自分の体を守る力——健康・安全と食

3パネル構成のアニメ風イラスト。左:黄色い防災頭巾をかぶり机の下に避難する男児(防災・安全)、中央:石けんで手を洗う女児と「正しい手の洗い方」ポスター(健康・保健)、右:給食エプロンと帽子で配膳トレイを運ぶ男児と笑顔で食べる女児(食育・給食)。「知識→判断→行動/自分で意思決定/専門職と協働」のテキスト入り
目次

「知っている」と「自分で判断して行動できる」は違う

「手を洗いましょう」と言われれば洗う。しかし、言われなければ洗わない。「地震が来たら机の下に隠れましょう」と教わった。しかし、本当に地震が来たとき、パニックにならずに行動できるか。

学級活動(2)のウとエが目指すのは、知識を教えることではない。自分の健康と安全を、自分で判断し、自分で行動する力を育てることだ。


(2)ウ 心身ともに健康で安全な生活態度の形成

現在及び生涯にわたって心身の健康を保持増進することや,事件や事故,災害等から身を守り安全に行動すること。

この内容は、大きく保健に関する指導安全に関する指導に分かれる。

保健に関する指導

  • 心身の発育・発達
  • 心身の健康を高める生活
  • 健康と環境との関わり
  • 病気の予防
  • 心の健康

児童が自分の健康状態に関心を持ち、身近な生活における健康上の問題を見つけ、自分で判断し、処理する力を育てることが目標だ。

安全に関する指導

  • 防犯を含めた身の回りの安全
  • 交通安全
  • 防災

進んできまりを守り,危険を予測し,事前に備えるなど日常生活を安全に保つために必要な事柄を理解する。

近年は自然災害の発生だけでなく、情報化やグローバル化に伴う安全上の課題も変化している。必要な情報を自ら収集し、よりよく判断し行動する力を育むことが重視されている。


学級活動(2)としての指導の特質

(2)ウの内容は、体育科の保健領域や学校行事(避難訓練・健康教室等)でも扱われる。しかし、学級活動で扱う場合の特質がある。

学級活動(2)の特質:

  • 児童に共通する課題を取り上げる
  • 話し合いを通して多様な考えに触れる
  • 一人一人が自分に合った解決方法を意思決定する
  • 決めたことを実践し、振り返る

「手洗いの大切さ」を教えるのは体育科の保健。「自分はどんな場面で手洗いを忘れがちか、どうすれば忘れずにできるか」を自分で考えて決めるのが学級活動(2)ウだ。


他職種との協力

活動の内容によっては,他の教師等の専門性を生かすと効果的である場合も予想される。

(2)ウでは、養護教諭の協力が特に有効だ。

  • 健康診断の結果を教材にする
  • 保健室来室の傾向データを活用する
  • 専門的な知識に基づくアドバイス

また、安全に関する指導では、学校行事との連携が重要だ。

関係団体や外部講師等の協力を得て実施される健康教室,防犯教室,交通安全教室,避難訓練などの学校行事と関連付けて指導を行うことが重要である。

避難訓練(学校行事)の前後に、学級活動で「自分の家での防災の備えはどうか」を話し合い、一人一人が「自分でできること」を意思決定する。行事と学級活動をセットで指導することで、学びが深まる。


(2)エ 食育の観点を踏まえた学校給食と望ましい食習慣の形成

給食の時間を中心としながら,健康によい食事のとり方など,望ましい食習慣の形成を図るとともに,食事を通して人間関係をよりよくすること。

食育は給食の時間だけではない

食育に関する指導は、給食の時間を中心にしつつ、学級活動の時間でも取り上げる

給食の時間では、準備から後片付けまでの中で、計画的・継続的に指導する。学級活動の時間では、より深く題材を取り上げ、意思決定まで導く。

扱う内容

  • 楽しく食事をすること
  • 健康によい食事のとり方
  • 給食時の清潔
  • 食事環境の整備
  • 食事を通した人間関係

「食事を通して人間関係をよりよくする」

食育は栄養や健康の問題だけではない。学習指導要領は「食事を通して人間関係をよりよくする」ことも目標に含めている。

みんなで食べることの楽しさ。準備や片付けを協力すること。食事のマナーを身に付けること。これらは全て、人間関係の学びでもある。

栄養教諭との協力

栄養教諭の専門性を生かしつつ,学校栄養職員や養護教諭などの協力を得て指導に当たることも必要である。

栄養教諭がいる学校では、その専門性を活かした授業が可能だ。給食の献立を教材にしたり、地域の食文化を紹介したりすることで、食への関心が深まる。


(2)ウと(2)エの共通点

どちらも「自分の体を守る」という点で共通する。

(2)ウ 健康・安全(2)エ 食育
対象心身の健康、事故・災害食習慣、食事
意思決定の例「自分の健康のためにできること」「自分の食生活で改善すること」
協力する専門職養護教諭、外部講師栄養教諭、学校栄養職員
関連する時間学校行事(避難訓練等)給食の時間

どちらも、教師の一方的な説話ではなく、児童自身が課題に気付き、自分で決めて行動することを重視する。


授業の実際——防災を例に

学級活動(2)ウで「防災」を題材に取り上げる場合の学習過程の例。

①問題の発見・確認

「大きな地震が来たら、自分は何ができるだろう?」
→ アンケートや資料を使い、「備えている」「備えていない」の現状を可視化する

②話合い

「家族と避難場所を確認している人はいるかな」
「非常持ち出し袋を準備している人は?」
→ 友達の取り組みを聞き、多様な備え方を知る

③意思決定

「自分にできることを一つ決めよう」
→ 「家族と避難場所を確認する」「水のストックを確認する」など、一人一人が具体的な行動を決める

④実践

決めたことを家庭で実行する

⑤振り返り

「やってみてどうだった?」
→ 実践の報告と、新たな気付き


他教科・他領域との連動

  • 体育:保健領域との直接的な連動。(2)ウの内容と重なる部分が多い
  • 家庭科:食事と栄養に関する学習。(2)エとの連携
  • 理科:自然災害に関する学習(4年以降)との関連
  • 社会:地域の安全を守る仕組み(3年)との関連
  • 学校行事:避難訓練・健康教室等とのセット指導
  • 道徳科:「生命の尊さ」「節度・節制」との連動
  • 給食の時間:(2)エの日常的な実践の場

教師として残しておきたいこと

農業では、安全管理は日常の習慣だった。機械の点検、天候の確認、体調の自己管理。これらを怠ると、事故が起きる。「今日は大丈夫だろう」という油断が、一番危ない。

食に関しては、自分で育てた野菜を自分で食べる生活をしていたから、食べ物が食卓に届くまでの過程を体で知っていた。種をまき、世話をし、収穫し、調理する。この一連の流れを知っていると、食事に対する感謝が自然に生まれる。

学級活動(2)のウとエが扱っているのは、生きるための基本だ。健康を守る。安全を確保する。食事を大切にする。これらは、どんな時代でも、どんな職業でも、変わらず必要な力だ。


指導のポイント

  1. (2)ウの内容は保健指導と安全指導に分かれる——それぞれの特質を踏まえて指導する
  2. 学級活動(2)の特質は意思決定——知識を教えるだけでなく、「自分はどうするか」を決めさせる
  3. 養護教諭・栄養教諭の専門性を活かした協働指導を工夫する
  4. 学校行事(避難訓練・健康教室等)とセットで指導する
  5. (2)エは給食の時間を中心にしつつ、学級活動の時間でも計画的に扱う
  6. 食育は栄養だけでなく、食事を通した人間関係も含む
  7. 「知っている」から「自分で判断して行動できる」への転換を目指す

まとめ——自分の体は自分で守る

学級活動(2)のウとエは、自分の体を自分で守る力を育てる内容だ。

  • 健康も安全も食も、知識だけでは不十分——自分で判断し行動する力が必要
  • 教師の説話ではなく、児童自身が課題に気付き、意思決定し、実践する
  • 養護教諭・栄養教諭との協働、学校行事や給食の時間との連携が重要
  • 「自分の体を守る」力は、一生使い続ける力である

「手を洗いなさい」と言われて洗うのではなく、「ここは洗ったほうがいい」と自分で判断して洗える子に育てる。学級活動(2)が目指すのは、そういう力だ。

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この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別活動編(文部科学省, 2017)の第3章第1節を基に執筆しています。

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