三角形を「要素」で分類する
「三角形ってどんな形?」
「3つの辺がある形!」
2年生までの子どもは、三角形を全体のシルエットで認識している。「三つの角がある、とがった形」というイメージだ。
しかし3年生では、この見方が一段進化する。三角形を「辺の長さ」という構成要素で分類するようになる。
二等辺三角形——2つの辺の長さが等しい
正三角形——3つの辺の長さが等しい
これは、図形を「形」から「性質」へ捉え直す転換点だ。
学習指導要領のねらい
学習指導要領(B(1)二等辺三角形、正三角形などの図形):
知識及び技能
- ア 二等辺三角形、正三角形などについて知り、作図などを通してそれらの関係に次第に着目すること
- イ 基本的な図形と関連して角について知ること
- ウ 円について、中心、半径、直径を知る。円に関連して、球についても直径などを知ること
思考力、判断力、表現力等
- ア 図形を構成する要素に着目し、構成の仕方を考えるとともに、図形の性質を見いだし、身の回りのものの形を図形として捉えること
内容の取扱い:定規、コンパスなどを用いて、図形をかいたり確かめたりする活動を重視する
二等辺三角形と正三角形——要素の相等
学習指導要領の定義:
二つの辺の長さが等しい三角形を二等辺三角形といい、三つの辺の長さが等しい三角形を正三角形という。
シンプルだが、重要な定義だ。
| 図形 | 定義 |
|---|---|
| 三角形 | 3本の直線で囲まれた図形(2年生既習) |
| 二等辺三角形 | 3辺のうち2辺が等しい三角形 |
| 正三角形 | 3辺が全て等しい三角形 |
この分類は辺の長さの相等性だけに着目している。色でも、向きでも、大きさでもなく、「長さの等しさ」だけで図形を区別する——これが数学的な見方だ。
面白いのは、正三角形は二等辺三角形でもあるということ。「2辺が等しい」条件を「3辺とも等しい」正三角形も満たしているからだ。ただし3年生ではここまで深入りする必要はなく、5年生以降の「図形の包含関係」の基礎になる。
作図活動——定規とコンパスで構成する
この単元は、手を動かして図形を作る活動が中心だ。学習指導要領の例:
定規とコンパスによる二等辺三角形
- 線分 イウ を引く(底辺)
- 点イを中心にコンパスで弧をかく
- 同じ半径で点ウから弧をかく
- 交わった点アと、イ、ウを結ぶ
→ アイ = アウ の二等辺三角形ができる
円を使う正三角形
- コンパスで円をかく(中心をOとする)
- 円周上の1点Aから、半径と同じ長さでもう1点Bを円周上にとる
- A、B、中心Oを結ぶ
→ OA = OB = AB = 半径 だから正三角形
これらの作図は、「辺の長さが等しい」という性質を、コンパスを使って物理的に保証する活動だ。コンパスは「同じ長さを写し取る道具」として機能する。
「折る」ことで性質を確かめる
作図と並んで重要なのが、紙を折る活動だ。
二等辺三角形では、二つの角の大きさが等しいことや、正三角形では、三つの角の大きさが等しいことについては、二等辺三角形や正三角形を観察したり、実際に紙を切り抜いて作った三角形を折ってみたりするなどの活動を通して、確かめることができる。
切り抜いた二等辺三角形を半分に折ると、2つの角がピッタリ重なる。これが「2つの角が等しい」ことの実感的な証明になる。
これは帰納的な理解だ。論理的証明は中学(数学)の課題。3年生では操作を通して「たしかにそうなっている」と納得することが目標になる。
角とは何か
学習指導要領は、3年生で「角」の概念を導入することを明記している。
第3学年では、一つの頂点から出る2本の辺が作る形を角ということを指導する。
角 = 2本の辺が頂点で作る「開き」
2年生の「直角」は角の一種として既に学んでいるが、3年生では角そのものを図形の構成要素として扱う。
角の大きさを測る(角度の単位、分度器の使い方)は4年生の内容。3年生では、二つの角を重ねて「等しい」か「どちらが大きい」かを比較する程度でよい。
角が辺の長さと並んで図形を特徴づける要素であることを、3年生で初めて意識させる——これが大事だ。
作図の教育的価値
なぜ3年生で作図にこだわるのか。理由はいくつかある。
①手で理解する
「2辺が等しい三角形」と言葉で言うだけでは抽象的。コンパスで実際に作ると、等しい辺を作る身体感覚が得られる。
②性質を使う体験
作図の手順そのものが、「この性質を使えば図形が作れる」という論理的思考の体験になる。これは後の証明問題の土台。
③美しさへの気づき
学習指導要領は、図形の作図活動について「三角形や円などを基にして模様をかくなどの具体的な活動を通して、図形のもつ美しさに関心をもたせる」と明記している。
正三角形を並べてハニカム模様、円を組み合わせて幾何学模様——図形の規則性から生まれる美しさに触れることで、数学的な美意識が育つ。
構成の仕方を考える力
学習指導要領の思考力・判断力・表現力の記述:
構成の仕方を考えるとは、図形の約束に基づいて論理的に構成していこうとすることである。例えば、二辺の長さが等しいことを基に二等辺三角形を作ることがこれに当たる。このとき、二つの角の大きさが等しいという性質にも気付くことができる。
「約束に基づいて論理的に構成する」——これは、プログラミングで言えば仕様に基づいて関数を実装することに近い。
「2辺が等しい」という仕様から出発して、
→ コンパスで同じ半径の弧を使うという実装
→ 実行すると、結果として「2つの角も等しい」という新しい性質が発見される
仕様から構築し、そこから新たな性質を発見する——これが数学的思考の基本サイクルだ。3年生の図形指導は、その最初の体験になる。
指導のポイント(実習用メモ)
- 辺の長さに着目して分類する発想を育てる
- 定規とコンパスを実際に使わせる
- 紙を折る活動で性質を操作的に確かめる
- 角の概念を図形の構成要素として導入する
- 作図の手順と性質のつながりを意識させる
- 身の回りの三角形を探す活動
- 図形の美しさに触れる模様作り
まとめ——図形を「要素」で見る目
3年生の「二等辺三角形・正三角形・角」単元は、図形の見方の大きな転換点だ。
- 図形をシルエットではなく構成要素(辺・角)で捉える
- 辺の長さの等しさという性質で分類する
- 作図を通して性質と構成方法を結びつける
- 角を図形の要素として意識する
この見方は、4年生の「平行四辺形・ひし形・台形」、5年生の「多角形・合同」、6年生の「対称・拡大縮小」——すべての図形学習の土台になる。
実習で教えるなら、コンパスと定規をたくさん使わせたい。頭で「等しい」と考えるのと、手で「等しい辺」を作るのとでは、理解の深さが違う。そして紙を折って角の等しさを確かめる——操作から性質を発見する授業こそ、3年生の図形指導の理想形だ。
この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編(文部科学省, 2018)の第3章第3節「第3学年の目標及び内容 B(1)二等辺三角形、正三角形などの図形」を基に執筆しています。


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