「自分で決めたこと」は続く
「整理整頓をしましょう」と教師が言う。その日はきれいになる。次の日には元に戻る。
しかし、「自分のロッカーをどう整理するか、自分で決めてごらん」と言うと、変わる子がいる。自分で考えたやり方だから、やってみたくなる。うまくいけば嬉しい。うまくいかなくても、「次はこうしよう」と考える。
教師に言われてやるのと、自分で決めてやるのは違う。学級活動(2)が目指すのは、後者だ。
学級活動(2)の特質——意思決定の学び
学級活動(2)は、(1)とは学びの型が異なる。
この内容は,日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康や安全に関するもので,児童に共通した問題であるが,一人一人の理解や自覚を深め,意思決定とそれに基づく実践を行うものであり,個々に応じて行われるものである。
(1)は合意形成、(2)は意思決定。児童に共通する問題を話し合うが、最終的には一人一人が自分に合った解決方法を自分で決める。
もう一つの違いは、課題の出所だ。
- (1)は児童が課題を見いだす
- (2)は教師が題材を設定する(年間指導計画に基づく)
教師があらかじめ「整理整頓」「友達との関わり方」といった題材を計画し、児童の実態に合わせて取り上げる。
(2)ア 基本的な生活習慣の形成
身の回りの整理や挨拶などの基本的な生活習慣を身に付け,節度ある生活にすること。
何を扱うか
整理整頓、挨拶、言葉遣い、時間を守る、身だしなみ——日常生活の基本的な習慣だ。
指導の留意点
解説はこう警告している。
これらの指導は,ともすると,教師の一方的な説話になりやすい。
「ちゃんとしなさい」「きちんとしなさい」と言うだけでは、生活習慣は身に付かない。大切なのは、児童自身が課題に気付き、自分で目標を決める過程だ。
学習過程はこうなる。
- 問題の発見・確認——「自分の生活を振り返ると、どこに課題があるだろう」
- 話合い——「友達はどんな工夫をしているかな」「うまくいっている人の方法を聞いてみよう」
- 意思決定——「自分はこの方法でやってみよう」
- 実践——決めたことを毎日やってみる
- 振り返り——「できたこと、できなかったこと」を確認し、次につなげる
習慣化のカギ
基本的な生活習慣については,改善の必要性を強く感じ,日常の生活の中で繰り返しやってみることが習慣化へとつながると考えられる。
改善の必要性を強く感じる——これが出発点だ。教師に言われたからではなく、自分で「これはまずい」「こうしたい」と感じること。そのために、具体的な資料(アンケート結果、写真、データなど)を使って自分の現状を客観的に見る機会をつくることが有効だ。
(2)イ よりよい人間関係の形成
学級や学校の生活において互いのよさを見付け,違いを尊重し合い,仲よくしたり信頼し合ったりして生活すること。
何を扱うか
友達と仲よくする、仲直り、男女の協力、互いのよさの発見、違いを認め合う、言葉の使い方、友情を深める——人間関係に関わる幅広い内容だ。
いじめの未然防止との関連
解説はこう述べている。
集団活動を通して,自己と他者の価値観や文化の違いを理解し合い,間違いや失敗を支え合い助け合うことを経験できるようにすることが大切である。この経験を通して,児童は互いに信頼し合って生活することの大切さを体得する。このことは,いじめの未然防止等に役立つと考えられる。
(2)イは、いじめの未然防止の文脈で極めて重要な内容だ。問題が起きてから対処するのではなく、日頃から互いのよさを認め合い、違いを尊重し合う関係をつくっておくことで、問題の発生を防ぐ。
多様性の理解
「互いのよさを見付け,違いを尊重し合い,仲よくしたり信頼し合ったりして」とは,児童一人一人の個性を尊重し,障害の有無や国籍など様々な違いにかかわらず他者と協働する力を育むことを示している。
障害のある児童、海外から帰国した児童、外国人の児童——多様な背景を持つ仲間と共に生活する中で、違いを当たり前のこととして受け入れる態度を育てる。
社会的スキルの指導
よりよい人間関係の形成の指導として,社会的スキルを身に付けるための活動を効果的に取り入れることも考えられる。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)を取り入れることも有効だ。ただし、学級活動の特質を踏まえ、児童自身が課題を見いだし、意思決定する流れの中に位置づけることが大切だ。スキルの練習が目的化しないよう注意する。
(2)アと(2)イの共通点
どちらも、学級活動(2)の学びの型で指導する。
| ステップ | (2)ア 生活習慣 | (2)イ 人間関係 |
|---|---|---|
| ①問題の発見 | 自分の生活を振り返る | 友達との関わりを振り返る |
| ②話合い | 友達の工夫を聞く | いろいろな考えに触れる |
| ③意思決定 | 自分の改善方法を決める | 自分の行動目標を決める |
| ④実践 | 毎日取り組む | 日常の中で意識する |
| ⑤振り返り | できたことを確認する | 関係の変化を感じ取る |
どちらも教師の説話で終わらせないことが重要だ。話し合いを通じて多様な考えに触れ、自分に合った方法を自分で決める。
道徳科との関連
(2)アは道徳科の「節度・節制」と、(2)イは「友情・信頼」「相互理解・寛容」と深く関連する。
ただし、道徳科と学級活動の違いを理解しておく必要がある。
- 道徳科:道徳的な価値について考え、議論する
- 学級活動(2):自分の課題について意思決定し、実践する
道徳科で「友達を大切にすること」について考えた後、学級活動で「自分は具体的にどう行動するか」を決めて実践する。この連携が、理解を行動に変える。
他教科・他領域との連動
- 道徳科:「節度・節制」「友情・信頼」「相互理解・寛容」と直結
- 体育:健康な生活習慣との連動((2)ウとも関連)
- 国語:言葉遣いに関する指導((2)アの挨拶・言葉遣い)
- 生活科:幼稚園等との接続に配慮した基本的生活習慣の指導
- 学級活動(3)ア:(2)イでの人間関係の学びが、(3)アの「希望や目標をもって生きる」ための土台になる
教師として残しておきたいこと
農業をしていた頃、毎朝の習慣が1日の農作業を支えていた。道具の手入れ、天気の確認、体調の自己チェック。これらを習慣化していたから、本番の農作業に集中できた。習慣が崩れると、仕事全体が崩れた。
Web開発でも、チームの人間関係の質がプロダクトの質を決めた。技術的に優秀なチームでも、メンバー間の信頼がなければ、情報共有が滞り、バグの報告が遅れ、品質が下がった。逆に、互いの強みを認め合い、弱みを補い合えるチームは、困難なプロジェクトも乗り越えた。
生活習慣は土台だ。人間関係も土台だ。どちらも派手ではないが、これが崩れると全てが崩れる。学級活動(2)のアとイが扱っているのは、まさにその「日々の土台」だ。
指導のポイント
- (2)は意思決定の学び——教師の説話で終わらせず、児童自身に決めさせる
- (2)アは自分の生活を客観的に振り返る資料(アンケート・写真等)を工夫する
- (2)イはいじめの未然防止の文脈で重要——日頃から互いのよさを認め合う関係をつくる
- 多様性の理解を基盤に据える——違いを当たり前として受け入れる態度
- 道徳科との連携——道徳で考え、学級活動で実践する
- 実践と振り返りを繰り返し、習慣化・行動化を図る
- 社会的スキルの指導は、意思決定の流れの中に位置づけて取り入れる
まとめ——土台がなければ何も積み上がらない
学級活動(2)のアとイは、学級生活の土台をつくる内容だ。
- (2)ア:基本的な生活習慣を、自分で課題を見つけ、自分で改善方法を決めて取り組む
- (2)イ:よりよい人間関係を、互いのよさを認め合い、違いを尊重し合うことで築く
- 教師の説話ではなく、児童自身の意思決定で行動が変わる
- 生活習慣と人間関係——この2つの土台が、学級のあらゆる活動を支える
「ちゃんとしなさい」と100回言うよりも、「自分で決めてやってごらん」と1回言うほうが、子どもは変わる。

この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別活動編(文部科学省, 2017)の第3章第1節を基に執筆しています。

