説明文を「つまらない」と感じる子
3年生で、物語は好きだけど説明文は苦手、という子がいる。「説明文ってなんか面白くない」と。
それは、説明文の読み方を知らないから、だと思う。説明文は情報の塊だが、構造を持つ建築物として読むと、「今どの階にいるか」「隣の部屋とどう繋がっているか」が見える。構造が見えると、説明文は知的な探検になる。
3年生のC 読むこと(説明的な文章)は、説明文を論理の建築物として読む力を育てる時間だ。
学習指導要領のねらい
3・4年のC 読むこと(説明的な文章に関わる部分):
ア 段落相互の関係に着目しながら、考えとそれを支える理由や事例との関係などについて、叙述を基に捉えること。
ウ 目的を意識して、中心となる語や文を見付けて要約すること。
オ 文章を読んで理解したことに基づいて、感想や考えをもつこと。
カ 文章を読んで感じたことや考えたことを共有し、一人一人の感じ方などに違いがあることに気付くこと。
構造の把握 → 精査・解釈(要約)→ 考えの形成 → 共有という流れ。
ア 構造と内容の把握——段落相互の関係
3・4年の核心は、「段落相互の関係」に着目して読むこと。
段落相互の関係とは、考えとその事例、結論とその理由といった関係などのことである。これらの関係に着目しながら、書き手の考えがどのような理由によって説明されているのか、どのような事例によって具体化されているのかなどを、叙述を基に正確に捉えていくことが求められる。
段落はただ並んでいるのではない。一つ一つに役割があり、互いに関係している。
段落の役割の例
- 問題提示の段落:この文章は何を論じるか
- 具体例の段落:抽象的な主張を具体化する
- 理由の段落:なぜそう言えるかを説明する
- 結論の段落:筆者の最終的な主張
段落相互の関係の例
- 問題提示 → 具体例 → 結論
- 主張 → 理由1 → 理由2 → 理由3 → まとめ
- 事例A → 事例B → 事例C → 共通項
段落の役割と相互関係を意識して読むと、文章の骨格が見えてくる。
考えと理由・事例の関係
3・4年は、文章の中の「考え」と「理由・事例」の関係を読み取る。
- 考え:筆者が伝えたい主張
- 理由:なぜその主張が成り立つのか
- 事例:具体的にどんな場面で言えるのか
これは知識及び技能(2)アの「考えとそれを支える理由や事例の関係」との連動だ。書き手が使っている構造を、読み手として読み解く。
読み取りの観点
- どの段落が「考え」を述べているか
- どの段落が「理由」を述べているか
- どの段落が「事例」を挙げているか
- それらはどう繋がっているか
地図のように文章を俯瞰する読み方。これは高学年の要旨把握、中学の論説文読解へと直結する。
ウ 精査・解釈——要約
3・4年の新しい技能が要約だ。
要約するとは、文章全体の内容を正確に把握した上で、元の文章の構成や表現をそのまま生かしたり自分の言葉を用いたりして、文章の内容を短くまとめることである。
要約 = 中心となる語や文を見つけて、短くまとめる。
要約の手順
- 目的を意識——何のために要約するか
- 全体の構造を把握——段落相互の関係を掴む
- 中心となる語や文を見つける——各段落の主張
- 自分の言葉でまとめる——適切な分量で
学習指導要領は明記する。
文章の内容を端的に説明するといった要約する目的を意識して、内容の中心となる語や文を選んで、要約の分量などを考えて要約することが重要である。
目的と分量——この2つを決めないと、要約はできない。「元の文章を半分に」なのか、「3行でまとめる」なのか、「キーワード3つで」なのか。目的が変われば、要約も変わる。
要約は、大人でも使う技能
要約は子どもの学習技能ではない。大人の職業人の中核技能だ。
- ビジネス:長い会議の議事録を要約
- 研究:論文の要旨を書く
- 報道:ニュース記事で重要な情報を凝縮
- プレゼン:伝えたいことを時間内に収める
要約できる人は、理解している人。要約できない人は、情報に溺れている人。3年生で要約の基礎を学ぶことは、一生の武器を手にすることだ。
IT的に言えば、要約はデータ圧縮に似ている。情報量を減らしながら、本質は保持する——可逆圧縮の発想。この感覚を3年生から育てる。
オ 考えの形成——理解に基づいた感想
3・4年では、理解したことに基づいて感想や考えを持つことが求められる。
第3学年及び第4学年においては、文章の内容だけではなく理解したことに基づいて、感想や考えをもつことに重点を置いている。
低学年の「感想」は、文章を読んで感じたことが中心。中学年の「感想・考え」は、理解したこと(構造・内容の把握)を踏まえて生まれるもの。
違いの例
- 低学年:「この話、楽しかったです」
- 中学年:「筆者は〜と主張していて、その理由は〜でした。私は〜の点に納得しました」
理解の上に感想が乗る——これが中学年のC 読むことの質的転換だ。
カ 共有——一人一人の違いに気付く
3・4年で新しく加わるのが、「一人一人の感じ方などに違いがあることに気付く」こと。
同じ文章を読んでも、一人一人の感じ方などに違いがあることに気付くとともに、互いの感じたことや考えたことを理解し、他者の感じ方などのよさに気付くことが大切である。
同じ文章を読んでも、読み方は違う——これは多様性の尊重の基礎だ。
なぜ違うのか。
- どの部分に着目するかが違う
- どんな思考や感情を結びつけるかが違う
- どんな経験があるかが違う
読み方の違いを否定しない。でも自分の読み方を大切にする——この両立ができる子は、大人になって健全な議論ができる人に育つ。
言語活動例——説明文を使う
3・4年のC読むことの言語活動例の一つ:
ア 記録や報告などの文章を読み、文章の一部を引用して、分かったことや考えたことを説明したり、意見を述べたりする活動。
読んで、引用して、説明・意見する。これは情報を使いこなす活動だ。
学習指導要領は、他教科との連動も示している。
取り上げる文章としては、記録や報告の文章のほか、対象について観察したことや調べたことを説明した文章、事物を解説した文章などが考えられる。
社会の地域紹介の文章、理科の観察記録の文章——これらを読んで理解する技能は、他教科の学習の基盤になる。
説明文の教材選び
3年生の説明文教材は、子どもの興味と論理の明快さのバランスで選ぶ。
- 身近な生き物・自然の説明文
- 身近な道具・仕組みの説明文
- 伝統文化の説明文
- 社会の仕組みの説明文
筆者の主張が明確で、理由・事例が分かりやすく配置されている教材が、3年生には適している。あまりに抽象的な論説は4年以降に譲る。
Webエンジニア的な読み方
説明文を読むとき、私は頭の中で目次を作る癖がある。
- この段落の主張は何か?
- 次の段落とどう繋がっているか?
- 全体として何を言おうとしているか?
これはリファクタリングの発想に近い。ぐちゃぐちゃに見えるコードを、意味の塊に分割して再構成する。説明文も、段落という塊を関係で整理すれば、構造が見える。
3年生にこの「段落同士の関係を考える」習慣を育てると、情報化社会で溺れない読み手になる。
農業の説明文——観察と記述の連動
農業の本を読んでいた時、観察と文章の記述が連動していることに気付いた。
- 書き手は、作物を観察している
- 観察したことを段落ごとに整理している
- 原因と結果、条件と結果の関係を明確にしている
観察する目と書く目と読む目は、同じ根っこを持っている。3年生のC 読むこと(説明文)は、理科の観察記録や社会の調べ学習のまとめと根本でつながっている。
指導のポイント(実習用メモ)
- 段落ごとに役割を書き込ませる——問題提示・具体例・理由・結論
- 段落相互の関係を矢印で可視化
- 考え・理由・事例を色分けで区別
- 要約の目的と分量を毎回明示
- 理解に基づいた感想——何を理解したかを先に書かせる
- 読み方の違いを楽しむ共有の場
- 他教科の文章も教材として活用


まとめ——説明文は、論理の建築物
3年生のC 読むこと(説明文)は、説明文を論理の建築物として読む力を育てる時間だ。
- 段落相互の関係に着目する
- 考え・理由・事例の構造を捉える
- 目的に応じて中心を見つけて要約する
- 理解したことに基づいて感想を持つ
- 一人一人の読み方の違いに気付く
説明文が読める = 情報社会を生き抜ける。文章を構造で捉え、中心を掴み、要約する力は、学校の試験や日常の読書を超えて、職業人としての力にまで繋がる。
実習で説明文の授業をするなら、「この段落の役割は?」「この段落と次の段落はどう繋がる?」という問いかけを繰り返したい。子どもが文章の地図を描けるようになる——そこが、説明文の読み方が変わる瞬間だ。
この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編(文部科学省, 2018)の第3章第2節2Cのうち説明的な文章に関わる部分を基に執筆しています。

