3つの型に分かれる
低学年のゲームは、「ボールゲーム」と「鬼遊び」だった。ボールを蹴ったり投げたりする遊び、追いかけたり逃げたりする遊び。
中学年からは違う。ゲームは3つの型に分化する。
「ゴール型ゲーム」,「ネット型ゲーム」及び「ベースボール型ゲーム」で構成され,主として,規則を工夫したり作戦を選んだり,集団対集団で友達と力を合わせて競い合ったりする楽しさや喜びに触れることができる運動である。
規則を工夫する。作戦を選ぶ。集団対集団で競い合う。低学年の「遊び」から、戦略と協力を伴う「ゲーム」へ。これが中学年のゲームの特徴だ。
「易しいゲーム」とは何か
学習指導要領は、中学年のゲームを「易しいゲーム」と位置づけている。
易しいゲームとは,ゲームを児童の発達の段階を踏まえて,基本的なボール操作で行え,プレイヤーの人数,コートの広さ,ネットの高さ,塁間の距離,プレイ上の緩和や制限,ボールその他の運動用具や設備などを修正し,児童が取り組みやすいように工夫したゲームをいう。
大人のスポーツをそのまま行うのではない。児童に合わせて修正したゲームだ。具体的には:
- 人数を少なくする(プレイヤーが多すぎるとボールに触れない子が出る)
- 攻めの人数を守りより多くする(攻めやすくする)
- コートを狭くする(走る距離が短く、動きの関わりが増える)
- ボールを柔らかく、大きくする(操作しやすくする)
- 身体接触を回避する(安全面の配慮)
ゴール型ゲーム——攻守入り交じる
ゴール型ゲームは、コート内で攻守が入り交じり、ボールを手や足でシュートしたり、空いている場所に動いたりするゲームだ。
具体的なゲーム例
- ハンドボール、ポートボール、ラインサッカー、ミニサッカーなどを基にした易しいゲーム(得点を取り合うゲーム)
- タグラグビー、フラッグフットボールなどを基にした易しいゲーム(陣地を取り合うゲーム)
身に付ける動き
ボール操作:
- ボールを持ったときにゴールに体を向ける
- 味方にパスを出す、シュートをする、ゴールにボールを持ち込む
ボールを持たないときの動き:
- ボール保持者と自分の間に守る者がいない空間に移動する
「ボールを持たないときの動き」が中学年のゲームで特に重要だ。ボールを持っている児童だけがゲームに参加しているのではない。ボールを持っていない児童が、どこに動くか。この動き出しが、ゲームの質を左右する。
苦手な児童への配慮
- パスやシュートが苦手→ボールを保持する条件を易しくし、周囲の状況が確認できるように言葉がけを工夫する
- 空間への移動が苦手→守る者の位置を見るように言葉がけを工夫する
ネット型ゲーム——ネット越しにラリーを続ける
ネット型ゲームは、ネットを挟んでボールを打ち合い、ラリーを続けるゲームだ。
具体的なゲーム例
- ソフトバレーボールを基にした易しいゲーム
- プレルボールを基にした易しいゲーム(弾むボールを床に打ちつけて相手コートに返す)
- バドミントンやテニスを基にした易しいゲーム
- 天大中小など、子供の遊びを基にした易しいゲーム
身に付ける動き
ボール操作:
- いろいろな高さのボールを片手、両手もしくは用具を使ってはじく、打ちつける
- 相手コートから飛んできたボールを返球する
ボールを持たないときの動き:
- ボールの方向に体を向ける
- ボールの落下点やボールを操作しやすい位置に移動する
「ラリーの続く」易しいゲーム
ネット型ゲームで大切なのは、ラリーが続くことだ。すぐに点が決まってしまうゲームでは楽しくない。
- キャッチしてから打つことを認める
- バウンド数を多くする
- ボールを柔らかく、ゆっくりした速さになる軽めのボールを使う
これらの工夫で、全員がボールに触れる機会をつくる。
ベースボール型ゲーム——攻守を交代する
ベースボール型ゲームは、攻めと守りを交代しながら行うゲームだ。
具体的なゲーム例
- 攻める側がボールを蹴って行う易しいゲーム(キックベースなど)
- 手や用具を使って打ったり、静止したボールを打ったりして行う易しいゲーム
身に付ける動き
攻めのボール操作:
- ボールをフェアグラウンド内に蹴ったり打ったりする
- ベースに向かって全力で走り、かけ抜ける
守りのボール操作:
- 投げる手と反対の足を一歩前に踏み出してボールを投げる
- 向かってくるボールの正面に移動する
苦手な児童への配慮
- 蹴ったり打ったりが苦手→大きなボールや軽いボールを使う、静止したボールを打つ
- 投げる動きが苦手→的当てゲームを取り入れたり、紙鉄砲やタオルを使って投げる動きが自然に身に付く遊びをする
紙鉄砲やタオルで投げる練習をする——この発想が面白い。ボールを投げる練習をするのではなく、投げる動きが自然に身に付く遊びから入る。苦手な子にとって、これは大きな違いだ。
思考力——規則を工夫し、作戦を選ぶ
中学年のゲームにおける思考力は、2つの方向がある。
1. 規則を工夫する
誰もが楽しくゲームに参加できるように,プレイヤーの人数,コートの広さ,プレイ上の緩和や制限,得点の仕方などの規則を選ぶ
攻めと守りのプレイヤーの人数に違いを設け、攻めを行いやすくするなど、全員が楽しめる規則を児童自身が考える。
2. 作戦を選ぶ
ゲームの型に応じた簡単な作戦を選ぶこと
ゴール型なら、ボールを持っている人と持っていない人の役割を踏まえた作戦を選ぶ。
「簡単な作戦」という表現に注意したい。高学年では「作戦を工夫する」になるが、中学年では「作戦を選ぶ」だ。教師が複数の作戦を提示し、チームで話し合ってどの作戦を使うかを選ぶ。この段階を経て、高学年の「工夫する」につながる。
勝敗を受け入れ、フェアプレイを学ぶ
ゲームは勝敗がある。負けたときの態度が問われる。
審判の判定に納得しなかったり,ゲームに勝てなかったりすることで,ゲームに意欲的に取り組めない児童には,判定に従うことやフェアなプレイの大切さについて,継続して伝えていくようにする
1回言って終わりではない。「継続して伝えていく」——勝敗を受け入れる態度は、長い時間をかけて育てるものだ。
また、試合の前後に相手や味方同士で挨拶や握手を交わしたり、よいプレイを称賛したりする文化をつくることも大切だ。
ゲームに参加できていない児童への配慮
ゲームに参加している実感がなく,楽しさを味わえない児童には,チームの人数を少なくして,役割を明確にしたり触球回数を増やせるようにしたりする
ゲームの最大の課題は、ボールに触れない子が出ることだ。チームの人数を少なくする、特定のポジションの役割を明確にする——これらの工夫で、全員がゲームに参加している実感を持てるようにする。
他教科・他領域との連動
- 体つくり運動:用具を操作する運動、力試しの運動がゲームの基礎になる
- 算数:得点の計算、記録の整理
- 道徳科:「公正・公平」——きまりを守る、勝敗を受け入れる、フェアプレイ
- 学級活動:チーム編成、友達との協力、話し合い
教師として残しておきたいこと
Web開発のチーム開発は、ゲームのチームプレイに似ている。一人で全てのコードを書くことはできない。メンバーそれぞれが自分の役割を果たし、連携して一つの製品をつくる。「ボールを持っていない人」がどう動くかで、チームの成果が変わる——これは、ゴール型ゲームの「ボールを持たないときの動き」と同じ構造だ。
農業でも、共同作業の場面は多かった。田植え、稲刈り、出荷作業。それぞれの持ち場で役割を果たし、声をかけ合って全体を動かす。ゲームの授業は、こうした「チームで動く力」の原体験になる。
もう一つ大切なのは、「易しいゲーム」の設計だ。ルールや場を工夫して、全員が楽しめるゲームをつくる。これは教師の腕の見せどころでもある。難しすぎても簡単すぎても、子どもは夢中にならない。ちょうどいい難しさのゲームをつくることが、授業設計の核心だ。
指導のポイント
- 3つの型(ゴール型・ネット型・ベースボール型)の特性の違いを理解して指導する
- 「易しいゲーム」の設計が鍵——人数、コート、ボール、ルールを児童に合わせて修正する
- ボールを持たないときの動きを重視する——空いている場所に動く、落下点に移動する
- 中学年の思考力は「作戦を選ぶ」——教師が複数の作戦を提示し、チームで選択する
- 全員がボールに触れる機会をつくる——人数を少なくし、ルールを工夫する
- 勝敗を受け入れる態度、フェアプレイの精神を継続して伝える
- 試合前後の挨拶・握手・称賛の文化をつくる
まとめ——みんなで競い合う楽しさ
ゲームは、規則を工夫し、作戦を選び、集団対集団で競い合う楽しさや喜びに触れる領域だ。
- ゴール型:攻守入り交じり、シュートや空間への移動を楽しむ
- ネット型:ネット越しにラリーを続ける楽しさを味わう
- ベースボール型:攻守交代で、蹴る・打つ・走る・捕る・投げるを楽しむ
- 「易しいゲーム」の設計で全員が参加できる場をつくる
- 「ボールを持たないときの動き」がゲームの質を変える
- 作戦を「選ぶ」ことで戦略的思考の基礎を育てる
「パスをもらえる場所に動く」「チームで作戦を選ぶ」「負けても相手を認める」——ゲームで学ぶことは、コートの外でも使える力だ。

この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編(文部科学省, 2017)の第2章第2節を基に執筆しています。

