3年算数の「1年の地図」を描く——学年目標と4領域の全体像

目次

単元の前に「地図」を描く

前回、算数科の学習指導要領の総論を読んだ。算数は計算の教科ではなく、「数学的に考える力」を育てる教科だという設計思想を確認した。

今回はもう一段ズームインして、3年生の学年目標と4領域の全体像を見る。個々の単元(わり算、小数、分数、重さ……)に入る前に、「1年でどこを通るのか」という地図を描いておきたい。

ソフトウェア開発で言えば、これはアーキテクチャ図にあたる。個々の関数(単元)を実装する前に、全体の構造を把握しておかないと、あとで「なぜこの順序なのか」「どこにつながるのか」が見えなくなる。


第3学年の目標——3つの柱で読む

学習指導要領は、各学年の目標を「三つの柱」で示している。3年生の目標は次のとおり。

(1)知識及び技能

数の表し方、整数の計算の意味と性質、小数及び分数の意味と表し方、基本的な図形の概念、量の概念、棒グラフなどについて理解し、数量や図形についての感覚を豊かにするとともに、整数などの計算をしたり、図形を構成したり、長さや重さなどを測定したり、表やグラフに表したりすることなどについての技能を身に付けるようにする。

(2)思考力、判断力、表現力等

数とその表現や数量の関係に着目し、必要に応じて具体物や図などを用いて数の表し方や計算の仕方などを考察する力、平面図形の特徴を図形を構成する要素に着目して捉えたり、身の回りの事象を図形の性質から考察したりする力、身の回りにあるものの特徴を量に着目して捉え、量の単位を用いて的確に表現する力、身の回りの事象をデータの特徴に着目して捉え、簡潔に表現したり適切に判断したりする力などを養う。

(3)学びに向かう力、人間性等

数量や図形に進んで関わり、数学的に表現・処理したことを振り返り、数理的な処理のよさに気付き生活や学習に活用しようとする態度を養う。

長い文だが、エッセンスを取り出すとこうなる。

3年生で育てたい力
知識・技能数(整数・小数・分数)と図形と量と棒グラフの概念を理解し、計算・測定・作図・作表ができる
思考力等「〜に着目して」数の表し方・図形・量・データを考察・表現する
学びに向かう力数理的な処理のよさに気付き、生活や学習に活用しようとする

特に注目したいのが、2年生の目標との差分だ。

2年生では「数量や図形に親しみ、算数で学んだことのよさや楽しさを感じながら学ぶ態度」だったものが、3年生では「進んで関わり振り返り気付き活用しようとする態度」に変わっている。

つまり3年生は、「親しむ」段階から「使いこなそうとする」段階への切り替わりの学年なのだ。


3年算数の4領域

3年生は下学年の最終学年なので、4領域で構成されている。

A 数と計算

最もボリュームが大きい領域。3年で扱う内容は7〜8つもある。

単元内容
数の表し方万の単位、10倍・100倍・1000倍、1/10
たし算とひき算3位数・4位数の加減、筆算、暗算、見積り
かけ算2位数・3位数 × 1位数・2位数
わり算除法の意味、包含除と等分除、余り
小数小数の意味、1/10の位、加減
分数分数の意味、単位分数、簡単な加減
数量の関係を表す式□を使った式
そろばん数の表し方と計算

2年生までの「加法・減法・乗法」に加えて、わり算(除法)が初めて登場する。これで四則演算の全員が揃う。さらに、小数・分数という「1より小さい数」の世界が開かれる。

B 図形

3年生の図形は、「辺の長さ」という構成要素に着目することがポイントになる。

単元内容
二等辺三角形・正三角形辺の長さに着目した三角形の分類
角という概念の導入
円と球中心・半径・直径の理解

2年生では「三角形・四角形」を形として捉えていたが、3年生では「辺の長さが等しい」「中心からの距離が等しい」という性質で図形を捉え直す。これは大きなジャンプだ。

C 測定

下学年最後の「測定」領域。

単元内容
長さkm(キロメートル)、適切な単位と計器の選択
重さg、kg、t、はかりの使い方
時刻と時間秒、時刻や時間を求める

ここで重さが初登場する。重さは「見えない量」であり、長さやかさと違って直接目で比べられない。目に見えない量を道具で測るという経験が、抽象的な思考への橋渡しになる。

また今回の改訂で、メートル法の接頭語(k・m)の仕組みが6年生から3年生に降りてきた。「キロは1000倍、ミリは1000分の1」という規則性を、3年生のうちから学ぶ。

D データの活用

単元内容
表と棒グラフデータの分類整理、棒グラフの特徴と用い方

2年生の「簡単な表とグラフ」から、3年生では棒グラフへ進む。しかも今回の改訂で、「最小目盛りが2・5の棒グラフ」「複数の棒グラフを組み合わせたグラフ」も扱うようになった。日常で目にする統計資料に、より近づく内容だ。


「〜に着目して」が共通キーワード

4領域の思考力・判断力・表現力等の目標を並べてみると、共通するキーワードがある。

領域何に着目するか
A 数と計算数とその表現数量の関係に着目
B 図形図形を構成する要素に着目
C 測定ものの特徴をに着目
D データの活用事象をデータの特徴に着目

これが総論で出てきた「数学的な見方」だ。何に着目するかで、見える世界が変わる。

3年生の算数は、この「着目する視点」を4領域それぞれで育てる年と言える。数なら「まとまり」、図形なら「辺や中心」、測定なら「量」、データなら「個数や特徴」——それぞれ違った着目ポイントを身につけていく。


年間の学びの流れ

学習指導要領は単元の学習順序までは指定していないが、多くの教科書は次のような流れで配列している。

1学期(4〜7月)

  • かけ算(2年生の復習+発展)
  • 時刻と時間(秒の導入)
  • わり算(初めての除法)
  • たし算とひき算の筆算
  • 長さ(km)
  • あまりのあるわり算

2学期(9〜12月)

  • 大きい数(万の単位)
  • かけ算の筆算
  • 円と球
  • 小数
  • 重さ

3学期(1〜3月)

  • 分数
  • □を使った式
  • 二等辺三角形と正三角形
  • 棒グラフと表
  • そろばん

ざっくり見ると、1学期は「計算系」、2学期は「新しい数の世界(大きい数・小数)と量(重さ)」、3学期は「まとめと抽象化(分数・□・図形性質・データ)」という構成になっている。

教育実習では、1学期前半のわり算・筆算・長さ(km)あたりの単元に出会う可能性が高い。次回はまさにその「わり算」の単元に入っていく。


まとめ——3年生は「切り替わり」の学年

3年生の算数を地図として俯瞰すると、次のことが見えてくる。

  • 四則演算の完成年:わり算が加わり、たし算・ひき算・かけ算・わり算が揃う
  • 新しい数の登場:小数と分数によって「1より小さい数」の世界が開く
  • 図形の性質化:形の特徴ではなく「辺の長さ」「中心からの距離」で図形を捉える
  • 見えない量の導入:重さ、秒、キロという抽象的な量を扱い始める
  • データの視覚化:棒グラフで事象を表現し判断する

共通するのは、具体から抽象への橋渡しだ。前回も書いたが、3年生は「9歳の壁」を越えるための助走期間にあたる。

教師としては、「この単元は孤立しているのではなく、4領域のどこに位置づき、どの学年のどこにつながっていくのか」を意識する必要がある。単元を教えるのではなく、1年という地図の中で子どもを案内する——それが3年算数の担任に求められる視点だと思う。

次回からは、いよいよ個別の単元に入る。最初は「わり算」を取り上げる。


この記事は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編(文部科学省, 2018)の第3章第3節「第3学年の目標及び内容」を基に執筆しています。

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