目で比べられない量
1年生から3年生まで、子どもたちは「量」を学び続けてきた。
- 1年生:長さ、広さ、かさ(比較)
- 2年生:長さ(cm、m)、かさ(L、dL、mL)
- 3年生:長さ(km)、重さ(g、kg、t)、時間(秒)
3年生で初めて登場するのが重さだ。そして重さは、それまでの量と決定的に違う特徴を持っている——目で見て直接比べられない。
学習指導要領のねらい
学習指導要領(C(1)長さ、重さの単位と測定):
知識及び技能
- ア 長さの単位(キロメートル(km))及び重さの単位(グラム(g)、キログラム(kg))について知り、測定の意味を理解すること
- イ 長さや重さについて、適切な単位で表したり、およその見当を付け計器を適切に選んで測定したりすること
思考力、判断力、表現力等
- ア 身の回りのものの特徴に着目し、単位の関係を統合的に考察すること
内容の取扱い:重さの単位トン(t)について触れる
「見えない量」という壁
長さは目盛りで測ることができる。ものさしを当てれば、誰が測っても同じ結果が出る。
かさも容器の目盛りで見える。1Lますに水を入れれば、1Lがそこに「ある」。
しかし重さは、目で見ただけでは分からない。
- 大きい = 重い、とは限らない(風船 vs ビー玉)
- 同じ大きさ = 同じ重さ、とも限らない(木のブロック vs 鉄のブロック)
重さは、対象を手に取ったり、はかりに乗せたりして初めてわかる量だ。
これは子どもにとって、抽象的な量への大きな一歩になる。視覚ではなく、身体感覚と道具(はかり)を介して捉える量。重さの学習は、「測る」という行為の意味を深く問い直す機会になる。
グラムとキログラム
学習指導要領の記述:
重さについては、これまでの量の場合と同じように考え、単位となる重さの幾つ分かで測定できることを理解できるようにする。また、1gや1kgの単位の意味について理解できるようにする。
1g と 1kg は、実際に手に持って体感することが重要だ。
| 量 | 身の回りの例 |
|---|---|
| 1g | 1円玉、ゼムクリップ |
| 100g | バナナ1本、卵2個弱 |
| 1kg | 500mLペットボトル2本、1Lの牛乳パック |
| 1t | 軽自動車1台 |
1g = 1円玉1枚。これは学校でよく使われる体感の基準だ。1円玉を実際に持たせると、「重さ」という抽象が一気に具体化する。
学習指導要領はこう書いている。
1kgの重さの具体物を手で持ち上げるなどの体験を通して、基本的な量の大きさについての感覚を豊かにする。
身体で覚える量感覚——これが重さ指導の核心。
はかりの使い方
重さを測るにははかりが必要。学習指導要領は、計器の扱いについても触れている。
はかりの取り扱いに関しては、どれだけの重さのものまで量れるかという秤量や、どのくらいまでの詳しさで量れるかという感量に気をつけることなど、使用上注意すべきことがある。
- 秤量(ひょうりょう):はかりで量れる最大の重さ
- 感量(かんりょう):はかりの最小目盛り(どこまで細かく量れるか)
これは、測定道具には限界があることを学ぶ大切な経験だ。
例えば:
- キッチンスケール:秤量 2kg、感量 1g
- 体重計:秤量 150kg、感量 100g
重いものをキッチンスケールに乗せれば、はかりが壊れる。軽いものを体重計に乗せても、100g単位でしか量れない。
道具には適材適所がある——これは算数の学びを超えて、科学的な思考の土台になる。
容器に入れて量る——正味の重さ
学習指導要領のこの記述は実践的で面白い。
ものの重さを量る場合には、そのものを直接量ることができないので容器などに入れて量る場合がある。この場合には、「(正味の重さ)=(全体の重さ)−(容器の重さ)」という関係が用いられることも理解できるようにする。
正味の重さ = 全体の重さ − 容器の重さ
粉や液体は、容器なしでは量れない。だから先に容器だけを量り、後から差し引く。これは日常的な計量の工夫だ。
農業で米を出荷するとき、米袋(容器)の重さを引いて「正味○kg」と表示する。料理で小麦粉を量るとき、ボウルの重さを引くか、風袋引き(ふうたいびき)ボタンを押す。
この計算は、実はたし算・ひき算の筆算の応用でもある。算数の単元が日常の知恵とつながる瞬間だ。
トンという大きな単位
学習指導要領は、トン(t)にも触れるよう明記している。
日常でよく用いられている「トン(t)」も大きい重さを表す重さの単位であることや、1tは1000kgであることを指導する。
1t = 1000kg
これまた1000倍の接頭語の登場だ。「キロ(k)」は長さでも重さでも共通する接頭語で、常に1000倍を意味する。つまり:
- 1t = 1000kg
- 1kg = 1000g
- → 1t = 1000000g(100万g)
大きな重さの世界が、1000倍の階段で整理される。
身の回りのトン:
- 軽自動車 約1t
- 像(アジア象)約3〜5t
- トラック 2〜10t
「大きい数」の単元と同じく、相対的な大きさで捉えることが重要。象1頭 ≒ 3t、10頭 = 30t——こうした対応が数感覚を作る。
接頭語の共通性
長さの記事でも触れたが、学習指導要領は接頭語の共通性を繰り返し強調している。
長さと重さの単位には、どちらもk(キロ)の付いた単位があること
1kmは1000mであり、1mの1000倍になっていること
1kgは1000gであり、1gの1000倍になっていること
キロ(k)= 1000倍というルールが、長さでも重さでも同じように効いている。
これをマスターすれば、mg(ミリグラム)という単位にも類推できる。
- m(ミリ)= 1/1000
- → 1mg = 1/1000 g = 0.001g
- → 1000mg = 1g
薬の成分表に「100mg」と書かれていたら、「1gの10分の1だ」と換算できる。これは生きた算数の使い方だ。
重さの加減——同じ単位同士
重さの計算は、同じ単位同士で行うのが原則だ。
2kg + 500g は、そのままでは計算できない。
→ どちらかに統一する必要がある。
- 2000g + 500g = 2500g
- または 2kg + 0.5kg = 2.5kg
これは小数や分数の「単位を揃える」発想と同じ。後の分数の通分(4年生以降)にもつながる。
指導のポイント(実習用メモ)
- 「見えない量」であることを意識させる
- 1g(1円玉)・1kg(ペットボトル2本)の体感を持たせる
- はかりの使い方(秤量・感量)を丁寧に扱う
- 正味の重さ(全体−容器)の計算を日常場面で
- トン(t)という大きな単位の実感
- キロ・ミリの接頭語の共通性を強調
- 単位の換算は原理から理解させる
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まとめ——重さが拓く抽象的な量の世界
3年生の「重さ」単元は、子どもの量観に新しい次元を加える。
- 目に見えない量を道具で測る経験
- g・kg・tという体系的な単位系
- はかりという測定道具との出会い
- 正味の重さという日常的な計量の知恵
- メートル法の接頭語の確認
重さは、身体で感じる量と数値で表す量の両方の側面を持つ。抽象的な数値だけでは捉えきれない、身体化された量感覚が重要だ。
農業をしていたころ、米袋や野菜コンテナの重さを手で覚えていた。「この箱はだいたい10kg」「この袋は20kgちょい」——触って覚える重さは、数値の暗記とは違う確かさがある。
実習で教えるなら、教室の物を次々に量る活動を入れたい。教科書、筆箱、ランドセル、机、椅子——身の回りの重さを調べて比較することで、子どもは重さのスケール感を身体に刻む。抽象と具体の往復こそが、量の学習の核心だ。
この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編(文部科学省, 2018)の第3章第3節「第3学年の目標及び内容 C(1)長さ、重さの単位と測定」を基に執筆しています。


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