使って考える。だから言葉の精度が、思考の精度に直結する

「嫌い」と言ってしまうか、「苦手だ」と言うか、「まだ慣れていない」と言うか。どれを選ぶかで、自分の内面の状態も変わる。言葉は思考を映すだけでなく、言葉を変えることで思考も変わる——これを子どもに体感させたい。


話し言葉——抑揚・強弱・間

話すときは、言葉だけが伝わるのではない。声の上げ下げ(抑揚)、強さ(強弱)、止め方(間)が、意味の半分を運んでいる。

学習指導要領は次のように述べる。

間とは、発音・発声のための息継ぎであると同時に、自らが伝えたい内容を聞き手に理解してもらうために意図的に取る、構文や語句の上での間でもある。

間は単なる沈黙ではない。聞き手に考える時間を与え、重要な語句を際立たせる積極的な表現手段だ。

プレゼンやスピーチを見ればわかる。上手な人ほど、黙る時間を持っている。早口で一気にまくし立てる人の話は、内容が頭に残らない。3年生で「間を取る」ことを意識させるのは、大人になって人前で話すための基礎練習だ。


相手を見て話す・聞く

「相手を見て話す/聞く」——当たり前に思えるが、意外と難しい。

  • 話し手は、相手を見ることで、伝わっているかを判断できる
  • 聞き手は、話し手を見ることで、聞く意思を示し、反応を返すことができる

オンライン会議が広まった今、視線によるコミュニケーションの重要性が逆に浮き彫りになっている。画面越しでは視線が合いにくく、話し手は手応えをつかめない。リアルな教室で「相手を見て話す」経験を積むことは、デジタル時代にかえって重要な力だ。


書き言葉——漢字と仮名のハイブリッド

日本語の書き言葉は、世界でも特殊だ。漢字・平仮名・片仮名・ローマ字の4種類の文字を混ぜて使う。

  • 漢字:主に意味を担う(名詞・動詞・形容詞の語幹など)
  • 平仮名:文法的な要素を担う(助詞・送り仮名・動詞の活用語尾)
  • 片仮名:外来語・擬音語・強調
  • ローマ字:固有名詞・外国語・専門用語

このハイブリッドは、視覚的に意味の切れ目を示すという利点がある。ひらがなだけで書くと読みにくい文章も、漢字が入ると一瞬で構造が見える

漢字の表意性を踏まえた上で,漢字と仮名とを適切に使い分けることが重要である。

3年生は、この「使い分け」を意識的に学ぶ段階に入る。


ローマ字——日本語の音の仕組みに気付く

3年生で新しく登場するのがローマ字だ。

ローマ字の表記の指導において、例えば、パスポートに記載される氏名の表記など、外国の人たちとコミュニケーションをとる際に用いられることが多い表記の仕方を理解することが重要である。また、日本語の音が子音と母音の組み合わせで成り立っていることを理解することも重要である。

ローマ字は単なる「英語っぽい日本語」ではない。日本語の音が 「k+a=か」「s+a=さ」 という子音と母音の組み合わせでできているという、音韻構造への気付きを促す教材だ。

IT的に言えば、エンコーディングの話に近い。ひらがな(1文字で1モーラ)とローマ字(2〜3文字で1モーラ)では表記のルールが違うが、同じ「音」という実体を異なる記号体系で表している

ローマ字を学ぶことで、子どもはキーボード入力もできるようになる。デジタル時代の読み書きの基礎スキルとしても、ローマ字の価値は高い。


敬体と常体

3年生で意識的に学ぶのが、敬体(です・ます体)と常体(だ・である体)の違いだ。

文体文末使う場面
敬体〜です/〜ます手紙、報告、話す相手が目上
常体〜だ/〜である物語、随筆、論説、日記

文章を記述する際には、相手や目的に応じて敬体と常体のいずれかを使用して書くことが多い。それを意識的に使い分けること……

文体は相手と目的で選ぶ——これは大人のビジネスメール、プレゼン、論文、SNSでも全く同じルールだ。3年生でその入口に立つ。

私はWeb開発で仕様書・ブログ・メール・技術論文を書き分けてきた。文体をTPOに合わせて切り替える感覚は、30年近く使い続けている。その芽が3年生の国語にあるのは、面白い。


指導のポイント(実習用メモ)

  1. 言葉そのものに目を向けさせる——使ってきた言葉を「対象」として観察
  2. 抑揚・強弱・間を録音して振り返る——ICT活用で効果的
  3. 漢字と仮名の使い分けは実例で——同じ文をひらがなだけ/漢字混じりで比較
  4. ローマ字は「日本語の音の仕組み」への気付きとして扱う
  5. 敬体と常体は同じ内容を2パターンで書き比べさせる

まとめ——言葉には二つの顔がある

言葉には話し言葉と書き言葉という二つの顔があり、それぞれに流儀と技法がある。

  • 話し言葉:抑揚・強弱・間、相手を見ること
  • 書き言葉:漢字と仮名の使い分け、ローマ字、句読点
  • 両方に共通:相手と目的に応じた言葉遣い(敬体と常体)

3年生は、言葉を「使う」段階から「意識的に選ぶ」段階へと移る。この意識化が、生涯の言葉の力を支える土台になる。

実習で話すこと・書くことの授業をするなら、「同じ内容を別の言い方で」という演習を入れたい。「早く起きなさい」「早く起きた方がいいよ」「そろそろ起きる時間かな」——どれも同じ意味だが、響き方が違う。言葉は選べるという発見は、言葉の世界の扉を開く。


この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編(文部科学省, 2018)の第3章第2節1(1)ア〜ウ・キを基に執筆しています。

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