心と体をほぐし、動きの幅を広げる——体つくり運動

体育館でペアストレッチする児童、転がるフープをくぐる女子、長なわを跳ぶ3人を3パネルで描いたアニメ風イラスト。「体を動かすと気持ちがいい、心と体をほぐし動きの幅を広げる」のテキスト入り
目次

「体を動かすと気持ちがいい」から始まる

朝の体育、体ほぐしの運動から始める。音楽に合わせてストレッチ。友達とペアで手をつなぎ、引っ張り合う。汗をかく。息が弾む。「体を動かすと気持ちがいい」——この実感が、体つくり運動の出発点だ。


2つの柱

中学年の体つくり運動は、「体ほぐしの運動」と「多様な動きをつくる運動」で構成される。

体ほぐしの運動

手軽な運動を行い,体を動かす楽しさや心地よさを味わうことを通して,自己や友達の心と体の状態に気付いたり,みんなで豊かに関わり合ったりすること。

ねらいは2つ。心と体の変化に気付くことと、みんなで関わり合うこと。

体を動かすと心も弾む。力を抜くと気持ちがよい。汗をかいた後は気分がすっきりする——こうした心と体のつながりを実感する。

また、誰とでも仲よく協力して運動する中で、友達と一緒に動く楽しさや心のつながりを体験する。

行い方の例として、解説は次のような活動を挙げている。

  • ボール・なわ・フープなどの用具を使った運動
  • リズムに乗って心が弾む動作での運動
  • 動作や人数を変えて歩いたり走ったりする運動
  • 伝承遊びや集団による運動

多様な動きをつくる運動

体のバランスをとったり,移動をしたり,用具を操作したり,力試しをしたりするとともに,それらを組み合わせる運動をすること。

低学年との最大の違いは、動きを組み合わせることが加わったこと。5つの運動で構成される。

  1. 体のバランスをとる運動——回る、座る、立つ、渡る、バランスを保つ
  2. 体を移動する運動——這う、歩く、走る、跳ぶ、はねる、登る、下りる
  3. 用具を操作する運動——つかむ、投げる、捕る、回す、跳ぶ(なわ)
  4. 力試しの運動——押す、引く、運ぶ、支える、力比べ
  5. 基本的な動きを組み合わせる運動——上の4つを組み合わせる

「組み合わせ」が中学年の新しい学び

低学年では、バランス・移動・用具操作・力試しの4つをそれぞれ別々に行っていた。中学年では、これらを組み合わせる

例えば:

  • バランスをとりながらボールを投げる(バランス+用具操作)
  • なわを跳びながら移動する(用具操作+移動)
  • 友達を押しながらバランスを保つ(力試し+バランス)

単一の動きから複合的な動きへ。この「組み合わせ」が、動きの質を高め、高学年の体つくり運動につながる。


具体的な動きの例

バランスをとる運動

  • 片足を軸にして回りながら移動する
  • ジャンプして1/2回転、3/4回転、1回転
  • 平均台を動物歩きや横歩きで渡る
  • ケンケンしながら相手のバランスを崩し合う

体を移動する運動

  • 物や用具の間を速さ・方向を変えて這う、歩く、走る
  • 速さやリズムを変えたスキップやギャロップ
  • ジャングルジムや肋木に登る、下りる
  • 無理のない速さでかけ足を3~4分程度続ける

用具を操作する運動

  • ボールをねらったところに転がす
  • フープを安定して転がし、くぐり抜ける
  • 短なわで前・後ろの連続片足跳びや交差跳び
  • 長なわでの連続回旋跳び
  • 竹馬や一輪車に補助を受けながら乗る

力試しの運動

  • 押し合いずもうで重心を低くして押す
  • 引き合いで両手や背中合わせで引く
  • 友達と一緒にタイヤや物を運ぶ

運動が苦手な児童への配慮

解説は、各動きについて具体的な配慮例を示している。

  • バランスが苦手→平面に描いた通路や段ボールで高さを易しくした場をつくる
  • 移動が苦手→友達の後について行く、できる動きを繰り返して徐々に増やす
  • 用具操作が苦手→用具の大きさ・重さ・柔らかさを変える
  • 力試しが苦手→同じくらいの体格の友達と組む、易しい条件で行う
  • 関わり合いが苦手→ペアやグループの組み方を考慮し、安心できる場をつくる

体つくり運動は記録や勝敗がない分、全ての児童が参加しやすい領域だ。苦手な子も、場や条件の工夫で「できた」を実感できる。


他教科・他領域との連動

  • 音楽:リズムに合わせた運動。体ほぐしの運動で音楽を活用する
  • 理科:体の仕組みへの関心(中学年から保健領域と連動)
  • 学級活動(2)ウ:心身ともに健康で安全な生活態度の形成と直結
  • 道徳科:「友情・信頼」——友達と協力して運動する体験

教師として残しておきたいこと

農業では、毎朝のストレッチが欠かせなかった。硬い体で農作業を始めると怪我をする。体をほぐしてから仕事に入る。「今日は腰が重いな」「肩が張っているな」——体の状態に気付くことが、1日の作業の質を左右した。

体ほぐしの運動が育てているのは、まさにこの自己の体への気付きだ。「体を動かすと気持ちがいい」「友達と一緒だと楽しい」——こうした原体験が、生涯にわたって体を動かす習慣の土台になる。

多様な動きをつくる運動は、体の引き出しを増やす活動だ。バランス、移動、用具操作、力試し——あらゆる動きの基礎を幅広く身に付けておくことで、高学年以降のスポーツ種目に対応する体ができる。


指導のポイント

  1. 体ほぐしは「心と体の変化に気付く」「みんなで関わり合う」の2つのねらいを明確に
  2. 多様な動きは5つの運動(バランス・移動・用具操作・力試し・組み合わせ)で構成
  3. 中学年の新しい学びは「動きの組み合わせ」——単一の動きから複合の動きへ
  4. 他の領域の準備運動として体つくり運動を位置づけることも有効
  5. 記録や勝敗がないため、全員が参加しやすい——場や条件の工夫で苦手な子も参加
  6. 低学年で学んだ動きを繰り返しながら、動きの質を高める

まとめ——全ての運動の土台をつくる

体つくり運動は、全ての運動領域の基盤となる領域だ。

  • 体ほぐしの運動で心と体のつながりに気付き、仲間と関わる
  • 多様な動きで体の引き出しを広げ、動きの質を高める
  • 低学年の「遊び」から中学年の「運動」へ、動きの組み合わせが加わる
  • 全ての児童が「体を動かすって気持ちいい」と感じられる場をつくる

体つくり運動は、派手な技や記録はない。しかし、ここで育った「体を動かす心地よさ」と「多様な動きの引き出し」が、全ての運動を支える土台になる。

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この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編(文部科学省, 2017)の第2章第2節を基に執筆しています。

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